地球の周の長さは4万キロメートル (江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
以前、このブログ記事で「飛行機でたった11km地球からはなれただけで人間が生きてゆくことが出来ないほどの環境変化が起こる」と書きました。垂直方向に11km以下、ということと対比して、今回は水平方向の話をしましょう。
まず、地球の大きさについて。地球の赤道半径は6,378kmとされています。「赤道」とついているのは地球が完全な球ではなく、赤道の周の部分が膨らんだ回転楕円体に近い形をしているからだそうです。
さて、地表で生活する我々の感覚からすると縦方向より横方向の広がりが気になります。地球の半径から周囲長を計算してみましょう。2×3.14×6,378=40074 km、結局表題通り約4万キロメートルということになります。水平方向で最も遠いところは2万キロメートル先、ということになります。
もう少し感覚的に分かるものとして、地図上に円を描いてみましょう。例えば東京工科大学の八王子キャンパスを中心にして、100kmの円では関東平野がほとんど入る形になります。1000kmでは日本列島の大部分が入ります。
いずれにしても、人間の生活圏の広がりは垂直方向には11キロメートル(本当はそれ以下)なのに、水平方向にはずっと広大であることが分かります。
さて、話は変わりますが、地球の周囲の長さ4万キロメートル、という数字、なんかキリの良い数字ですよね。実はこれ、理由があります。
長さの単位は昔からいろいろな方法で定義されてきました(人の歩幅など)。しかし、フランス革命当時、世界共通で統一された単位制度を決めよう、という理念のもとで総説された「メートル法」では人間によらない長さの単位として地球のサイズをその基準としたのでした。北極点から赤道までの距離を1万キロメートルと(正確には1mを北極点から赤道までの距離の1000万分の1と)定義したので、地球の周囲長は4万キロメートルになります。(厳密には赤道と直行する、つまり南極と北極を通る周の長さですね。)
地球のサイズを基準にするというは大胆、というか荒唐無稽に見えるのですが、よく考えると「世界共通」の長さの単位を考えるというのは意外と難しい問題です。その解答として、全世界で共通しているもの、つまりたった一つの地球という星がその基準だ、というのはうなずける話です。
現在では、長さの単位としてのメートルは、光の「速度」とセシウム原子の放射周期から定義された「時間」をつかって定義されます。光もセシウム原子も世界共通(というか宇宙共通?)ですよね。
(この長さの定義については「単位の話(山下教授)」にも紹介されています。)
「解説」カテゴリの記事
- 災害発生時の通信手段について(片桐教授)(2019.03.15)
- 湿度3%の世界(江頭教授)(2019.03.08)
- 歯ブラシ以前の歯磨き(江頭教授)(2019.03.01)
- 環境科学の憂鬱(江頭教授)(2019.02.26)
- 購買力平価のはなし(江頭教授)(2019.02.19)