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2016年6月

2016.06.30

学生実験をみてみよう(第3期)「力学測定」(江頭教授)

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 本学応用化学科の学生実験の中から今回は2年生向けの応用化学実験の「力学測定」について紹介しましょう。

 「プラスチック」と呼ばれる高分子材料は今では私たちにとって最も身近な材料になったと言えると思います。材料として利用される以上、その堅さや破れにくさなどの力学的な性質は非常に重要なのですが高分子を扱う化学の実験で、その力学的な特性を取り扱うことはまれなのではないでしょうか。

 今回の実験では写真の引張試験機を利用してPETやポリイミドのフィルムの力学的な物性を測定します。(引張試験機についてはこちらの記事を参照してください。)上下の治具でしっかりと固定した試料片を一定のスピードで引き伸ばすと、それに対抗して治具に力がかかります。強い材料は少し伸ばしただけで強い力がかかりますが、弱い材料は少しの力で伸ばされてしまいます。伸ばす長さが増えるに従って力のかかり方も変わります。初めのうちは伸びと力は比例していますが、その後の力のかかり方は材料ごとにいろいろです。もっともどの材料も最後には破断して伸びに抵抗する力はゼロになってしまいます。

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2016.06.29

学生実験をみてみよう(第3期)「凝固点(融点)降下による分子量測定」(江頭教授)

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 本学応用化学科の学生実験を紹介しているこのシリーズ、今回は一年生向けの工学基礎実験(C)の「凝固点降下による分子量測定」について紹介します。

 凝固点降下、沸点上昇などの現象は液体に溶質が溶けることによって液体の状態が維持される傾向にあるという現象ですが、効果の大きさがモル濃度できまる、という点で注目に値します。溶質の量が重さや体積ではなく分子の個数できまる、というのですがら物質が分子という単位でできていることを再認識させてくれます。

 そんな印象の問題はさておき、これらの現象を使って物質の分子量を測定することができる、これは高校の化学の教科書でも紹介されることがあります。この実験ではそれを実際にやってみよう、というわけです。

 今回の実験、分子量を測定するのはナフタレンです。溶媒として利用するのはショウノウ(樟脳)で、その凝固点(融点)は180℃、比較的高い温度での実験となります。

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2016.06.28

「安全工学」の講義 第1回安全と倫理から(2) 安全工学の使命

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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。
このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。
安全工学の教科書[1]によりますと、安全工学は、
 安全な科学技術を提供するための基礎知識であり、その特徴は:
  1.  新規分野である
  2.  学際的総合工学
  3.  ヒューマニティを基盤にする
  4.  産業能率向上の基礎
だそうです。そして、その社会的目的は
  1.  産業従事者の生命と健康を守る
  2.  地域住民の平安と健康を守る
  3.  災害による設備、原料、製品の損失防止
であり、「人道主義と経済主義を一体として調和し、理想的な産業社会を築く」ことにあるそうです。
 以前のブログ(4月11日「理学部と工学部の違い」)でマートンのCUDOSとザイマンのPLACEという考え方を紹介しました[2] が、こうやってみると、やはり安全は「工学」であることがわかります。

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2016.06.27

日本の温室効果ガス排出量を調べてみよう(江頭教授)

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 日本の温暖化ガスの排出量はどのくらいでしょうか?大まかにはCO2換算で一人当たり大体10トン、日本全体で13億トン程度というのがこの20年くらいの状況ですが、今回はもう少し細かく変化を見てみようと思います。

 日本では公式な温暖化ガス排出量の統計は国立環境研の温室効果ガスインベントリオフィス(GIO)から毎年のデータが発表されています。また、環境省のこちらのページにも算定結果が公表されます。

 今、見られるのは2014年の確定値です。2014年の値を2015年の間に集計し、11月に速報値を、今年(2016年)の4月に確定値を発表します。膨大な統計資料に基づいて算出されるので集計に1年かかることになりますから、少し前のデータしか見られないのは仕方がないですね。

