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書評のような雑感のような… 放送大学の講義を見て、札野順「新しい時代の技術者倫理」放送大学教育振興会(2015)(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

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 1月29日夜、疲れて早めに布団に潜り込み、うとうととする時の習慣でオフタイマーを付けてからテレビを見た。変なバラエティばかりで面白くない。ニュースもつまらん。チャンネルをぽちぽちと変えて行ったところ、放送大学に行き当たった。そのときたまたま放送されていた「分子分光学」は2017年度開講の「量子化学」の講義の参考になりそうである。講義の進め方に感心したり、キラル分子を表す上手ではない絵に突っ込みを入れながら、眺めていた。

 その後、次の講義として札野先生の「新しい時代の技術者倫理」が始まった。面白かった。ぐいぐいと引きつけられた。これは4月から開講の「安全工学」にも使えると思った。

 日曜日に電車に乗って八王子のK書店に行った。5階の奥に放送大学のテキストが売られている。さっそく、この「新しい時代の技術者倫理」と「分子分光学」のテキストを購入した。2冊で約6500円の出費であった。

 放送大学の教科書は講義とセットでないとその良さを理解できないかもしれない。

29日夜の放送ではシティコープ・センタービルの危機に直面した設計責任者のルメジャー氏の倫理的決断についてケースメソッド(ケーススタディとは異なる)を課していた。この出来事については他の書籍、中村収三「実践的工学倫理」化学同人(2003)のケーススタディでも知っていた。しかし、この放送大学の「講義」を聞くことによりより深い理解に至った。さらに、私は「公益通報」=内部告発の善し悪しに関しても考えさせられた。このあたりで片桐がどのように考えたかについては、「安全工学」の講義中に紹介したい。

 同日に放送された本田技研のCVCCエンジンの開発における、若い技術者と創業者=本田宗一郎との軋轢についての講義内容も興味深かった。特に、自分の方針の間違いを認め引退を決意した本田氏の矜持に感動した。

 残念ながら、教科書は教科書である。その教科書を使って行われる講義も含めてその価値は格段に高くなる。さて、私自身、そのような価値のある講義ができているだろうか。

 このような良質の知的な刺激が地上波放送で見れる関東は良い地域である(岡山では放送大学の地上波放送はなかった)。そして、良い時代になった。

 なお、放送大学の他の講義も見たが、ホワイトボードの字が私よりもひどい...というものも…。

片桐 利真

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