世界の二酸化炭素排出量を調べてみよう(江頭教授)
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先日の記事では日本の温室効果ガスの排出量について紹介しました。今回は世界全体の温室効果ガスについて調べてみましょう。
世界の温室効果ガスの排出状況については環境省のこちらのページに「世界のエネルギー起源CO2排出量」としてまとめられています。「エネルギー起源CO2」が温室効果ガスのすべて、という訳ではありませんが現時点では人間活動によって放出される温室効果ガスのほとんどはCO2、それも化石資源の利用から発生するCO2です。なので、この値で世界の温室効果ガスの排出状況をおおよそ把握することができます。このデータはもともとはIEA(国際エネルギー機関)がとりまとめた数値をもとに環境省がまとめたものです。化石エネルギー、石炭・石油や天然ガスの生産は大規模になれば必ず専門の業者が関わることになり、多くのお金が動くことになります。それには税金がかかる、ということは政府が把握することになる。化石資源の利用については世界規模で正確な統計資料が作られる下地があった、ということでしょう。
さて、図には環境省の「世界のエネルギー起源CO2排出量(2013年)」の資料から「主な国別エネルギー起源CO2排出量の推移」を示しました。(以前紹介した国内の温暖化ガスの排出量は2014年度までのデータがまとまっていましたが、こちらは2013年までのデータとなっています。「年度」と「年」のちがいにも注意。)
図を一瞥して気づくのは中国でのCO2排出量の大きさと増加スピードの速さです。現時点で中国は最大のCO2排出国です。ただし増加のスピードという点ではインドやブラジルもかなりのものです。
一方でアメリカやEU、それに日本のCO2排出量には大きな変化は見られません。アメリカ、EUについては穏やかに減少しているといっても良いでしょう。
一人あたりの排出量は中国が6.6トンです。アメリカの16.18トン、ドイツ9.25トン、日本9.70トンなどと比べてまだ小さい値ですから、中国の排出量はまだ増える可能性が高いと思われます。(フランスは4.79トンと現在の中国より小さな値ですが、これはフランスが原子力発電に積極的な国である、という事情によるのでしょう。)ブラジルは2.26トン、インドに至っては1.49トンしかありません。世界平均は4.52トンですから、世界中の人がアメリカや日本の様な生活を目指す限りCO2の放出は今後倍増から三倍増すると覚悟する必要があると考えられます。
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