 さて、2014年の温暖化効果ガスの総排出量は、13億6,400 万トン(CO2換算)とあります。1人10トン、で大体合っていますが少し多くなっています。もう一つ、2014年の特徴は「前年度の総排出量(14 億 800 万トン)と比べて、3.1%(4,400 万トン)の減少。」だといいます。実は温室効果ガスの排出量が減少するのは2009年以来のことです。2008年、2009年の減少はリーマンショックによるものですから2014年には「リーマンショック級」の何かが起こっていた、とも言えるでしょう。

 もちろん、温室効果ガスの排出量の変化は経済的な要因に限られるわけではありません。いったい何が原因なのか、少し考えてみましょう。

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2016.06.24

学生実験をみてみよう(第3期)「熱測定(液晶)」(江頭教授)

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 さて、今回紹介する学生実験は2年生の応用化学実験Ⅰの「熱測定」のテーマから、液晶の相転移の観察です。

 熱測定についてはこちらで紹介していますが今回の対象は液晶です。 そして、液晶については1年生の工学基礎実験Ⅰ(C)でもこのように扱っています。

 ここで観察するのは液晶の温度変化による相転移の様子です。液晶のもつ構造が可視光の波長と同じ程度なので相変化は色や見た目の違いとして比較的簡単に観察することができます。また、専用の装置を用いることで温度を正確に測定しながら相変化の状態を観察することができます。

 さて、以下にリンクした動画は液晶(4-シアノ-4-オクチルビフェニル)の相転移の様子を顕微鏡(CCDカメラで映像を映しています)で観察したものです。

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2016.06.23

学生実験をみてみよう(第3期) 「液晶」(江頭教授)

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 本学科の学生実験を紹介するシリーズ、今回は「工学基礎実験Ⅰ(C)」(本学科の1年生向け学生実験)の「液晶」がテーマです。

 「化学の実験」と聞くと何かを合成する実験、フラスコや試験管にいろいろな液体・固体を混ぜ、加熱すると色が変わる、そんな実験風景を思い浮かべる人が多いと思います。「液晶」の実験なのだから液晶の分子を作っているに違いない、とお思いかもしれませんが、今回の実験で使用する液晶分子は既製品。合成は全くしません。

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 市販の液晶分子をつかって、液晶の性質をしらべるのがこの実験の主眼です。たとえば右の写真は液晶分子(ヒドロキシプロピルセルロース)を水と混ぜてビニールパックに詰めたものです。液晶分子が配列して作り出す構造は可視光の波長と同程度のサイズになるので、なんともいえない色味のある見た目になります。

 水と液晶分子の比率を変える、温度を変えるなどして液晶の様子を観察します。特別な装置を用いることなく、分子の配列の変化がそのまま見た目に現れるので観察も容易です。まあ、液晶が広く応用される様になった最大の理由は目で見える変化を起こすことができることなのですから、ある意味当然かもしれません。

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2016.06.22

「授業点検」のこと(江頭教授)

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 授業点検。授業は本学の授業ことです。点検するのは教員、その授業を担当していないほかの教員が点検を行います。

 我々大学の教員は高校や小中学校の先生たちの様な「教員」としての教育や訓練を受けていません。(教育学部があればそこの先生たちは違うのかもしれませんが、それはまた別のお話。)ですから授業をするときも学生時代に自分が受けた授業を思い出しながら手探りで授業を行うことになります。各自、自分なりに工夫を凝らすのですが、時には誰かの意見を求めたくなることがあります。また、授業中に何かを思い付き、これはいい、と人に伝えたいと思うこともあります。

 教員同士の会話の中で授業の方法について話題になることがあります。専門分野を超えて盛り上がる話題で時として良いアイデアをもらえることもありますが、話の流れ次第ではあまり効率的ではありません。

 そんなわけで、「授業点検」です。

 本学で行われる授業は順番に点検の対象に選ばれます。対象になった授業を他の教員数名が参観し、授業後にその授業の内容について話し合います。その授業の学科の教員、他の学科の教員、場合によっては他学部の教員も参加するので、いろいろな視点から授業の内容ややり方が吟味されることになります。

