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「安全工学」の講義 第8回 日常生活の安全(5) タバコvs大麻 (片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 さて,危険と不安のミスマッチの課題で、「大麻の健康被害はタバコに比べて小さいので危険ではない」という論を提出してきた学生さんがいました。前回,タバコ(合法的)をやめた方が良い理由を述べましたので、今回はこの「大麻の安全性」について、頭ごなしに禁止するのではなく、「なぜダメなのか」を少し掘り下げてみましょう。

 危険=リスクということばによる被害は、肉体的(健康)被害だけではなく、精神的被害、社会的被害、経済的被害、環境的被害と総合的に考慮する必要があります(ブログ「安全工学」の講義 第5回安全対策のたてかた(4) 安全対策で何を守るのか)。

 WHO(世界保健機関)の1997年の報告書「物質乱用プログラム 大麻:健康上の観点と研究課題」では、タバコのニコチンと大麻のTHC(Δ-9-テトラヒドロカンナビノール)を比較して、THCの肉体への被害はニコチン程度かそれ以下と見積もっています。そして,これが大麻解禁を訴える者の大麻正当化の根拠となっています。つまり、「タバコよりも毒性(有害性)が低いのだから、解禁すべきだ」という主張につながっています。

 しかし、人間への危険は「肉体への被害」だけで評価すべきではありません。大麻の吸引による短期的な精神への影響は、「著しい人格障害、時間感覚の喪失、「ハイ」 の感覚(高揚感)、不安、緊張、混乱」などが挙げられています。また、「すべての学習と精神運動機能を大幅に損なう」ことが報告されています。そして、その青年期における常習による「発達障害」も懸念されています。これらの症状は「酒」により酩酊することにも似ています。お酒の場合と異なるのは、周囲にその状況が明確に伝わらないことです。そのため、自動車運転を使用としていても、誰も止めないでしょう。実際、自動車の運転の危険が高まるとの研究結果もあるそうです。さらに長期的な影響として回復しにくい認知機能の低下も報告されている。さらに、「依存症候群、大麻によって誘発された精神病、(明確な)統合失調症の惹起と悪化」が報告されておいます。以上をまとめると、大麻の有害性は主に精神の健康への影響です。

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 そして,大麻が多くの国において「非合法」であり、その使用はその個人の社会的立場を毀損します。つまり信用被害を起こしてしまうことも意識しなければなりません。さらに、違法な物であるがゆえに大麻は高価です。その常習化による経済的な負担被害も考慮しなければなりません。

 以上のように大局的に見ると、大麻のような「麻薬、違法薬物、ドラッグ」には禁止される十分な理由があることがわかります。また、「有害性」を単に「肉体への健康被害」だけで考えてはいけない、もっと大局的に考えなければならないこともわかります。その危険性の一部だけをもって全てのように語るのは,自分の主張を正当化したい人の詭弁です。そのような論に惑わされてはいけません。

 安全工学を学ぶことにより、そのような物事の危険性=リスクのより正しい包括的な(抜けの少ない)捉え方を身につけることができます。

片桐 利真

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