日本の温室効果ガス排出量を調べてみよう(江頭教授)
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日本の温暖化ガスの排出量はどのくらいでしょうか?大まかにはCO2換算で一人当たり大体10トン、日本全体で13億トン程度というのがこの20年くらいの状況ですが、今回はもう少し細かく変化を見てみようと思います。
日本では公式な温暖化ガス排出量の統計は国立環境研の温室効果ガスインベントリオフィス(GIO)から毎年のデータが発表されています。また、環境省のこちらのページにも算定結果が公表されます。
今、見られるのは2014年の確定値です。2014年の値を2015年の間に集計し、11月に速報値を、今年(2016年)の4月に確定値を発表します。膨大な統計資料に基づいて算出されるので集計に1年かかることになりますから、少し前のデータしか見られないのは仕方がないですね。
さて、2014年の温暖化効果ガスの総排出量は、13億6,400 万トン(CO2換算)とあります。1人10トン、で大体合っていますが少し多くなっています。もう一つ、2014年の特徴は「前年度の総排出量(14 億 800 万トン)と比べて、3.1%(4,400 万トン)の減少。」だといいます。実は温室効果ガスの排出量が減少するのは2009年以来のことです。2008年、2009年の減少はリーマンショックによるものですから2014年には「リーマンショック級」の何かが起こっていた、とも言えるでしょう。
もちろん、温室効果ガスの排出量の変化は経済的な要因に限られるわけではありません。いったい何が原因なのか、少し考えてみましょう。
さて、2014年の温室効果ガスの排出量は2013年と比べて4400万トン、3.1%の減少となっています。温室効果ガスの大部分はCO2、それも燃料由来のもので、全温室効果ガスの9割以上を占めています。まずは燃料由来のCO2を調べてみると4600万トン、3.7%の減少でした。温室効果ガス減少の理由はほとんど燃料由来のCO2が原因だと考えてよさそうです。
では燃料由来のCO2はなぜ減ったのでしょうか。今度はエネルギーの消費量を調べてみましょう。資源エネルギー庁の総合エネルギー統計をみると2014年は13,558PJ(PJはペタジュール、1015Jです)、2013年度の14,009PJにくらべて3.2%の減少です。エネルギー消費の減少がCO2の、温暖化効果ガスの減少の原因だと考えて良さそうです。
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