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「安全工学」の講義 第5回安全対策のたてかた(3) 日本人の好きな防止対策、嫌いな局限対策(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 防止対策は事故そのものの発生を事前に防ぐタイプの対策です。局限対策は発生した事故の被害の拡大を防ぎ最小限に抑える対策です。ガスコンロの空焚き防止装置は前者に、消火器は後者になります。

 個人的な感想ですが、日本人は防止対策には熱心でも、局限対策には冷淡に思われます。そのような考え方の根底には「事故が起きなければ局限対策は不要である」というものがあります。確かに防止対策が完璧なら、事故は起こりません。しかし、ゼロ・リスクが幻想であるように、完璧な事故防止対策は存在しません。さらに、(現時点で)防止対策の施しようのないケースもあります。その代表例は「地震」です。地震を防止することはできません。我々にできることは地震の被害を最小限に抑えること、そのための備えです。

 局限対策に冷淡な理由は、上記のようなゼロ・リスク幻想による「事故は起きない」ようにできるはずでそうすべきだという一見は正論に見える主張の他に、言霊信仰のような考え方もいなめません。事故を想定することは「縁起でもない」と考える、事故の想定をするとそれがほんとうになる、というような考え方ですね。ある種の縁起担ぎです。

 さらに、日本という国が天災多発地帯であることもその理由かもしれません。「しかたがない」というあきらめの境地ですね。異常事態において騒ぐのはみっともないという日本人の美意識・美学かもしれません。安全対策立案のためには人間心理を理解することが必要であることがよくわかります。

Fig_3

活躍することなく寿命をむかえた消火器は幸せです

 「日本人は防止対策を重視し過剰に期待する傾向がある」ことを知り、その上でどのようにバランスの良い安全対策を立てればよいかを考えなければなりません。

 このような意識は自動車教習で習う「だろう運転、かも運転」にも通じるものがあります。「子供が飛び出してくる「かも」しれない」という考え方を否定していると、事故そのものを避けることができません。ことわざにも「備えあれば憂いなし」と申します。防止対策だけでなく局限対策まで考えをめぐらせる人は、事故を起こしにくい人です。そして、そのような備えに使うお金や労力は使わなければもったいないのではなく、使わなくて幸いと思うべきです。

片桐 利真

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