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「安全工学」の講義 第4回安全の心理から(1) 安全工学における心理学の重要性(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 安全の講義でなぜ心理学?という疑問をもたれた学生さんもいらっしゃるかもしれません。しかし,安全ほど心理学的な基礎知識や理解を必要とする講義はありません。

 以前のブログ(安全工学の講義 第1回目(1))でこの講義の目的は、

  1. 取材力:正しく情報を把握する力
  2. 理解力:正しい基礎的な知識
  3. 思考力:正しく考える方法と能力
  4. 表現力:自分の考えを正しく伝える力

であると、説明しました。

 この(1) の取材において、人間にはその心理的バイアス(偏見、色眼鏡)により、正しく物事を見て認識することができません。そしえ、(2)の正しい基礎的な知識は、必ずしも人の情に沿うものではありません。さらに、心理的バイアスは(3)の正しい思考判断を邪魔します。そして、他人に自分の考えを正しく伝えるためには、その聞き手の心を理解しなければなりません。すなわち、安全工学で習得・修得すべき事項は人間心理の理解を基盤とするものです。

 上記の(1)については、認知心理学的と社会心理学の理解が必要です。また、(2)の正しい基礎的な理解のためには、「安全と安心」「危険と不安」の完全な分離が求められます。そして、(3)の正しい思考判断にも自分の心の動きを客観的に見て判断する自律の心を保つ技術が必要です。そして(4)のリスクコミュニケーションのために心理学的な知識が必要なのは言うまでもありません。

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 幸いに、安全における心理学はすでに多くの成書があります。その一部はすでにこのブログで紹介してきました(2016.3.16, 2015.8.27, 2015.2.4, など)。そのような本を参考にしてみてください。

  •  以下に参考図書を上げておきます。
  • 広瀬弘忠「ひとはなぜ逃げおくれるのか 災害の心理学」集英社新書(2004)
  • 中田亨「ヒューマンエラーを防ぐ知恵」朝日文庫(2013)
  • NHKスペシャル取材班「巨大津波 その時ひとはどう動いたか」岩波書店(2013)
  • 村上陽一郎「安全と安心の科学」集英社新書(2005)
  • 山岸俊男、M. C. ブリントン「リスクに背を向ける日本人」講談社現代新書(2010)
  • 広瀬弘忠「無防備な日本人」ちくま新書(2006)
  • 中谷内一也「安全。でも、安心できない...」ちくま新書(2008)
  • C. モレル「愚かな決定を回避する方法 なぜリーダーの判断ミスは起きるのか」講談社+α新書(2005)
  • 中田亨「「事務ミス」をナメるな!」光文社新書(2011)
  • 吉田信彌「事故と心理 なぜ事故に好かれてしまうのか」中公新書(2006)
  • 芳賀繁「事故がなくならない理由 安全対策の落とし穴」PHP新書(2012)
  • A. リプリー「生き残れる判断生き残れない行動」光文社(2009)
  • C. モレル「愚かな決定を回避する方法 なぜリーダーの判断ミスは起きるのか」講談社+α新書(2005)
  • K. シュルツ「まちがっている エラーの心理学、誤りのパラドクス」青土社(2011)
  • 村田厚生「ヒューマンエラー学の視点」現代書館(2012)
  • 岡本、堀、鎌田、下村「職業的使命感のマネジメント」新曜社(2006)
  • 山岸俊男「社会的ジレンマの仕組み セレクション社会心理学」サイエンス社(1990)
  • 山村武彦「人は皆「自分だけは死なない」と思っている 防災心理学」宝島社(2005)
  • D. ガードナー「リスクにあなたは騙される」早川書房(2009)
  • 勝見明「鈴木敏文の「統計心理学」」日経ビジネス文庫(2006)
  • 越智啓太「犯罪捜査の心理学」化学同人(2008)
  • 大浦宏邦「人間行動に潜むジレンマ」化学同人(2007)
  • 中谷内一也「リスクの社会心理学」有斐閣(2012)
  • 中谷内一也「環境リスク心理学」ナカニシヤ出版(2003)
  • 岡本浩一「リスク心理学入門」サイエンス社(1992)
  • 千葉、仲矢、真島「サイエンスコミュニケーション 科学を伝える5つの技法」日本評論社(2007)
  • 林幸雄「噂の拡がり方」化学同人(2007)
  • 大山、丸山「ヒューマンエラーの科学」麗沢大学出版会(2004)
  • 重野、福岡、柳原「安全と危険のメカニズム」新曜社(2011)
  • 永山、雨宮、黒田、矢野「説得できる文章・表現200の鉄則」日経BP(2009)
  • Sellnow, Ulmer, Seeger, Littlefield「Effective Risk Communication」Springer (2009)
  • 池谷裕二「ココロの盲点」講談社Blue Backs (2016)

片桐 利真

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