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2016.06.21

「安全工学」の講義 第1回安全と倫理から(1) 講義の目的 (片桐教授)

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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 この講義については,すでにこのブログ(2016年4月4日)で紹介しました。この講義では:

  1.  取材力:正しく現状を把握する力
  2.  理解力:正しい基礎的な知識
  3.  思考力:正しく考える方法と能力
  4.  表現力:自分の考えを正しく伝える技術

の4つの力の獲得を目指します。これはそれぞれ本学のカリキュラムポリシーにある、

  1.  (発見)・分析・評価能力
  2.  国際的教養と専門の知識
  3.  論理的思考力
  4.  コミュニケーション能力

に対応します。特に安全の分野では、TPOに応じて、これらの能力を現場で発揮することが要求されます。

 2011年3月の東日本大震災、それに伴う福島第一原子力発電所のレベル7の事故は、我々工学者に冷や水を浴びせ、なさけなく、やるせないものでした。あのとき、刻々と知らされる事態の推移はテレビや新聞で知らされるものの、その多くは専門家や政治家の思い込みと想像に基づく意見でした。

 事実と意見をしっかりと分けるのが、科学のお作法であり、正しく事象を把握するために必須です。しかし、同じ事実を元にしたコメントでも、専門家によって,全く異なる意見が表明され、事態は混乱しました。

 地震のその日に「炉心溶融(メルトダウン)はありえない」と言われた大学教授がいたかと思えば、「メルトダウンどころか、再臨界の可能性もある」といわれた大学の先生もいました。漏洩放射能の影響について危険性をことさらに喧伝する方もいれば、「直ちに健康へ影響はない」と断言した政治家もいました。はては「むしろ少量の放射線は体に良い」と主張する大学教授もいました。これらの新聞やテレビで報道された内容は、あくまで限られた情報からの推測=意見でした。

 誰を信じたら良いのか、どうすれば自分と家族の安全と健康を守ることができるのか、これこそが、この講義の一つの目標です。

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2016.06.20

オープンキャンパスを開催しました(江頭教授)

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 6月19日(日)に本学八王子キャンパスでのオープンキャンパスが開催されました。われわれ工学部応用化学科も学科説明会と模擬講義、ポスターと展示による研究室紹介、そして体験実験やコーナーを設けての個別相談会を実施しました。

 会場は本学片柳研究棟7階の学生実験室。学科開設以前は別の場所を借りて行っていましたが、学生実験室が新設されて以降、ここを会場として使用しています。また、以前は居なかった本学科の学生諸君がアルバイトとして実施に協力してくれる様になり、各種コーナーの内容も充実しています。

 特に今回のオープンキャンパスでは2年生の学生諸君に体験実験を担当してもらうことになりました。タオルの染色やフォトクロミック反応(紫外線で変色する反応)、そして時計反応(自発的に周期的な色の変化を起こす反応系です)など化学的に興味深いと同時に見た目も鮮やかな実験がテーマとして選定されました。

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2016.06.17

学生実験をみてみよう(第3期) 「ペーパークロマト」(江頭教授)

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 このシリーズ「学生実験をみてみよう」では、本学の応用化学科で行われている学生実験を紹介してゆきます。今回は1年生向けの実験、「ペーパークロマト」です。

 ろ紙の下端を溶媒に浸すと、溶媒がろ紙を這い上がってゆく。その際、ろ紙に垂らしておいた物質が溶媒の移動とともに動く、というペーパークロマトの実験はなじみの材料でできる簡単な実験です。動く速度が物質により異なり、その違いで分離が起こります。インクを用いて実験すれば見た目も面白いので1年生の実験として最適のものですが、意外に奥深い内容が含まれています。

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2016.06.16

天気が悪い日、水の沸点は100℃じゃなくなる?(江頭教授)

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 「水の沸点は100℃」いえいえ、正確には「1気圧での水の沸点は100℃」ですよね。

