コーヒーの香りと科学論文について (その1)(山下教授)
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忙しいことは大変よいことだ、と思うことにしています。
忙しいということは、研究であればそれだけ世界から注目されているということであり、学務であればそれだけの責任を負っているということであり、いずれにしてもそのやりがいに自励的に活性化されると思います。
以前、大学まで徒歩20分のところに住んでいました。毎日、早朝に自然の風景や季節の移ろいを楽しみながら大学まで通っていましたが、忙しくなるとその時間すら許容できず、車に乗って5分で大学に行き仕事を始めました。当時は1分でも時間が欲しいほどの忙しさでしたが、あるとき、本当に足りないのは時間的余裕ではなく精神的な余裕ではないか、ということに気づきました。それ以来、忙しい時はあえて時間をかけて心の余裕を保つようにしています。
その一つがコーヒーです。
忙しいときはついつい惰性でコーヒーを飲んでしまいがちですが、私はあえてミルでコーヒー豆を挽き、時間をかけてコーヒーを淹れることで精神的な余裕を保つことができました。そうこうしているうちにエスプレソ・マシーンを購入し、挽いた豆をタッピングし抽出したものにスチームでミルクを泡立てて加えカプチーノ等を作って味わうようになりました。機械を使うとちょっとした時間でエスプレッソを作ることができますが、ドリップとはちがってそのひと手間をかけることによって気持ちをリフレッシュさせることができ、またさらに香ばしいコーヒーの味わいでリラックスすることができました。
あるとき、理化学研究所から常々尊敬している先生が私の研究室に訪問され、私はコーヒーをふるまいながらそのいきさつをお話ししました。すると、その先生は「実は自分はコーヒーの豆を焙煎するところからやっているんだよ」とおっしゃられ、上には上がいるものだと感心させられました。
「コーヒーの香りと科学論文について (その2) 」に続きます。
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