「承知しました」 言葉遣いの難しさ(片桐教授)
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学生さんとの事務的なやり取りにメールを良く使います。
レポートの提出について「KW407のポストに入れておいてください」とメールすると、「了解しました」と返答が帰ることが多くあります。少し違和感を覚えます。
「了解しました」を目上の人に使ってもよいか否かについては議論のあるところです。ビジネスの場では目上の人、顧客に対しては「了解しました」ではなく「承知しました」を使う方が好ましい、と書かれています。「了解しました」は不適切とまで言い切っている人もいます。
http://kakikata.dkrht.com/mail4/polite00300.html
一方、これは,こじつけがましいとする人もいます。
日本語の敬語は難しいものです。この「承知いたしました」が正しいとする根拠の一つに、この「承知」ということばが謙譲語であるということがあげられます。
敬語には大きく、尊敬語、謙譲語、丁寧語の3種類があります。
- 尊敬語は、動作・存在の主体を高め、その人に話し手が敬意を表すもの。
- 謙譲語は、動作(存在)の主体を低め、動作の客体または聞き手に話し手が敬意を表すもの。
- 丁寧語は、動作・存在を、話し手が聞き手に敬意を表して言ったり、上品に言ったりするもの。
です。[「説得できる文章・表現200の鉄則」日経BP (2009) p184 .ブログ2015.8.25で推薦]
つまり、「承知いたしました」は,承知した自分を低め、聞き手に敬意を表しているわけです。したがって、そのようなニュアンスを含まない「了解」よりも、目上の人に使うには好ましい、とされているようです。「承知しました」の方が比較的に無難であるということです。
ところが、以前、以下のようなメールをもらいました。
「<所属、学生番号、氏名等略> 先生が担当されています科目の中間試験日に、用事が重なりました。恐縮ですが、追試験等、特段のご配慮をお願いできないでしょうか。ご承知いただければ幸いです。」
一見丁寧な文書です。しかし、「了解」は許容の範囲でも、「ご承知ください」はダメでしょう。「承知しました」では主体は自分なので、謙譲語になります。しかし、「ご承知ください」や「ご承知おき下さい」では主体は相手になり、「謙譲」の強要になります。このメール文章では、私に対して「承知しろ」「へりくだれ」と迫っているわけですね。これは言外に「文句を言うなよ」のニュアンスを含めています。
このような間違いをエントリー作業中にしてしまったら、一発アウトです。
日本語って難しいですね。
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