 沸騰という現象は圧力と蒸気圧が釣り合って液体のどこの部分からも気化が起こる状態を言います。ですから圧力が低いと沸点も下がります。これを利用した装置、エバポレーターについてはこのブログ記事でも紹介しています。前回のブログ記事で大気圧の変動の実測値を示したのですが、今回のお題は大気圧の変化で水の沸点はどの程度変化するか、です。

 図は100℃近傍での水の蒸気圧の変化です。100℃でちょうど1気圧(1013hPa)、1気圧ではの沸点は100℃だ、といいうことです。グラフを逆にみて気圧の変化から温度(沸点)の変化をみると0.01気圧の変化で沸点は約0.3℃変化しています。先の記事では一週間のうちに大気圧が0.01~0.02気圧程度変化していましたから、水の沸点は0.3~0.6℃程度変化しているということになります。実生活ではほぼ気にならない数値ですが沸点を測定する実験(たとえば『学生実験をみてみよう(第2期) 番外編 実験室ライフハック「蒸留の温度測定」(江頭教授)』)では少し気になる誤差要因ですね。

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2016.06.15

屋外で作動する水位計(江頭教授)

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 今回はちょっと変わった実験装置を紹介しましょう。水位計、水の深さの変動を計る装置です。

 以前のブログ記事で実験室に置いたビーカーの水位を測って水の蒸発速度を求めました。六日で約1cmという結果でしたが、今度は写真の装置、水位計で蒸発速度を求めてみました。

 写真の装置、Onset社製の「HOBO U20 ウォーターレベルロガー」という製品で本来は屋外で長期の水位の変化を調査するためのものです。測定結果が本体のメモリーに記録され、装置の設置場所に行った際にデータを回収する、という使いかたを想定していますから、研究室で使うのは完全にオーバースペック。まあ、テスト運用を兼ねての実験です。

 二つの1Lメスシリンダーを用意し、一方には水を入れてこの水位計を入れました。水位計は実は圧力を測定する装置であり、吊り下げられた位置での圧力の時間変化を記録してゆきます。

 もう一方のメスシリンダーは空にして、ここにももう一つの圧力計を置き、測定を開始しました。(この理由は後で説明しましょう。)

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実験結果は以下の様になりました。

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2016.06.14

ビジネスマナー 「電話」 (片桐教授)

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 ネットニュースを見ていたら、「新人世代に「時代遅れ」に思えるビジネスマナー」という記事を見つけた。詳しくは元の記事にあたってもらいたい。

 確かに、と思うものもある。しかし、それは当たり前だろう、と思ったのは、1位の「始業5分前にはデスクについている」(51%)、2位の「電話のベルは2回コール以内までに出る」(49%)、6位の「報告・連絡・相談をこまめに行う」(24%)、7位の「社内でも正しい敬語を使う」(23%)、8位の部屋に入るときのノックは3回(4回)(23%)である。違和感のあるビジネスマナーはない人もほぼ半数(49%)いるのだが、上記の5項目に違和感を覚える新人世代が存在することに驚いたのは、片桐がオジン(年寄り)になった証拠だろう。

 1位の始業5分前に席についていることは以前のブログ「πファクター、π/2ファクター」で、、7位の敬語についても以前「『承知しました』 言葉遣いの難しさ」で述べた通りだ。6位のホウレンソウは「必要ないことまで報告する意味があるかわからない」からだそうだ。その報告内容が必要かどうか全て判断できると思うのは、若者の全能感ではないかと思う。何でも「自分でできるもん」と思う心ではないかなと思う。これについては「推薦図書 ヨシタケシンスケ『もうぬげない』ブロンズ新社」で述べた。

 8位のノックについては、「2回で十分」というのが時代遅れと感じる理由だそうだ。でも、2回ノックは俗に「トイレ・ノック」と呼ばれている。確かにトイレの使用確認のためのノックは2回が多い。コンコンコンコンと2回以上ノックされると「外の人はそうとうに切羽詰まっているのかな」と中の人も焦ってしまう。

