「安全工学」の講義 第9回 化学の安全 危険性(1) 危険性と有害性 (片桐教授)
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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。
このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。
「危険性」ということばは、飲むと毒であるとか触れると皮膚がただれるとかの意味もイメージしますが、化学の世界では、爆発したり燃えたりすることを表します。毒性などの生体への影響は「有害性」ということばで区別されます。
危険性を表す言葉では、爆発性、可燃性、自然発火性などを挙げることができます。いずれも「火」に関わる性質を表します。
火が燃えるためには,3要素が必要です。まず,可燃物(燃えるもの)、酸化剤(火災では空気中の酸素)、着火源です。この3つがそろわないと、原則、火は出ません。ただし、酸化反応ではない反応の暴走、例えばアセチレンの重合反応やエポキシドの重合反応によるエネルギーの放出は「爆発的」なものです。
また,三要素を複数持つ物質もあります。例えば,多くの自己発火性,自然発火性のものは可燃物と着火源を兼ねています。火薬は可燃物と酸化剤が共存しています。これらの危険物は、最後の1つの要素(火薬の場合は着火源となるエネルギー)があれば燃えたり爆発したりします。
逆に、消火をしたければ、3要素のうちの1つを奪えばよいわけです。
火災において水をかけるのは、酸素を遮断し、水の気化熱でエネルギーを奪うことを目指します。金属ナトリウムの火災では、水をかけると水素を発生させてしまい可燃物を増やし爆発させる元になるので、砂をかけます。これにより、空気の遮断を促します。粉消火器はその砂の代わりに粉を使います。また、泡消火器も二酸化炭素の泡で効率的に空気を遮断します。このような酸素を奪うことによる消火を窒息消火と呼びます。
昔、映画で油田の火災を近傍で火薬を爆発させて消すというものがありました(ヘルファイター(1969)アメリカ映画)。この消火方法を爆風消火と呼ばれます。これは、油田の火災をニトログリセリンの爆発でロウソクの火を吹き消すように消火するというものです。このとき、爆風は爆発により高温ですが酸素を含まないガスです。この場合は、ガス化した可燃物を吹き飛ばしてしまうことが目的なのか、断熱膨張で高温ガス体を拡散させて急激に冷却するのか、それとも「窒息消火」なのか、可燃物を奪うのか、エネルギー(熱源)を奪うのか、酸素を奪うのか、解釈の難しい消火法です。
この消火法についての見解は、爆発の大好きな江頭先生にお聞きしたいところです。
まあ、消火の原理は理解のためには有用ですが、実際に火災の火が消えれば、それが何よりです。
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