「化学書資料館」のこと(江頭教授)
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化学の勉強をしている高校生の皆さんはいろいろな計算問題を解いたことがあると思います。化学の計算問題には元素や化合物のいろいろな性質を表す数字が与えられていて、それを使って問題を解いていきますよね。
問題で使われる数字は全くでたらめというわけにはゆきません。例えば「He 1molは何gか?ただし、Heの原子量を1とする」などという問題は算数としては「1g」という答えが与えられるのでしょうが、化学の問題としては不適切です。試験の問題で与えられる数値のうち、元素や化合物の性質を表す数値(先の問題でいえばHeの原子量)には適切な数値を用いる必要があります。
では、化学の問題が「He 1molは何gか?ただし、Heの原子量は各自調べること。」となっていたらどうすれば良いのでしょうか?もちろん、自分勝手に「Heの原子量を1とする」などと決めることは許されませんから、正しい数値を探してくる必要があります。原子量の場合、話は簡単で教科書で周期律表をみれば4.0という数値を見つけることができるでしょう。ではもっとマイナーな性質の数値はどうでしょうか。たとえば、「物質が水にとけるときの溶解熱」など、硫酸など代表的な物質を除いて、なかなか見つけるのが難しいのではないかと思います。
そんなときに役立つのが「化学便覧」に代表される化学に関するハンドブックです。
化学物質に関する情報は本来、実験によって得られるものです。どんな情報も誰かが実験によって得たものですが、それらは論文として発表されて学者同士の評価をうけ、そこで異論のでなかったものが「正しい」情報として認められます。(ここで「正しい」と括弧つきで書いたのは、あくまでもその時点で正しいと考えられるにとどまるからです。)
一つ一つの情報は論文としてまとめられている訳ですが、同じ種類のデータが順序よく出版される訳ではありません。ですからそれらの情報を集めて順序よく整理した辞典の様な本があると便利、というか必要で、それがハンドブック(便覧)という訳です。
化学の分野で代表的なものは日本化学会が丸善から出している「化学便覧 基礎編」と「化学便覧 応用編」でしょう。
本学では図書館経由で「化学書資料館」という電子資料を利用できます。これは本来は丸善のデータベースであり、「日本化学会の編集物を中心に国内で出版された化学書を統合的に検索し、閲覧することができるサイト」です。検索データを閲覧するには普通は丸善と個別に契約する必要があるのですが、本学では図書館が一括で契約してくれているため、学内のネットワークから個別のログインを気にしないで利用できる様になっています。
昔は「化学便覧」を1ページずつめくって、必要な数値をメモしたりコピーしたりしたものですが(それはそれで味があると思いますが)、今では「化学書資料館」に含まれる「化学便覧 基礎編」「化学便覧 応用編」、それに化学実験の方法に関する百科事典のような「化学実験講座」などを一括して検索することができるのです。便利な世の中になったものです。
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