 今回、取り上げたいのは、2位の「電話にすぐ出る」である。

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2016.06.13

学生実験をみてみよう(第3期)「熱測定(PETボトル)」(江頭教授)

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 本学の応用化学科の学生実験の紹介、今回は2年の向けの応用化学実験から「熱測定」を取り上げてみました。今回の測定対象は身近な化学製品のひとつ、「PETボトル」です。

 PETボトルの材料、ポリエチレンテレフタレートは熱に弱い、ガラスや金属とちがいプラスチックですからこれは常識の範囲内でしょう。では実際に熱をかけたらどうなるのか?柔らかくなって融け始めるのか、分解してガスが放出されるのか、それとも発火してしまうのか。そこまで知っているひとは少ないとおもいます。今回の実験でそれを確かめることになります。

 熱測定に使用する装置は以前このブログで高橋教授が「熱と温度と熱分析」というタイトルで紹介していた装置です。分析方法はTG-DTAといわれる方法で、対象となる物質(今回はPETボトルの切れ端です)を加熱した際の吸熱・発熱の多寡を測定するDTA、質量の変化を測定するTGとがセットで行える様になっています。

 普通の固体は加熱されると液体に、さらに加熱されると気体に、と高校の化学では習います。しかしPETの様なポリマーには「構造としては液体だが見た目は固体」という状態、極端に粘っていて固体と同様に流動が起こらない状態が存在します。これがガラス状態です。見た目が固体のPETには、本当の意味での固体(結晶状態)と見た目だけの固体(ガラス状態)の二つがあるのです。

 市販のPETボトルをサンプルとして実験を行います。

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2016.06.10

新たに学科紹介ビデオを撮影しました。(江頭教授)

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 今週の日曜日(6月5日)に学科紹介のビデオ撮影を行いました。これまでも研究紹介のビデオ映像(山下教授江頭高橋教授西尾教授のものがあります)や全体的な学科紹介のビデオ映像は作成されているのですが、今回は学科の特徴ごとの紹介を追加し、研究紹介の充実させるため、新たなビデオの撮影を行うこととなりました。

 我々の応用化学科が入っている片柳研究棟をバックにした映像、実験室や研究装置の前での映像などを予定していたため、撮影は日曜日になりました。広報経由で依頼した専門のビデオ撮影スタッフの皆さんが、まる一日かけての撮影を進めてくれます。学生が参加するビデオの撮影にはスタイリストの人も居たそうです。

 さて、どんな内容になるか、ですが、これはできあがってのお楽しみ、ということにさせてください。ここでは私自身の撮影の内容について少しだけ紹介しましょう。

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2016.06.09

書評 武田 邦彦著「リサイクル幻想」(文春新書)(江頭教授)

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 なんでもリサイクルすれば良いという訳ではない、という話をこのブログ記事に書きました。そこで思い出したのがこの本です。

 著者の武田 邦彦氏、最近はどんどん専門分野が広がっているようで何とも評価しにくい著書を発表している様子ですが、2000年に出版された本書はまだ普通の本として読める内容です。

 特に、リサイクルの矛盾を列挙した第2章はなかなかの切れ味で、安易な「リサイクルのためのリサイクル」に対する力強い反論となっています。工業製品は品質が保証されていることが必須ですが、リサイクルを行った場合の品質保証は難しい。さりとて低い品質でも許容される用途は極めて限られていてリサイクル品の受け入れ先はあっという間に足りなくなる。紙のリサイクルでは再生紙の再生率を偏重することで返ってエネルギー資源を浪費しているのではないか。等々、いろいろな論点が挙げられています。

 2000年当時、リサイクルに注目が集まり、ともすればリサイクルが無条件で良いことと見なされた、本書にはそんな風潮に対する反論という側面もあるのでしょう。ですから結論は、個別具体的にリサイクルの是非を問うべきだ、で良いと思うのですが著者はリサイクルについてかなり手厳しい態度で、なんでもリサイクルしてはいけない、と見えるほどです。

