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「安全工学」の講義 第4回安全の心理から(5) 日本人の行動特性(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 崖の上での人間の行動は、おおよそ2つに分かれます。足がすくん動けなくなるか、恐いもの見たさの様に崖の上で踊りだす、のどちらかです。前者は高所恐怖症、後者は高所平気症ともいわれます。私の見る限り、子供は高所平気症の者が多く、大人になるにつれ高所恐怖症気味になります。南紀白浜の三段壁、日光華厳の滝の展望台、福井の東尋坊など、観光地を見てみると、崖の上でふざけているのは若者ですね。中年以降の方は、こわごわと眺めています。

 昨年(2015年)1月に、スペインで崖の上でプロポーズしたら、された女性が興奮と感動のあまり崖から落ちてしまった、というニュースがありました。日本では考えにくい行動、考えにくい反応ですね。

 日本人はどちらかというと、崖の上ですくむ、行動を停止してしまう人が多いようです。

 2011年の大地震の際に、東京では鉄道が全面的に止まってしまいました。その状況で多くの帰宅困難に陥った方々は粛々と歩いて帰る、駅で待機するなど整然と行動したことが、日本人のレジリアンス(困難な状況に耐え回復する力)とされ、海外メディアで大きく取り扱われ、感動を引き起こしました。

 NY Times紙ニコラス・クリストフ氏は「文句を言わずに、集団で耐える力は日本人の魂の中に浸透している。」と評し、ABC Newsダイアン・ソイヤー氏は「辛抱の名人級」「略奪は一度たりとも見なかった」と報道しました。CNNジャック・カファティ氏は「なぜ大震災下の日本で略奪が起きないのか?」と、他国では考えられない日本人の冷静さを不思議に思うというコメントを発しました。

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 私は、これは日本人の強い正常性バイアスと多数派同調バイアスの正の効果ではないかと思います。賞賛される日本人の特質と前のブログ(「安全工学」の講義 第4回安全の心理から(3) 恒常性バイアス)で紹介した大川小学校の悲劇の根源は同じ心理バイアス、恒常性バイアスと多数派同調バイアスによるのではないかと思います。無条件に誇れるものではなさそうです。

 日本人はパニックを起こしにくい教育、社会的環境ではないかと思います。その意味で、日本人に取って怖いのはパニックよりもパニックを必要以上に恐れることではないかと思います。非常時には脳が最も活性化した状態で対処することが望まれます。柳田邦男の「フェーズ3の眼」(講談社文庫、1987)では、脳が最も活性化するのは平常状態よりもやや活性化した状態(フェーズ3)であると記述しています。日本人の場合は、さらに活性化し暴走したパニック状態(フェーズ4)ではなく、極端に活性の落ちている状態(フェーズ1)になるということでしょうか。

 アメリカの映画やドラマで危機的な状況に陥った主人公が「落ち着け!、おちつけよ!」と独り言で自分に言い聞かせて,敵に対峙する準備をするシーンがありますが、普通の日本人の場合は「あわてろ、あわてろ」と自分に言い聞かせる方が良いのかもしれません。そういえば釜石の奇跡の原動力となった「津波てんでんこ」や「稲むらの火」も、「落ち着け!」ではなく「あわてろ!」ですね。

片桐 利真

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