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「安全工学」の講義 第1回安全と倫理から(4) ノブリスオブリジェ(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 この講義で片桐はリーダーになるための「ノブリスオブリジェ」の涵養の重要性をしつこく論じています。では、ノブリスオブリジェとは、どのようなものでしょうか。

 辞書的には「高貴たる者の義務」と書かれています。私は、このことばを「大学などで高等専門教育を受けた者はその能力を社会のために正しく使うべきだ」という社会的責任を表す言葉として用いています。もっと言えば、自分の学んだことや獲得した能力を自分のためだけではなく、社会に還元する義務がある、というニュアンスです。私が講義,特に実験の講義で呪文のように唱える「みんなでHappyになろう」も、この精神に基づくものです。

 講義の「安全工学」の前半ではいろいろな事故の未然回避(防止対策)や事故被害の最小化(局限対策)のための手法、具体的には事故要因分析やその対策の立案をケースメソッドや自分の体験からレポートの形で思考実験・実践します。しかし、多くの学生さんのレポートは波及効果を「自分only」の限定的なものにしており、それを他へ波及させることを意識していません。これでは不十分です。講義で習ったことを自分のためだけではなく、みんなのために使うための知恵を獲得しなければ、なぜ安全工学を学んだのか、その価値がありません。

 ある意味、指導者の安全工学はボランティアに似ています。

Fig_2

無償の愛をモチーフにします。無償の愛というと「偽善だ、その究極の目的は自己満足ではないのか」と反駁される方がおります。でも、最初はそれでも十分でしょう。リーダーは部下の安全を守ることにより、自分の立場を守れます。それで良いではないですか。それで自分も部下も幸せにできれば十分です。みんなでHappyになれます。「やらない慈善より、やる偽善」と思います。どんなに高邁な理想をもっていても、それが実践に移されなければ無価値です。

 あなたは、東京工科大学工学部に学ぶ者のノブリスオブリジェ、一人の工学者として、安全工学を学んだ者として、それを知らない人にどのように配慮できるでしょうか。ぜひそれを考えてみてください。

 そしてできれば、その姿勢をレポートにも十分に反映させてください。それにより、あなたのレポートの評価は一段と高まり、良い成績につながり、あなたは確実に幸せになります。そして、そのレポートを書くことで、あなたは自分のことばに責任を持つために、周りの人を幸せにする善い人になれます。

 みんなでHappyになろう!

片桐 利真

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