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2016年8月

2016.08.31

「安全工学」の講義 第5回安全対策のたてかた(4) 安全対策で何を守るのか(片桐教授)

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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 実験の事故による被害は、肉体的な被害だけではありません。肉体的被害の他に、精神的被害、経済的被害、信用被害、そして環境への被害も想定されます。被害者も加害者も負担を負わないように、安全対策を取らなければなりません。

 肉体的な被害については、あえて言うまでもないでしょう。

 精神的な被害は、最近PTSD(心的外傷後ストレス障害)やトラウマということばで知られるようになりました。小さくても爆発を経験すると,同じ実験を行うことを躊躇することになります。また、その事故で他人を巻き込み傷つけてしまうと、自責の念で心を病む場合もあります。

 経済的な被害は、単にものを壊されてしまうだけではなく、損害賠償の形で負担を負ったり,あるいは被害者の側も損害賠償を受けられないなどの形で金銭的に困窮することがあります。

 そして,信用被害。同じ失敗を繰返す者はその実験をやらせてもらえなくなります。また、大学の場合、繰り返し爆発事故などを起こすと、その大学の信用もなくなります。

 また、サステイナブル工学を目指す立場としては,環境への負荷,被害も無視できません。

 では、それぞれどのように対策すれば良いのでしょうか。

Table1

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2016.08.30

圧力による化学反応の制御 メタネーションの場合(江頭教授)

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 圧力による反応の制御につて、以前ハーバーボッシュ法を例にとって紹介しました。

 発熱反応である窒素と水素からのアンモニア合成反応はルシャトリエの法則から低温ほど有利である。しかし、あまりに低温では反応が進行しない。そこで、アンモニア合成に際して分子の数が減少することに注目し、再びルシャトリエの法則を適用すれば高圧が有利であることがわかる。圧力を上げ、さらに触媒を開発してついにアンモニアの工業的な合成が可能になった。

というのが一般的なハーバーボッシュ法の説明ですが、前回は

 実はほとんどの反応は温度で簡単に制御できるか、全く絶望的かのどちらかで、圧力による温度条件の緩和、という手段の対象となる反応は一部に限られる。(中略) 結局、ハーバー・ボッシュ法は、反応制御の手法としては「教科書的」とは言えない。

と結論づけました。

 今回、この結論の部分を、もう少し詳しく説明したいと思います。アンモニア合成以外の反応の一例として一酸化炭素と水素からメタン(と水)が生じる反応、メタネーションを例としましょう。

 メタネーションの反応は発熱反応であり、同時に反応によって分子数が減少する反応です。(一酸化炭素1分子と水素3分子が反応し、メタンの水の分子が一つづつ生じます。)この点では窒素と水素からのアンモニア合成と同じです。

 まず、アンモニア合成の時と同様、充分なメタンを生成できる条件の目安となる様な平衡定数を以下の様に計算してみました。

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 圧力を決めると「充分なメタンを生成できる」ための圧平衡定数Kpが求められ、そのときの温度も決まります。アンモニアの場合と同様、圧力と温度(平衡組成で充分な反応物が得られる温度のことです)を計算してみましょう。

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2016.08.29

「安全工学」の講義 第5回安全対策のたてかた(3) 日本人の好きな防止対策、嫌いな局限対策(片桐教授)

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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 防止対策は事故そのものの発生を事前に防ぐタイプの対策です。局限対策は発生した事故の被害の拡大を防ぎ最小限に抑える対策です。ガスコンロの空焚き防止装置は前者に、消火器は後者になります。

 個人的な感想ですが、日本人は防止対策には熱心でも、局限対策には冷淡に思われます。そのような考え方の根底には「事故が起きなければ局限対策は不要である」というものがあります。確かに防止対策が完璧なら、事故は起こりません。しかし、ゼロ・リスクが幻想であるように、完璧な事故防止対策は存在しません。さらに、(現時点で)防止対策の施しようのないケースもあります。その代表例は「地震」です。地震を防止することはできません。我々にできることは地震の被害を最小限に抑えること、そのための備えです。

