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「安全工学」の講義 第5回安全対策のたてかた(5) 安全対策を阻害するもの(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 安全対策を実施しようとすると、必ず邪魔が入ります。今回はそのような安全対策を阻害するもの,抵抗する人間的なものについてまとめます。

 最初に挙げるのは「強い恥の意識」です。あたりまえですが、事故を起したことは周りに知られたくない、知らせなくて済むなら知らせたくない,と思うのは当然のことです。「事故を起こすのは恥」というよりも、事故発生を他人に知られるのは恥であると感じるわけです。あるいは、「身内の恥を晒す」ことへの抵抗感を覚えるのでしょう。

 この恥の意識を支配するのは組織への帰属意識です。小さな事故も研究室内では武勇伝として語られることもあります。これは、研究室のメンバーは身内である、と考えるからです。片桐は講義で自分の失敗=恥をさらします。これは、講義を聴く学生を自分の身内と思うからです。このような身内の内外の境目は、その組織への帰属意識に支配されます。しかし,近年の人材の流動化(リストラ、転職、契約社員)はこのような帰属意識を希薄にさせます。

 

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 前例の踏襲もまた、安全対策を阻害します。今までの方法を変更することには抵抗感があります。これは、前例を踏襲して何か問題が起きた場合、その問題の責任は前任者にあるとすることができるからでしょう。また、新しい方法や対応の開拓は面倒なものです。だから、「今まで通りです。他所でもそうしてます。」ということばで、自分の責任を逃れたくなります。

 その意味で、前例の踏襲は原因の転嫁の一形態です。潜在危険に対して、対策をとらない理由を付ける行為です。その最も頻繁な原因・理由はお金=予算の問題です。例えば、暗い街灯の場所で自転車事故が起きた場合に、「暗いのが悪いのではない、自転車の交通マナー(無灯火)が問題である」とするものです。もちろん、無灯火が悪いに決まっています。しかし、うっかりと無灯火にしていても事故を避けられるようにするのが、安全対策です。

 こうやってまとめてみると、安全対策を阻害するものは、人の心の中に巣食う怠け心、横着心のように思われます。それを押さえ込むものは、唯一、その人のプロフェッショナルとしての矜持、責任あるものとしての倫理ではないかと思います(ブログ安全工学の講義から第1回(3))。

片桐 利真

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