実験における失敗から学ぶ 保護具の話-3 マスクに関するヒヤリハット(片桐教授)
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最初に一言、マスクは必要なところで最適なものを使いましょう。そして過信は禁物です。有機溶剤の作業で、薄い活性炭層をつけた不織布製のディスポーザルマスクを使っても、効果はほとんどありません。それを使うくらいなら、局所排気設備(ドラフト)内で作業すべきですし、部屋の換気を頻繁にする方が体のためです。
有機溶媒の除去には吸収缶を取り付けた毒ガスマスクの様なものをつける必要があります。それでも、ヘキサンなどの極性の低い溶媒は除去できません。粉塵作業など目に見える大きさの微粒子や有機溶媒でもミスト状のものの除去にマスクは有効です。でも大気中に揮発した分子状の有機物は除去できません。
有機溶剤を使う環境では、マスクに気を使うよりも換気に気を使いましょう。
私自身も学生時代にはマスクの効果に過剰な期待をしていました。
とはいえ、マスクは消耗品ではあっても、使い捨てのできるほどではなく、数日間は同じマスクを使っていました。そうすると、直前に食べたものの匂いなどがつきます。私が実験をしていると、後輩が「臭い!」と言ったことがありました。しかし、マスクをしている自分にはまったく気がつきませんでした。実際にはドラフトのファンベルトが切れていて、モーター音はしていても全然排気していない状態でした。
マスクをしていると,特に周囲の臭いへの感受性が損なわれ、異常事態を感知できなくなります。
マスクは必要なとき以外はしない方がよい。無条件に(考えもなく)マスクをしておけばよいという考え方は、実は危険を招く行為であることを思い知りました。
保護具はルーチンで付けるのではなく、TPOに応じて、必要性に応じて使い分けることが肝心です。
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