 局限対策に冷淡な理由は、上記のようなゼロ・リスク幻想による「事故は起きない」ようにできるはずでそうすべきだという一見は正論に見える主張の他に、言霊信仰のような考え方もいなめません。事故を想定することは「縁起でもない」と考える、事故の想定をするとそれがほんとうになる、というような考え方ですね。ある種の縁起担ぎです。

 さらに、日本という国が天災多発地帯であることもその理由かもしれません。「しかたがない」というあきらめの境地ですね。異常事態において騒ぐのはみっともないという日本人の美意識・美学かもしれません。安全対策立案のためには人間心理を理解することが必要であることがよくわかります。

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活躍することなく寿命をむかえた消火器は幸せです

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2016.08.26

「安全工学」の講義 第5回安全対策のたてかた(2) どの問題が対策を求めているか?  (片桐教授)

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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 さて、先のブログで「ゼロ・リスクは達成できない」ことを示しました。では、どのような大きさの危険にまで対策すべきなのでしょうか?。放置しても許される問題の基準はどこにあるのでしょうか?。これについて、異論はありますが、「10万分の1人/年の死亡率」がひとつの基準であるとされています。

 日本の産業界は、危険予知訓練、ヒヤリハット活動など地道なしかし攻撃的な安全対策をおこなうことにより、その安全性を日々向上させています。厚生労働省によると2015年の労働災害による死亡者数は1,057人です[http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000083803.html]。この人数が多いか少ないかについては、総務省統計局による就業者数が6396万人ですから、10万人あたり1.65人になり、まだ対策は必要であると判断されます。

 警察庁によると、2015年度の交通事故死者数は4117人です[https://www.npa.go.jp/pressrelease/2016/01/20160106_01.html]。これは日本の人口(1.273億人)を母数とすると、10万人あたり3.23人になり、まだまだ対策は必要であることが分かります。そして、日本の職場は日常生活における交通事故よりも安全であることが分かります。

 内閣府によると、2015年度の自殺者数は24025人です[http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/toukei/pdf/h27joukyou/zuhyo.pdf]。これは、これは日本の人口(1.273億人)を母数とすると、10万人あたり18.9人になり、対策の必要性を明らかにしています。

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全産業での死者数の推移(中央労働災害防止協会[http://www.jisha.or.jp/info/suii.html]より)

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2016.08.25

夏休み最後の日曜日、夏休み最後のオープンキャンパスを行います。(江頭教授)

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 今週末、8月28日はいよいよこの夏休み最後の日曜日です。

 もっとも、これは高校での話。東京工科大学の授業は前期と後期に分かれて行われますが、後期の始まりは10月のはじめ(実際は少し繰り上がります。)です。大学では後一ヶ月夏休みが続くのですが一般的には学校の夏休みはやっぱり8月一杯でしょうね。

 さて、皆さんの夏休みはどんな夏休みだったのでしょうか。大学のオープンキャンパスの見学に行った人、中には本学を見に来てくれた人も居るかも知れません。まだの人はいますか? なら、夏休みの終わりにオープンキャンパスは如何でしょう? と、言うわけで夏休み最後の日曜日、8月28日に予定されている本学のオープンキャンパスについて紹介しましょう。

 オープンキャンパスはちょっと高校の学園祭に似た雰囲気になっています。学園祭は、常設のクラスや部活の出し物と講堂でのスケジュールを組んだ発表会とで構成されていますが、大学のオープンキャンパスでもそれぞれの学部の説明会や入試説明会がスケジュールに入っています。学園祭の常設の出し物に近いのは各学部による展示や研究紹介のコーナーでしょう。我々応用化学科も片柳研究棟の7階の学生実験室を中心に学科説明・模擬授業・研究紹介・体験実験のコーナーを準備しています。

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2016.08.24

「安全工学」の講義 第5回安全対策のたてかた(1) ゼロ・リスク幻想の危険性(片桐教授)

