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「安全工学」の講義 第7回ヒヤリハット報告書(3) ヒヤリハット報告書に書くべき原因・書かなくてもよい原因,書いても良い対策・書いてはいけない(書かせてはいけない)対策 (片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 ヒヤリハット報告書を書くとき(書かせるとき)には、その事例を可能なかぎり具体的に記述的に,事実と意見をしっかりと分けて記述することが求められます。そういう意味で、ヒヤリハット報告書には「書かなくてもよい原因」はありません。関連する全ての事象は「書くべき原因」です。ヒヤリハットの作成においての記述ではむしろ見落としが懸念されます。そのような見落としを防ぐためには、危険要因分析の技法、危険要因を設備・人間・環境に分けてなぜを5回繰返すことが有効です。

 では、対策についてはどうでしょう?。

 対策には書いてはいけない対策があります。それは「しっかりやる」という道徳的な責任を問うような対策は禁忌です。

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電柱衝突直前…「脇見運転事故のもと」

 「次からはちゃんとやります」と言うコメントは小学生の言い訳です。このコメントには何の実もありません。このような対策を対策と思っている現場は同じ事故を繰返します。ヒヤリハット作成を指導する者は、「どのようにして」ちゃんとやらせるかを提案させなければなりません。マニュアルを作成し、それを遵守させるのはひとつの定式化された方法です。しかし、今度はマニュアルをちゃんと守らせるための対策を要求されるようになります。「ちゃんと、ちゃんと」を要求していくと、「ちゃんと」の深みに陥ります。

 対策は具体的であり、設備や環境の改善をまず考えるべきです。「ちゃんとやるしかないように機械設備を設計する、安全装置をつけることが必要なのです。その一例が、車のカーナビの操作です。車のカーナビの操作はデフォルトでは停車中またはサイドブレーキが効いている時でないと、操作できなくしてあります。「運転中には操作しない」を守らせるためには、「運転中には操作しないように呼びかける」でも、「そのようにマニュアルに記載する」でもなく、運転中には操作できないように装置を設定してしまうことが有効な対策である,ということです。

 とはいえ、カーナビのそのような設定をわざわざ外して使う方、運転中でもテレビを見られるようにしてしまう方もいらっしゃるのですが..。

片桐 利真

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