飛行機の貨物室の環境(江頭教授)
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さて、結果は上の図です。
少し小さくて分かりにくいかも知れませんが、黒い線が航空機の貨物室の気圧、正確には貨物室内のトランクの中に入っているセンサーの周辺の気圧です。
だいたい100kPaの大気圧からぐっと下がって80kPa(0.8気圧)程度に低下、大気圧にもどってからもう一度上下を繰り返しています。羽田発、シンガポール空港経由、パース行きだったので、時間を見るとこの二つの気圧減少は羽田-シンガポール間、シンガポール・パース間のそれぞれのフライトに相当していることが分かります。
飛行機が飛んでいるとき、外の大気圧は0.2気圧ですから、貨物室の内圧が0.8気圧ということは、ちゃんと与圧されている、ということのようです。とはいえ0.8気圧まで下がるのでトランクにポテトチップスの袋などは入れない方が良いですね。
さて、もう一点。図の青い方の線は記録されていた温度です。シンガポールのチャンギ空港に到着した頃に15℃くらいまで温度が下がっていますが、まだまだ下がる途中だったように見えます。圧力が下がるのと違い、熱が逃げて温度が下がるには時間がかかりますから、貨物室は15℃よりずっと低い温度になっていたと考えられます。
シンガポールのチャンギ空港に到着した荷物は今度は暖まってゆきます。そのときの温度の上がり方をみると、貨物室内での温度の下がりかたとだいたい同じくらいです。(少し下がる方が遅くも見えますが…。)これは、トランク周辺の温度が15℃を中心に貨物室ではマイナス方向に、チャンギ空港ではプラス方向に同じくらいの温度差があった、と考えられます。チャンギ空港の気温が、たとえば25℃だったとするとプラス方向に10℃、これと同じ温度差をマイナス方向にとれば15-10=5℃くらい、というのが貨物室の温度の見積もりです。
外気と同じ-50℃というのは無茶なので、やはり貨物室も保温されていたようですが、客室よりはかなり低い温度に設定されていた様です。0℃以下になると貨物中の水が入ったものにいろいろな影響がでますから、ぎりぎりのところで0℃より少し上の温度が選ばれたのでしょう。
貨物室の環境は0.8気圧、5℃、というのが私の見立てです。やっぱり客室の方が居心地が良さそうですね。
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