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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 安全対策と気軽に言っても、満載の問題に対して一気に対策を立てられるわけではありません。やはり危険(リスク)の大きな問題から順番に対策するべきでしょう。以前のブログ(「安全工学」の講義 第4回安全の心理から(2) 安全と安心は違う)でも述べましたが、「危険」は「危険の確率」×「被害の大きさ」で定量化できる、科学的に取り扱うことのできる概念です。したがって、複数の危険の大きさを客観的に比較できます。しかし、人間は弱い生き物で、ほんとうにやるべき対策を後回しにすることがあります。簡単に対策ができる問題を優先して行う場合が散見されます。これは、「いずれゼロ・リスクを達成しなければならないのだから、小さなこといずれ対策しなければならないから」という脅迫観念により正当化されます。

 もちろん、全ての問題を解決し、「ゼロ・リスク」を達成することは理想的です。しかし、「ゼロ・リスク」は達成不可能な目標です。我々は、リスクを小さくすることはできても、それを全くなくすことはできません。特に、新しい科学技術や機器、器具には開発者の想定外のリスクがあると考えなければなりません。また、汎用性の高い器具には必ずリスクがあります。我々には、肉は切れるけど指は切れない「ゼロ・リスクの包丁」を作れません。

 ゼロ・リスクはあたかも達成可能な目標に見せることで人を惑わす幻想です。これを標榜することは、リスクの隠蔽につながります。問題を真正面から直視することを妨げます。ゼロ・リスク幻想は危険から目を逸らせる「存在しない危険は考えなくてよい」と思い込ませることにもつながります。

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2016.08.23

圧力による化学反応の制御 ハーバー・ボッシュ法の場合(江頭教授)

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 役に立つ化学物質を作り出す、それが応用化学科の目的ですが、それには二つの側面があります。ひとつは、どんな化学物質が役に立つのかを知ることで、簡単に言えば「材料の開発」です。

 もう一つの側面は有用な物質を実際に作り出すこと、特に大量生産することで、これが化学工学(私の専門です)の中心的な課題です。化学的に物質をつくるのですから、必要となるのが反応の制御。この分野を特別に「反応工学」と呼んだりします。

 さて、化学反応を制御する場合、一番重要な要素はなんでしょうか?タイトルを見ると圧力?いえいえ、やはり最重要の因子は温度でしょう。同じくタイトルにある「ハーバー・ボッシュ法」ですが、これは反応に対する温度条件を圧力を使って緩和した、という例として理解できると思うのです。

 化学の教科書には必ずハーバー・ボッシュ法の記述があります。窒素と水素からアンモニアを合成する場合、平衡までしか反応は進まない。ルシャトリエの法則から圧力が高い方が有利であることが分かり、後は圧力に耐える反応装置をつくるという技術的な問題の解決へと話が進むのが定番です。

 そこで、充分なアンモニアを生成できる条件の目安となる様な平衡定数を以下の様に計算してみました。

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 圧力を決めると「充分なアンモニアを生成できる」ための圧平衡定数Kpが求められます。圧平衡定数は温度だけの関数ですから、そのときの温度も決まります。

 例えば圧力が常圧(1気圧)の場合、平衡定数は16/3=5.33 atm-2となり、その平衡定数を与える温度は155.5℃と求められます。もしこの温度で充分な早さで平衡に到達できたなら、あるいは非常に活性の高い触媒が開発されていたなら、ハーバー・ボッシュ法は常圧で行われていたはずです。

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2016.08.22

「安全工学」の講義 第4回安全の心理から(6) 他愛行動? 短絡思考?  手段の目的化!(片桐教授)

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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 先のブログ(「安全工学」の講義 第3回安全の法律から(2) コンプライアンス)で行き過ぎたコンプライアンスは短絡思考的に法の目的化(手段の目的化)を招くおそれがあると述べました。この短絡思考による手段の目的化も安全を阻害する大きな心理バイアスです。

 2011年10月に放送されたNHKスペシャルで「巨大津波—その時ひとはどう動いたか」という番組がありました。宮城県名取市閖上地区でのひとの動きを追跡した番組でした。この番組では避難行動の阻害要因として、「恒常性バイアス」「多数派同調バイアス」と「他愛行動」であろうと結論づけていました。他人を助けようと思う心が多くの逃げ後れをうみ、命を奪ったというのは、あまりにも悲しい結論です。

