講義 「有機化学1」 第13回目の講義から-1 有機化合物の構造決定4種の神器(片桐教授)
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このシリーズでは、片桐の担当している有機化学1の講義のポイントを読み物にして、解説して行きます。
さて,有機化学1もいよいよラストスパートです。今回は有機化合物の構造決定についていくつか…。
有機化合物の構造決定と同定は意味が違いますので要注意です。同定は既知物質のスペクトルと自分の測定した化合物のスペクトルとを比較して、同じスペクトルであるから同じ化合物であると判定するものです。一方、構造決定は、必ずしも既知ではない、多くの場合は新規で未知の化合物のデータを集めてそれを元に構造を推定する操作です。
この構造決定には4つの測定が必須とされています。それはNMR(核磁気共鳴)、IR(赤外吸収)、MS(質量分析)、そしてEA(元素分析)です。これをまとめて、有機物の構造決定の4種の神器と呼びます。
核磁気共鳴は,測定核種の置かれている磁気的電気的環境を知ることにより、推定構造と矛盾のないことを確認します。赤外吸収では官能基の存在や種類を知ることができます。質量分析ではその分子の重さをしることができます。そして元素分析は…これは高校でも習ったと思いますが、組成式を知ることにつながります。そして、元素分析が予想ときっちり合うと言うことは、そのサンプルが純粋であることを保証するものでもあります。
最近は元素分析に変えて、高分解能質量分析を用いて、組成式を求めることもできます。特に微量のサンプルの組成式を確認するためには、高分解能質量分析の方が、元素分析よりも簡便に結果を得ることができます。一方、有機合成屋としては、十分なサンプル量を準備しなくても良いために、「製造」の研究の評価方法としては余り好ましいとは思えません。また、そのサンプルが多少汚くても、ピークを選べばもっともらしい結果が得られるので、これもいかがなものかと存じます。
有機物の構造決定には高価な測定装置が必要であり、その測定も決して安価なものではありません。丁寧に、大事に扱いましょう。サンプルは心を込めてきれいなものを準備しましょう。
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