 

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2016.06.08

歯医者さんとリサイクル(江頭教授)

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 べつに歯が痛くて大変だった、という分けではありません。歯の定期的な検査と歯石のお掃除、というところ。それをなんでわざわざブログに書こう、と思ったかというと診察が終わって料金を支払った帰り際に「医療廃棄物はすべて完全焼却処分を行います。」というポップを見たからでした。

 そういえば診察台に乗せられて歯石を削る作業をされていたとき、なにやら作業用のアタッチメントを袋を破いて取り出していたことを思い出しました。おそらく使い捨ての部品が殺菌されて袋詰めにされて納品されていたのでしょう。一度使用してゴミ箱へ、そして完全焼却、という訳です。リサイクルやリユースが推奨される世の中でこれは如何なものか、あまつさえポップをつくって誇らしげに「完全焼却処分」とはこれ如何に。

 でもこの場合はこれが正しいのだと思います。

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2016.06.07

「承知しました」 言葉遣いの難しさ(片桐教授)

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 学生さんとの事務的なやり取りにメールを良く使います。

 レポートの提出について「KW407のポストに入れておいてください」とメールすると、「了解しました」と返答が帰ることが多くあります。少し違和感を覚えます。

 「了解しました」を目上の人に使ってもよいか否かについては議論のあるところです。ビジネスの場では目上の人、顧客に対しては「了解しました」ではなく「承知しました」を使う方が好ましい、と書かれています。「了解しました」は不適切とまで言い切っている人もいます。

http://kakikata.dkrht.com/mail4/polite00300.html

 一方、これは,こじつけがましいとする人もいます。

 日本語の敬語は難しいものです。この「承知いたしました」が正しいとする根拠の一つに、この「承知」ということばが謙譲語であるということがあげられます。

 敬語には大きく、尊敬語、謙譲語、丁寧語の3種類があります。

  • 尊敬語は、動作・存在の主体を高め、その人に話し手が敬意を表すもの。
  • 謙譲語は、動作(存在)の主体を低め、動作の客体または聞き手に話し手が敬意を表すもの。
  • 丁寧語は、動作・存在を、話し手が聞き手に敬意を表して言ったり、上品に言ったりするもの。

です。[「説得できる文章・表現200の鉄則」日経BP (2009) p184 .ブログ2015.8.25で推薦]

 つまり、「承知いたしました」は,承知した自分を低め、聞き手に敬意を表しているわけです。したがって、そのようなニュアンスを含まない「了解」よりも、目上の人に使うには好ましい、とされているようです。「承知しました」の方が比較的に無難であるということです。

 ところが、以前、以下のようなメールをもらいました。

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2016.06.06

学生実験をみてみよう(第3期) 「ガラス細工」(江頭教授)

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 本学科の学生実験について紹介しているシリーズ、今回は「ガラス細工」について紹介しましょう。このテーマは1年生向けの実験、工学基礎実験Ⅰ(C) のテーマです。

 化学の実験ではガラス器具は頻繁に用いられています。ビーカー、試験管、フラスコなど「化学」といって思い浮かべるガラス器具はいろいろあるでしょう。カタログを見て注文すればすぐにこれらの製品が届くので「ガラス細工」でこれらの実験器具をつくる必要はありません。(製品並みのガラス器具を作れるようになるまで修行ししていたら化学者ではなくてガラス職人になってしまいます。)

 それでも簡単なガラス細工ができるといろいろと便利なことがあります。ガラス板やガラス管は自分の欲しいサイズに切断して使う必要があります。また、キャピラリー管(極細のガラス管だと思ってください)は細くて脆い上に毎日使うモノでもないので購入するのも面倒ですから、ガラス細工で自分でつくれるようになっておきましょう。

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 実験はガラスの切断から。板はガラス切りで傷をつけて切断(というは傷に沿って割る)、ガラス管はヤスリで傷をつけて引っ引っ張るようにして折ります。

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2016.06.03

もう六月、前期の授業も折り返し点に(江頭教授)