 私個人はこの結論に違和感を覚えました。その後、その番組の内容をまとめた書籍、NHKスペシャル取材班「巨大津波 その時ひとはどう動いたか」岩波書店(2013)が刊行され、読み直すことで検証するチャンスがありました。

 その中のインタビューでの記述(上記P80)、を引用します。

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2016.08.19

「安全工学」の講義 第4回安全の心理から(5) 日本人の行動特性(片桐教授)

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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 崖の上での人間の行動は、おおよそ2つに分かれます。足がすくん動けなくなるか、恐いもの見たさの様に崖の上で踊りだす、のどちらかです。前者は高所恐怖症、後者は高所平気症ともいわれます。私の見る限り、子供は高所平気症の者が多く、大人になるにつれ高所恐怖症気味になります。南紀白浜の三段壁、日光華厳の滝の展望台、福井の東尋坊など、観光地を見てみると、崖の上でふざけているのは若者ですね。中年以降の方は、こわごわと眺めています。

 昨年(2015年)1月に、スペインで崖の上でプロポーズしたら、された女性が興奮と感動のあまり崖から落ちてしまった、というニュースがありました。日本では考えにくい行動、考えにくい反応ですね。

 日本人はどちらかというと、崖の上ですくむ、行動を停止してしまう人が多いようです。

 2011年の大地震の際に、東京では鉄道が全面的に止まってしまいました。その状況で多くの帰宅困難に陥った方々は粛々と歩いて帰る、駅で待機するなど整然と行動したことが、日本人のレジリアンス(困難な状況に耐え回復する力)とされ、海外メディアで大きく取り扱われ、感動を引き起こしました。

 NY Times紙ニコラス・クリストフ氏は「文句を言わずに、集団で耐える力は日本人の魂の中に浸透している。」と評し、ABC Newsダイアン・ソイヤー氏は「辛抱の名人級」「略奪は一度たりとも見なかった」と報道しました。CNNジャック・カファティ氏は「なぜ大震災下の日本で略奪が起きないのか?」と、他国では考えられない日本人の冷静さを不思議に思うというコメントを発しました。

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2016.08.18

動画「工学部 応用化学科の特徴 サステイナブル化学」の内容を紹介します(江頭教授)

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 先日公開した本学の工学部 応用化学科の解説動画から、本学工学部の特徴である「サステイナブル工学」と化学との関係について解説した動画の内容を紹介しましょう。(動画はこちらから閲覧可能です。)
 この動画は炭化水素が燃えている様子からスタートします。

1s

ナレーション「ここではこの炭化水素の合成を例に、サステイナブル化学(サステイナブル工学としての応用化学)について説明します。サステイナブル化学と普通の応用化学とはどのように違うのでしょうか。」

2s

 「液体燃料として使えるこの炭化水素は、下図の様な装置で一酸化炭素と水素を含んだガスを反応させて合成することができます。」

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 「さらに、この原料となるガスは炭素と水蒸気を反応させて発生させることができます。」

4s

 「つまり、固体の炭素から炭化水素の液体燃料を造る事ができる。これは炭素という物質についての化学の知識です。
 ここに二つの炭素があります。向かって左は化石資源から作られたグラファイト、もう一つは樹木を炭化した炭です。両方とも同じ炭素ですから、同じように反応します。どちらも液体燃料の原料となり、化学の目から見て両者に違いはありません。」

5s

 「では、サステイナブル工学の目から見るとどうなるのでしょうか。」
 

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2016.08.17

「安全工学」の講義 第4回安全の心理から(4) 多数派同調バイアス 考えることを阻むもの(片桐教授)

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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 大川小学校の悲劇に関して、複数の報道媒体が全く逆の内容を報道しているので、真実は分からないところがあるのですが、このブログでは一番最初のころの、記憶が新しかったころのものを採用しています(山陽新聞2011.8.24)。この報道では、教頭先生は裏山に逃げることを主張し、その他の先生や地域住民は校庭にとどまること、あるいは川辺の三角の高台(ここは川を遡上した津波に呑まれた)への避難を主張したと、最終的に裏山へ逃れて生き残った生徒が証言しているそうです。この証言が正しければ教頭先生は少数派であったが正しい意見を述べており、それでも多数派の意見に最終的にしたがってしまったわけです。

