« 「承知しました」 言葉遣いの難しさ(片桐教授) | トップページ | 書評 武田 邦彦著「リサイクル幻想」(文春新書)(江頭教授) »

歯医者さんとリサイクル(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 べつに歯が痛くて大変だった、という分けではありません。歯の定期的な検査と歯石のお掃除、というところ。それをなんでわざわざブログに書こう、と思ったかというと診察が終わって料金を支払った帰り際に「医療廃棄物はすべて完全焼却処分を行います。」というポップを見たからでした。

 そういえば診察台に乗せられて歯石を削る作業をされていたとき、なにやら作業用のアタッチメントを袋を破いて取り出していたことを思い出しました。おそらく使い捨ての部品が殺菌されて袋詰めにされて納品されていたのでしょう。一度使用してゴミ箱へ、そして完全焼却、という訳です。リサイクルやリユースが推奨される世の中でこれは如何なものか、あまつさえポップをつくって誇らしげに「完全焼却処分」とはこれ如何に。

 でもこの場合はこれが正しいのだと思います。

Photo

 考えてもみてください。前の患者さんの口の中で使われた部品がそのまま自分の口の中へ入ってくる。「間接キッス」とかいっている場合ではなく、感染症の危険性を考えるとそのリスクが気になります。患者の側は気になるだけですが大人数を相手にしている病院側は何時かはそのリスクが実現化するのを見ることになるでしょう。それを防ぐためにはきちんと殺菌することが必要になりますが、その手間が大変なこと、病院内で片手間で行うのではミスが起こりやすいことを考えると使い捨てのアタッチメントを完全焼却処理する、というのは理にかなった方法だと思われます。

 そうです。なんでもかんでもリサイクルすればよい、という訳では無いのです。リサイクルして資源が節約できれば地球環境には優しいでしょう。(実はリサイクルしても必ずしも資源の節約になるとは限りません。これは重要なポイントなのですが、それはまた別のお話し。) しかし、健康被害のリスクと秤にかければ資源の節約は重要とはいえないでしょう。

 地球環境と人の健康、二つの異なった価値をどのように折り合いをつけるのか。今回のケースは比較的わかりやすいものです。しかし、世の中にはもっと意見が分かれる対象もあります。工学が問題解決の手法として使われる以上、そのような問題にぶつかることは避けられないでしょう。

 と、歯医者さんから帰る道すがらに考えたのでした。

江頭 靖幸

« 「承知しました」 言葉遣いの難しさ(片桐教授) | トップページ | 書評 武田 邦彦著「リサイクル幻想」(文春新書)(江頭教授) »

日記 コラム つぶやき」カテゴリの記事