実験における失敗から学ぶ 保護具の話-2 安全メガネの話(片桐教授)
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保護具の材質は悩みどころです。ゴム手袋のおもわぬ怖さについては前にお話しした通りです。今回は安全メガネの話です。
市販の安全メガネはプラスチック製の安価なもので、通常、メガネの上にカバーするように装着します。もし、有機溶媒などで視界が悪くなったら、あきらめて新しいものにしましょう。
片桐の実験時に使用しているメガネは分厚いガラスレンズの、遠近両用メガネです。実験時には遠くの学生の挙動も、近くの実験指示書も見なければなりませんから、どうしても遠近両用であることがのぞまれます。また、ガラス製であることは、有機溶媒への耐性の都合上、必須です。プラスチックレンズはアセトンなどの有機溶媒がかかると、溶けてしまい、透明ではなくなってしまいます。そして,メタルフレームはサングラス用の大面積のものです。そのため、この特注の実験用メガネの重さは普通のメガネの数倍もある重いものです。これにクリップオンで跳ね上げられるサングラスをつけて、実験用の安全メガネとして使用しています
私は研究室配属後、真空ライン上で自作のガラス製の反応管を毎日のように真空脱気していました。ある日、その作業中に溶媒の入ったナスフラスコを液体窒素温度から室温へ昇温している最中に爆縮を起こしました。当時はまだ安全メガネは一般的ではなかったころです。幸いに私はメガネをしていましたが、セルフレームのメガネの左レンズの上方にガラス片があたり、レンズは真っ二つに割れてしまいました。もう少しで眉間に三日月傷になるところでした。
その後から、メガネを特注で作るようになりました。
大学の化学実験中の重大災害の多くは目の障害です。失明すると、取り返しがつきません。他は多少いい加減でも(いやいい加減ではダメですが)安全メガネだけは絶対に忘れないでください。
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