 いかに自分が正しいという自身があっても、その場の大多数の人がそれに反対したら、自分が間違っているのではないか、と思ってしまう、そんな心の動きを「多数派同調バイアス」と呼びます。危機的状況で自分の行動を周囲にあわせてしまう、誰かが行動を起こした時にそれに一斉に従う、誰かが行動を起こすまで待機してしまい、逃げ遅れてしまう、自分が正しいと思っても多数決に従う、そんな行動です。「山に逃げるべきだ」と思ったがそれをつっぱりきれなかった教頭の行動もこの心理バイアスによるものと思われます。

 私もそのような恒常性バイアスにとらわれていました。

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2016.08.16

「化学書資料館」のこと(江頭教授)

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 化学の勉強をしている高校生の皆さんはいろいろな計算問題を解いたことがあると思います。化学の計算問題には元素や化合物のいろいろな性質を表す数字が与えられていて、それを使って問題を解いていきますよね。

 問題で使われる数字は全くでたらめというわけにはゆきません。例えば「He 1molは何gか?ただし、Heの原子量を1とする」などという問題は算数としては「1g」という答えが与えられるのでしょうが、化学の問題としては不適切です。試験の問題で与えられる数値のうち、元素や化合物の性質を表す数値(先の問題でいえばHeの原子量)には適切な数値を用いる必要があります。

 では、化学の問題が「He 1molは何gか?ただし、Heの原子量は各自調べること。」となっていたらどうすれば良いのでしょうか?もちろん、自分勝手に「Heの原子量を1とする」などと決めることは許されませんから、正しい数値を探してくる必要があります。原子量の場合、話は簡単で教科書で周期律表をみれば4.0という数値を見つけることができるでしょう。ではもっとマイナーな性質の数値はどうでしょうか。たとえば、「物質が水にとけるときの溶解熱」など、硫酸など代表的な物質を除いて、なかなか見つけるのが難しいのではないかと思います。

 そんなときに役立つのが「化学便覧」に代表される化学に関するハンドブックです。

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2016.08.15

「安全工学」の講義 第4回安全の心理から(3) 恒常性バイアス(片桐教授)

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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 大川小学校の悲劇で避難を遅れさせてしまった要因のひとつは「ここまで津波はこない」という誤った認識でした。この間違いは「恒常性バイアス」で説明されます。「恒常性バイアス」は、事故などに遭遇し、被害が予想される場合に根拠なく自分に都合の悪い状況を無視し、「自分は大丈夫」と事態を過小評価する心の動きです。

 ビスマルクは「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と言ったそうです。大川小学校の悲劇においても、多くの父兄や地域住民がここまで津波はこないと主張した一方で、教頭は裏山への避難を主張したと複数のメディアで報道されています。「ここまで津波は来ない」と判断した人は、2010年のチリ地震の津波や、2日前の津波警報についての「狭い自分の経験」から判断したのではないでしょうか。一方、教頭は管理職として文科省や県からの通達やハザードマップにより被害想定の形で小学校まで津波がくる危険性を事前に知っていたのではないでしょうか。つまり教頭はより広い「経験」に基づき判断したと推察します。人間は自分の経験を何よりも優先するそうです(ブログ2015.8.27)。、「今まで生き延びてきた」という経験は、「自分だけは死なない」という誤った認識を産むもとではないかと思われます。

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2016.08.12

「安全工学」の講義 第4回安全の心理から(2) 安全と安心は違う(片桐教授)

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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 まず,「安全⇔危険」と「安心⇔不安」は異なる概念です。ここで危険は「危険の確率」×「被害の大きさ」で定量化できる、科学的に取り扱うことのできる概念です。一方、不安は主観的なもので定量化できません。そしてその大きさは、個人の経験やその事象のTPOにより大きく異なります。そして,困ったことには、「人は情で動くが、理では動かない」ため、危険より不安を重大視します(ブログ2015.8.27)。だから、安全を司る者は、その不安や安心を理解するための心理学的な知識を必要とします。