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 今週から6月に入りました。4月に始まった授業も回を重ねてすでに折り返し点にきています。

 例えば、私が関わっている授業の「サステイナブル工学基礎」ですが、本日(2016年6月3日)の授業が第8回目となります。大学の授業は15回ですから、今回が中間点となるわけです。授業の内容もそれを反映して今回は今までの授業を振り返って各自がこれまでの授業で学習した内容をまとめたワークシートを作成して提出する予定です。他の授業でも同様なまとめの授業や中間試験が予定されています。

 と、言うような話を家族に話したところ「えっ、もう半分なの?」というような反応が。そういえば1年が前期・後期に分かれていて、その半分が過ぎた、といえば1年の四分の1が過ぎたことになります。イメージとしてはひとつの「四半期」が終わったことになるのですが、通常「四半期」は3ヶ月のことで1ヶ月ほど短いと思われたのでしょう。

 そういえば世間的には大学生は休みが多い、というイメージを持たれているではないでしょうか。

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2016.06.02

学生実験をみてみよう(第3期) 「化学めっき」(江頭教授)

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 本学科の学生実験について紹介しているシリーズ、今回のテーマは「化学めっき」。このテーマは1年生向けの実験、工学基礎実験Ⅰ(C) の一部です。

 さて、メッキ、あるいは鍍金は目的の材料の表面に金属の薄い膜を貼り付ける技術のことです。金箔細工など一部の例外を除いて金属薄膜を別の物質に機械的に「貼り付ける」のは実用化の難しい工程です。力強く接着できたとしても金属にシワや破れ目があっては商品価値はがた落ちです。

 そこで電気化学的な方法が用いられることが多くあります。薄膜を貼り付けるのではなく、目的の物質の表面でイオンから金属を析出させて薄膜をつくるのです。今回の実験テーマではさらに進んで電流を必要としない化学反応によるメッキを行いました。

 実験では水溶液中の硝酸銀を原料として金属の銀を析出させます。従って銀イオンの還元反応を起こさせればよいのですが、勢いよく反応が起こってしまうと還元された銀の原子同士が結合して微粒子になってしまいます。ゆっくり銀の原子が析出する様に調整すると、溶液が接している固体の界面を足場として銀が析出し、その結果銀の薄膜が生じるのです。

 銀イオンの還元を遅くするために、安定なアンモニアとの錯化合物をつくります。硝酸銀溶液にアンモニア水を加えてゆくと、いったん濁った液が再び透明に戻ります。銀イオンから酸化銀ができ、それがさらに反応して錯体となる、そんな化学反応による物質の変化を実感できる実験です。

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2016.06.01

サステイナブル工学基礎 学内施設見学(後編)(江頭教授)

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 「サステイナブル工学基礎」の授業の一環として、本学のエネルギー・廃棄物関連の施設を見学したことを前回紹介しました。

 「サステイナブル工学基礎」はサステイナブル工学の最初の本格的な講義であり、本学の工学部の全学生が受講するものです。総勢約350人。全員が一度に見学に押しかける、という訳にはいきませんので、機械工学、電気電子工学、そして我々の応用化学と、それぞれの学科に分かれて別の日に見学に行きました。応用化学科は2グループに分かれたので約40名程度の学生が入れ替わりで見学に向かいました。

 前回紹介したスマートハウス実習棟は片柳研究棟という建物のそばにありましたが、今回紹介するエネルギー施設はもう一つの特徴的な建物である研究棟の地下にあります。

 一般家庭や比較的小規模のビルには冷暖房の施設は各部屋に独立に設置されています。一方で大きなビルでは冷暖房と換気のために本格的な空調システムが準備されていることが一般的です。本学の研究棟はそれ自身で大きなビルですが、周囲に講義棟、実験棟など複数の中規模ビルが配置されていますから、研究棟には一種の「地域冷暖房システム」のような複数の建物を対象とした空調システムが設置されています。

 写真は研究棟地下にある空調システムの見学時の風景です。

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