「安全工学」の講義 第1回安全と倫理から(3) プロフェッショナルに求められるもの(片桐教授)
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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。
このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。
この講義では受講者を「責任ある工学のプロ」の卵,企業においては幹部候補生(将来管理職になるもことを期待されるもの)として扱います。したがって、受講者には「高いレベルの矜持」を求めます。では,高レベルの矜持、プロの矜持とはどのようなものでしょう。
少し前の雑誌に、「プロフェッショナルを定義する」という記事が掲載されておりました[1]。その記事には、プロの定義として
- 専門的な知識や技能によって報酬を得ている人
- 果すべき役割をまっとうできる能力を備えた人
- 自分の仕事に夢と誇りを持ち続け、不断に努力を重ねる人(スペシャリストと異なる)
と記述されていました。すなわち、専門的知識、技能 + 倫理感、責任感を持つ者がプロであるとされているわけですね。ここで大事なのは、最後の3番目の「自分の仕事に夢と誇りを持ち続け、不断に努力を重ねる人」だと思います。
さて、管理職と言えば、プロ野球の監督は、私の知る限り皆、選手出身です。プロ野球選手の経験を持たない者はなぜ監督になれないのでしょう。企業では、その職制として経営者は何をやるかについてすなわち「戦略」を担当します。管理職はその目標をどのように達成するかについてすなわち「戦術」を担当します。そして現場の社員は戦術に基づく「戦闘」を担当するわけです。ここで、戦闘の実際を知らない者が戦術を立てても、それは机上の空論になってしまいます。現場を知らない指揮官=管理職に従わなければならない部下の状況は、悲劇です。
「孤高のスペシャリストの宮本武蔵は部下が持てない」
ここで,プロ野球の選手がみな監督になれないことを考えれば、監督と選手を分ける「プロの矜持のレベルの違い」が見えてきます。もちろん,プロ野球の世界では学歴が有効に働くわけではありませんし、選手時代のポジションによる「閥」も有効ではありません。それはその個人の資質なのでしょう。そして、それは職場により大きく異なる=TPOに大きくよると思います。
しかし、どのような職場、どのような現場でも、管理職=リーダーに求められるのは、本人の能力の向上だけではなく、周囲の者の能力の向上を一緒に計ることのできる、そのような環境を創ることのできる者ではないかと思います。
そのためには、自分の能力を高めるだけではなく、周囲に配慮し、周囲に自分の考えを正しく伝える能力(広い意味でのコミュニケーション能力)を持つことが重要であろうと思います。
[1] 大前健一 Harvard Business Review 2007.12.9、
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