 この危険と不安のそれぞれの大きさがよく相関していれば、問題ありません。しかし、実際には「安全だけど不安」に思う事象や「危険だけど安心」してしまうように、「安全⇔危険」と「安心⇔不安」がミスマッチすることが多々あります。

 その代表としては、ダイオキシンとタバコの例を挙げることができます。タバコは間違いなく危険です。肺がんや心臓疾患を引き起こし、毎年多くの人の命を奪います。WHOの試算では毎年11万人以上がタバコ関連死で亡くなっています。一方、ダイオキシンは危険であるという情報が先行し、特に所沢のゴミ焼却炉問題以降、ひどく不安をかき立てられましたが、直接的にダイオキシンの有害性により亡くなった方は、有史以来4名とされています。ダイオキシンはそれほど危険ではないけども不安にさせていると言えます。

 このような危険と不安のミスマッチは、限られた資源(人的資源、経済的資源、時間的資源)の有効利用を邪魔します。すなわち、不安を優先することで、誤った対策をとらせたり、対策すべき事項の優先順位を誤らせます。そして,結果として対策できるはずの危険への対策を怠らさしめます。ダイオキシン対策に使われたお金と労力をタバコ対策に使えば、どれだけの命を救えたでしょうか。

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2016.08.11

「コーオプ実習情報交換会」が開催されました(江頭教授)

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 本学工学部のユニークな教育システム「コーオプ教育」についてはこのブログでも折に触れて紹介してきました。

 我々応用化学科に先立って工学部機械工学科の学生が本年度後期、この10月から実際に企業での実習を開始する予定になっています。そこで去る8月9日、「コーオプ実習情報交換会」と題して、受け入れ企業の方々と本学、工学部機械工学科の学生諸君との面談を中心とした会が開催されました。

 日本での本格的なコーオプ教育の実施は初めて、ということでマスコミの取材も入りました。NHKのニュースでも紹介されたとのことです。(私はこのニュースを見逃してしまいました。残念。)

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2016.08.10

「安全工学」の講義 第4回安全の心理から(1) 安全工学における心理学の重要性(片桐教授)

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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 安全の講義でなぜ心理学?という疑問をもたれた学生さんもいらっしゃるかもしれません。しかし,安全ほど心理学的な基礎知識や理解を必要とする講義はありません。

 以前のブログ(安全工学の講義 第1回目(1))でこの講義の目的は、

  1. 取材力:正しく情報を把握する力
  2. 理解力:正しい基礎的な知識
  3. 思考力:正しく考える方法と能力
  4. 表現力:自分の考えを正しく伝える力

であると、説明しました。

 この(1) の取材において、人間にはその心理的バイアス(偏見、色眼鏡)により、正しく物事を見て認識することができません。そしえ、(2)の正しい基礎的な知識は、必ずしも人の情に沿うものではありません。さらに、心理的バイアスは(3)の正しい思考判断を邪魔します。そして、他人に自分の考えを正しく伝えるためには、その聞き手の心を理解しなければなりません。すなわち、安全工学で習得・修得すべき事項は人間心理の理解を基盤とするものです。

 上記の(1)については、認知心理学的と社会心理学の理解が必要です。また、(2)の正しい基礎的な理解のためには、「安全と安心」「危険と不安」の完全な分離が求められます。そして、(3)の正しい思考判断にも自分の心の動きを客観的に見て判断する自律の心を保つ技術が必要です。そして(4)のリスクコミュニケーションのために心理学的な知識が必要なのは言うまでもありません。

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2016.08.09

明日(8月10日)から東京工科大学はお休みです。(江頭教授)

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 明日から東京工科大学はお休みです。

 「あれっ?少し前にも同じようなことが書いてあったような...。」そう思った人もいるかも知れません。大学の授業は7月28日に終了、その後試験期間に入り、ほとんどの試験は8月4日までに終了していますので、大部分の学生諸君からみると本学はすでに休みに入っています。

