東京工科大学 工学部 応用化学科 ブログ

東京工科大学 工学部 応用化学科 ブログ 東京工科大学

« 一酸化炭素はなぜ危険か(江頭教授) | トップページ | サステイナブル工学の目指すもの(江頭教授) »

レイチェル・カーソン「沈黙の春」の暗黒面(片桐教授)

2016.04.26 解説 | 固定リンク 投稿者: tut_staff

861_2

 レイチェル・カーソンの「沈黙の春」は罪深い書籍です。
もし興味があれば、いちど読んでみてください。このブログを読む前にこの書籍を読めば、あなたはこの本に洗脳されてしまうかもしれません。それほどに影響力の強い本です。

 この書籍は、農薬による環境破壊の恐ろしさを訴えたものです。農薬(DDT)の散布により、虫は死にカエルは死に鳥は消え、そして我々も…という恐怖を駆り立てさせられる本です。この本に感銘を受けたケネディ大統領はアメリカにおけるDDTの生産を禁じました。しかし、その禁止はもっと大きな災厄の源になってしまいました。

 1960年代初頭、WHOはキニーネとDDTでマラリアを、天然痘と同様に撲滅可能と見積もりました。実際、セイロンにおけるマラリア撲滅は年間250万人の患者を30人以下に抑えることに成功しました。
しかし、カーソンの沈黙の春とそれに共感したケネディの政策によりDDTは禁止され、数年後には元の木阿弥になりました。



 全世界のマラリアの患者は毎年数億人、死者は200~300万人、その多くは幼い子供です。
この書籍の影響により、45年間に日本の人口に匹敵する「救えたはずの命」を失わさしめたのです。



 彼女の書籍に記載の「天敵農薬」が沖縄のマングース騒動の問題を生んでいます。これもまた大きな間違いでした。ヤンバルクイナのような希少種がマングースにより駆逐されかけています。未だにその災厄は継続しています。DDTにより虫が死にそれにより鳥が死に沈黙の春を招くという主張は、もっと大きな災禍を人類に与え続けています。


 今日でも、このカーソンの本は環境問題を訴えた記念碑的な書籍として、高く評価されており、一部の熱狂的な支持者を持ちます。

 私も、環境問題を提起し知らしめたこの本の「功績」を否定しません。しかし、その上で、この本の罪、暗黒面もまた我々は忘れるべきではありません。

片桐 利真

« 一酸化炭素はなぜ危険か(江頭教授) | トップページ | サステイナブル工学の目指すもの(江頭教授) »

「解説」カテゴリの記事

  • 未来のエネルギー源は再生可能エネルギーか(江頭教授)(2018.04.18)
  • 核融合は未来のエネルギー源か(江頭教授)(2018.04.17)
  • マンガン団塊の今(江頭教授)(2018.04.11)
  • サステイナブル工学@Wikipedia(江頭教授)(2018.04.03)
  • スプレー式の発泡ウレタンはなぜ固まるのか(江頭教授)(2018.03.16)
2018年4月
日 月 火 水 木 金 土
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          

カテゴリー

  • お知らせ
  • イベント
  • コーオプ教育
  • 先端研究
  • 入試・入学
  • 在学生向け
  • 基礎講座
  • 授業・学生生活
  • 推薦図書
  • 施設・設備紹介
  • 日記 コラム つぶやき
  • 書評
  • 研究テーマ紹介
  • 解説

最近の記事

  • 資源枯渇で文明は崩壊するか?(江頭教授)
  • 「成長の限界」の限界(江頭教授)
  • 日本の常識は世界の非常識、人口編(江頭教授)
  • 核戦争と石油危機(江頭教授)
  • 人間はサステイナブルか?(江頭教授)
  • 新入生の歓迎会(学部交流会)を行いました。(江頭教授)
  • 一年生、二年生対象、「工学部 特別講演会」を開催しました。(江頭教授)
  • 未来のエネルギー源は再生可能エネルギーか(江頭教授)
  • 核融合は未来のエネルギー源か(江頭教授)
  • 教科書「サステイナブル工学基礎」(江頭教授)
 
(C)Tokyo University of Technology All rights reserved.