« 「化学書資料館」のこと(江頭教授) | トップページ | 動画「工学部 応用化学科の特徴 サステイナブル化学」の内容を紹介します(江頭教授) »

「安全工学」の講義 第4回安全の心理から(4) 多数派同調バイアス 考えることを阻むもの(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 大川小学校の悲劇に関して、複数の報道媒体が全く逆の内容を報道しているので、真実は分からないところがあるのですが、このブログでは一番最初のころの、記憶が新しかったころのものを採用しています(山陽新聞2011.8.24)。この報道では、教頭先生は裏山に逃げることを主張し、その他の先生や地域住民は校庭にとどまること、あるいは川辺の三角の高台(ここは川を遡上した津波に呑まれた)への避難を主張したと、最終的に裏山へ逃れて生き残った生徒が証言しているそうです。この証言が正しければ教頭先生は少数派であったが正しい意見を述べており、それでも多数派の意見に最終的にしたがってしまったわけです。

 いかに自分が正しいという自身があっても、その場の大多数の人がそれに反対したら、自分が間違っているのではないか、と思ってしまう、そんな心の動きを「多数派同調バイアス」と呼びます。危機的状況で自分の行動を周囲にあわせてしまう、誰かが行動を起こした時にそれに一斉に従う、誰かが行動を起こすまで待機してしまい、逃げ遅れてしまう、自分が正しいと思っても多数決に従う、そんな行動です。「山に逃げるべきだ」と思ったがそれをつっぱりきれなかった教頭の行動もこの心理バイアスによるものと思われます。

 私もそのような恒常性バイアスにとらわれていました。

Photo_10

 震災後の2012年12月7日に私は盛岡で行われていた第39回有機典型元素化学討論会に参加していました。学会の2日目の17:18に三陸沖でM 7.4の余震が発生し、盛岡も震度5弱でした。会場のいわて県民情報交流センター(アイーナ)の最上階のホールの階段席で地震に遭遇しました。

 講演途中で突然「キュインキュイン」と携帯の警戒音がきこえ(片桐心の声:何の音だろう?。携帯鳴らすなんて非常識な!)、5〜10秒後に大揺れ(震度5〜6相当、)が1分ほど継続しました(心:あ、地震だ、結構でかいな、わ!わわわわ!)。この揺れで照明等の天井設備がはげしく揺れました。誰かがカバンや講演要旨集で頭を守ると、皆がそれに習いました(心の声:照明揺れてるな頭を守っとこう)。大揺れ後もゆっくりとした揺れ10分ほど続きました(心:7階だから揺れが大きいな…まだ揺れるの?)が、講演再開後(心:講演中止かな?えっ?継続するの?根性やなw)に、参加者は誰も逃げませんでした。避難を促す館内放送が行われていました(心:避難指示の放送、うるさいなあ)が、講演は続行し(心:本当に誰も逃げはらへんなあ)、15分遅れで講演は終了しました。結局誰も逃げませんでしたし、私も逃げませんでした(心:よし、これは講義のネタにしょっと)。

 恒常性バイアス、多数派同調バイアスの恐ろしさを熟知している私でも、これらの心理バイアスにつかまってしまいました。

片桐 利真

« 「化学書資料館」のこと(江頭教授) | トップページ | 動画「工学部 応用化学科の特徴 サステイナブル化学」の内容を紹介します(江頭教授) »

授業・学生生活」カテゴリの記事