 本当は8月8日までが試験期間となっていますが、この期間は追試験(試験当日に体調不良などの理由で受験できなかった学生諸君のための再試験です。)や、不慮の事故に対応するための期間です。

 さて、今回の8月10日から休み、という意味は我々教員や職員の皆さんもお休みになる、ということです。JR八王子駅、八王子みなみ野駅と本学をつなぐスクールバスもこの期間は運休。厚生棟の食堂やFOOD'S FUUの売店もお休みになります。図書館や保健センターも休止するので、キャンパスの機能は完全に停止。人もまばら、というかほとんど無人になります。

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2016.08.08

「安全工学」の講義 第3回安全の法律から(4) 学生のうちに取っておきたい資格 (片桐教授)

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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

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 学生のうちに資格を取りましょう。

 資格はその人がその能力を持つことを証明する手段で、あくまでその資格取得の目的は「能力を身につける」ことです。これを見失わないようにしましょう。その上で、資格を実力養成のひとつの目標として活用しましょう。

 資格を取っておくと、就職に有利です。特に、求められていて,でも持っている人の少ない(取得が難しい)資格は就職に有利です。「作業環境測定士」の資格をきっかけに、修士でも大学の准教授になった方もいます。転職にも有利に働きます。また、有資格者は給与面で優遇されることがあります。その業務に必要な資格を持つ者に手当を出す会社もあります。さらに、定年延長などの雇用上のメリットもあります。「作業環境測定士」の資格を持っている技術職員の方で、70歳を過ぎても再雇用再雇用で現役で働来手いる方もおります。老後の対策にもなります。

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2016.08.05

「安全工学」の講義 第3回安全の法律から(3) 労働安全衛生法の改正(片桐教授)

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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 平成26年から28年6月にかけて、労働安全衛生法が改正されました。主な改正点のうち、「化学物質のリスクアセスメントの義務化」などの化学物質関連の改正は、応用化学の者に大きな影響を与えます。

 もちろん、この改正の影響は工学部の応用化学科だけの問題ではありません。多くの遷移金属元素やセレンやアンチモン等の元素化合物、あるいはMOCVDで使う有機金属化合物や、ハンダも指定されたことで電気電子科の方々にも影響があります。また、油類、鉱油やガソリンなども指定され、研磨剤なども指定されたことで、機械工学科の方にも影響があります。

 バイオ関係の物質も多く指定されましたので、応用生物学科や医療保険学部の方々にも、油絵の具やそれに関する油という意味では、デザインの方々にも影響はあります。また,汎用の農薬も対象となり、事務部の方々への影響も懸念されます。

 化学物質の管理に関する法律はとてつもなくたくさんあります。大きく分類すると、人間の健康への悪影響(有害性)を及ぼさないように管理することを求める法律と、環境への悪影響(環境汚染性)を防ぐための管理を求める法律に分けられます。今回の労働安全衛生法の改正は、前者の有害性を意識したものですが、後者にも若干関わってきます。

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2016.08.04

8月7日(日)にオープンキャンパスを行います(江頭教授)

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 東京工科大学の期末試験は本日(8月4日)で終了します。(正確には今週の土曜日、8月6日までとなっています。)これで大学生はやっと夏休みに入るのですが、高校生の皆さんはすでに夏休みに入っているかと思います。

 夏休みにはいろいろ楽しい予定もあるかと思いますが、大学のオープンキャンパスを見学するのにも良いシーズンかと思います。と、言うわけで今回は本学の夏休みのオープンキャンパスについて紹介しましょう。

 八王子キャンパスでの予定は8月7日と28日、どちらも日曜日に設定されています。オープンキャンパスに行ったことのない人は「何をやっているのかな?」と思われるかも知れません。キャンパスがオープンになって中には入れるとして、それから?

