「安全工学」の講義 第7回ヒヤリハット報告書(1) ヒヤリハット報告書は事故再発防止の起案書であって事故報告書ではない(片桐教授)
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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。
このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。
どうやら私はヒヤリハット報告書の書き方指導の専門家「らしい」です。あまり本人に自覚はありません。しかし、これまでにも、前の大学内での講演会や他大学への出張講義などを依頼されてきました。また、いろいろな雑誌のヒヤリハット特集への原稿依頼も頻繁にあります。もちろん,本学の「工学安全」の講義でもヒヤリハットの書き方を指導しています。ただし、私の指導は、ヒヤリハットを書くことではなく、ヒヤリハットを書かせる際の注意事項、ヒヤリハット指導法の講義です。
正直、ヒヤリハットは書く側でも書かす側でも、あまり楽しいものではありません。自分の本業への時間を奪われます。自分の恥を皆にさらすことに抵抗感を覚えないわけがありません。しかし、会社や本学でも積極的にヒヤリハットを書くことを推奨します。本人がやりたく無いこと、上司もあまりやりたく無いことを組織は強く求めてきます。なぜでしょうか。それは、広い意味での「書く側」(書く人とそれを指導する上司)と「書かせる側」でのヒヤリハットの意義が異なることによります。
多くの場合書く側は「ヒヤリハットは事故報告書の延長」と認識しています。事故に至らなかったけども危なかった事例を集めることと認識しています。しかし、書かせる側には「ヒヤリハットは事故防止のタネ」です。小さな事故の種を未然に把握し、対策することにより、事故を防止すること=攻撃的な事故対策の起案書としてヒヤリハットを位置づけます。
1件の重大事故の後ろには300件のヒヤリハットがある。
ハインリッヒの法則では1件の取り返しのつかない重大事故の後ろには29件の細微小災害が存在し、その後ろには300件のヒヤリハットが存在するとしています。これは保険経済学の統計的経験則です。したがって、ヒヤリハットを地道に潰していけば、重大災害を防ぐことができる,と考えます。ヒヤリハット報告書は重大事故を未然に防ぐための起案書と位置づけるべきです。
現場でヒヤリハット報告書の作成を指導する上司は、そのような意識でヒヤリハットを書かせるべきです。そして,多くのヒヤリハット報告を受け、文章化し、予算をもらい、対策することで,自分の支配下での重大事故を未然に防ぐことができます。
したがって、ヒヤリハット報告書の作成を指導する者は、常にその対策まで視野に入れて作成を指導しなければなりません。これが、片桐の「ヒヤリハット報告書の書き方・書かせ方」の講義で単なる事故報告書ではなく、その応急対策、抜本対策を書かせる理由です。
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