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「安全工学」の講義 第7回ヒヤリハット報告書(2) ヒヤリハット報告書の書式 (片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 現場の作業員に書かせる会社のヒヤリハットでは、ヒヤリハットの内容を客観的に記述することだけを求めます。その事故の要因分析はその作業員の上司や指導員の仕事であり、気がついた本人の仕事ではないと考えます。これは企業の職制によります。企業での経営者はその企業の目標やすすむべき方向性,すなわち「戦略の立案」を担当します。管理職は,その戦略を実現するための「戦術の立案」を担当します。そして、現場の作業員はその戦略に従い「戦闘の実施」を担当します。したがって、ヒヤリハットでも、現場の人間がその対策案を考えることはある意味越権行為であると見なされます。

 そのような現場の作業の対策立案を公式に吸い上げるのが「改善提案」です。そのため,改善提案は上司(管理職)により審査され評価され、その報奨は作業員にのみ与えられます。作業効率化の戦術=改善提案そのものを職務・職制とする管理職には改善提案を出しても報奨はでません。それは給料のうちと考えられています。

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 したがって、大学生=未来の管理職候補に書かせるヒヤリハットは、会社の作業員に書かせるヒヤリハットと同じ書式ではいけないことが分かります。単なる事故報告書ではなく、その危険要因分析を含み、さらに対策立案までを含むものであることが求められます。そのような学生さんにヒヤリハットを書かせるためには、その助けになる書式が求められます。図は、これまでの経験に基づき,片桐が改良し提案している書式です。これは試行錯誤の許される教育現場、管理職養成の教育目的の書式です。そして,裏面には対策も立案させましょう。

 もちろん、ヒヤリハットにもTPOが存在します。同じ大学でも医療の現場のように職制がしっかりとしており、失敗の許されない,対策案立案に高度かつ広範な専門的知識の必要とされる場合には、危険要因分析も対策立案も現場の作業者だけで行うことは好ましく無いことです。

 ヒヤリハット作成を勧奨する立場の者は、職場職場に応じて最適な書式を準備しなければなりません。

片桐 利真

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