 実態はちょっと高校の学園祭に似た雰囲気になっています。学園祭は、常設のクラスや部活の出し物と講堂でのスケジュールを組んだ発表会とで構成されていますが、大学のオープンキャンパスでもそれぞれの学部の説明会や入試説明会、予備校による入試対策講座などがスケジュールに入っています。学園祭の常設の出し物に近いのは各学部による展示や研究紹介のコーナーでしょう。我々応用化学科も片柳研究棟の7階の学生実験室を中心に学科説明・体験コーナーを準備しています。

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2016.08.03

「安全工学」の講義 第3回安全の法律から(2) コンプライアンス (片桐教授)

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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 「悪法も法なり」とはソクラテスのことばと伝えられています。間違った法律でも法律であるからには守らなければならない、という考え方で、これに従い、死刑判決を受けたソクラテスは毒をあおったといわれています。

 一方で、「悪法は法にあらず」という考え方もあります。法律は手段であるという考え方は、無条件の法令遵守を要求しません。コンプライアンス(法令遵守)の対象は、国の定めた法律だけではなく、組織内での命令なども含まれます。社内の命令が国の法律に背くとき、それは国の法律が優先されます。同様に、国の法律が「自然法」(神の意志や人間の理性に基づく「高次の法」、コモンセンス)に反するのなら、その法律も拘束力をもつべきではないという考え方ですね。

 2011年の福島第一原子力発電所の事故では、このコンプライアンスについていろいろと問題を投げかけました。

 事故の原因のひとつは崩壊熱の冷却の失敗でした。これは、不適切なマニュアルに従ったことが原因ではないかという報道があります。原子炉には電源を必要としない冷却装置があったのですが、報道では「炉内の状況を自動記録した「チャート」によると、地震直後の原子炉自動停止に伴い炉内圧力が上昇。直後に圧力が急減しており、非常用復水器が自動起動したと推定される。しかし午後3時ごろには再び圧力が上昇、復水器が止まったとみられる。操作手順書は、炉内圧力が急減した時には復水器を止めるよう定めており、運転員が操作した可能性もあるという。」だそうです。つまり、コンプライアンス(この場合はマニュアル)に無条件に従ったのが、事故局限化の障害になったというものです。

 また、吉田所長の本社命令に対するコンプライアンス(命令)違反は,日本を救いました。これは本社の「注水の中止命令」を現場の吉田所長が独断で無視し、海水の注水を続けたというものです。これは正しい判断だったと評価されていますが、吉田所長はこの件で6月に本社から口頭注意を受けています。

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2016.08.02

期末試験の今昔(江頭教授)

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 東京工科大学は現在、期末試験中です。

 期末試験は7月29日の金曜日からスタート。この日は例年よりずっと遅い梅雨明けの翌日で、夏の始まりとともに試験が開始されました。暑さの中で試験スタートとは気の毒に、と思ったのですが、最近は冷房完備の部屋での期末試験ですから暑さそのものはあまり関係がありませんね。

 などと他の先生たちと話していたのですが、そう言えば昔はこの時期に試験をやっていなかったのでは、という話に。昔は7月の中頃から下旬に夏休みがスタート(これは高校と同じ時期)、休み明けの9月に少しだけ授業をしたあとに期末試験、という日程が普通だったと思います。教室に冷房の無い時代(そう、そいう時代があったのです!)夏の暑い盛りに試験をやるのは不可能、というか夏休みの本来の存在理由は暑さを避けることでした。

 さて、本日(8月1日の月曜日)も試験監督をしたのですが、その際に気づいたのは腕時計のことです。

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2016.08.01

「安全工学」の講義 第3回安全の法律から(1) 法律の目的は? (片桐教授)

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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 以前のブログ([2016.05.18安全への関わり方])で、世間には安全管理を専門とする方が多くいらっしゃるのに、安全を推進する方が少ない理由を、片桐なりに考察しました。あの文章を読むと、片桐は「無法者」と誤解される方もいらっしゃるかもしれません。

 とんでもない!

 片桐は「法の精神」を常に守りたいといつも考えています。

 先の文章で批判しているのは、法令遵守を目的にしてしまうことです。法令遵守はその法令の目的を達成する手段です。

 例えば、安全衛生の基盤となる法律のひとつである「労働安全衛生法」では、その第1条にその目的が明示されています。

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