屋外で作動する水位計(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
今回はちょっと変わった実験装置を紹介しましょう。水位計、水の深さの変動を計る装置です。
以前のブログ記事で実験室に置いたビーカーの水位を測って水の蒸発速度を求めました。六日で約1cmという結果でしたが、今度は写真の装置、水位計で蒸発速度を求めてみました。
写真の装置、Onset社製の「HOBO U20 ウォーターレベルロガー」という製品で本来は屋外で長期の水位の変化を調査するためのものです。測定結果が本体のメモリーに記録され、装置の設置場所に行った際にデータを回収する、という使いかたを想定していますから、研究室で使うのは完全にオーバースペック。まあ、テスト運用を兼ねての実験です。
二つの1Lメスシリンダーを用意し、一方には水を入れてこの水位計を入れました。水位計は実は圧力を測定する装置であり、吊り下げられた位置での圧力の時間変化を記録してゆきます。
もう一方のメスシリンダーは空にして、ここにももう一つの圧力計を置き、測定を開始しました。(この理由は後で説明しましょう。)
実験結果は以下の様になりました。
図の青い線が水位の変化で、軸はグラフの右側に示されています。測定開始点での水位を0として約一週間で-0.01m、つまり1cmとなりました。以前の測定とほとんど同じ結果になっていて、ちょっと安心しました。
さて、先にこの水位計は実は圧力計だ、と書きました。グラフにはその圧力の変化も示されています。(黒い線でメモリはグラフ左側です。)こちらは一様な変化を示さず、だいたい1~2kPaの範囲で変動しています。(つまり0.01~0.02気圧程度の変化です。)水が蒸発してゆくのですから圧力は単調に減っていくはずなのですが、これはどうしたことでしょうか?
じつは水位計、すなわち圧力計が計っている圧力は水によって生じる圧力のほかに大気圧が加わっている、そして大気圧は日々、いえ時々刻々変化しているのです。(天気予報などを聞いていると気圧の変化の話が出てきますよね。)空のメスシリンダーにセットしたもう一つの圧力計は実はこの気圧の変化を測定するためのものだったのです。水位変化を計算するために使った「圧力」はこの気圧の変化を引いた残りの部分でした。
1気圧の圧力は水10mの作り出す圧力とほぼ一致しますから0.01~0.02気圧の変化というのは水10cm~20cmの変化ということになります。測定された水位の変化はずっと小さいので比較用の大気圧計がなければほとんど意味のあるデータはとれなかった、ということが分かります。
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