「安全工学」の講義 第10回 化学の安全 有害性(3) 毒をむやみに恐れない。生物毒と人工毒 (片桐教授)
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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。
このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な経験と意見を述べていきます。
安全の心理の回に、スロビックの11因子の話しをしました(「安全工学」の講義 第4回安全の心理から(2) 安全と安心は違う)。その因子のひとつである「人工物」は天然物よりも1000倍程度も危険に感じるそうです。
下の表は、天然毒と人工毒のLD50値を対比させたものです。
意外に思われるかもしれません。タバコに含まれるニコチンと青酸カリが同じ程度の毒性を持ちます。むしろ青酸カリというと、テトロドキシン(河豚の毒)と同じ程度と思う人が多いかと思います。でも、青酸カリとフグ毒を比較すると、フグ毒の方がおおよそ1000倍も強いことが分かります。スロビックの研究の通りですね。また、サリンとカビ毒が同じ程度であるということにも,びっくりすると思います。
化学実験において「毒物」だからといってむやみに恐れる必要はありません。カビてしまったパンや腐った肉を扱うのと同じように扱えばよいということです。つまり、口に入れない、吸い込まない、触らない、作業後は手を洗う、を徹底すれば良いということです。
ただし、化学実験で扱う「毒物は」極めて純粋で濃い状況で大量に扱いますから、安全のためにはそれに適した準備が必要です。口に入れないようにマスクをする、気化したものを吸い込まないように換気のよい場所や局所排気設備で扱う、直接触らないように「適切な手袋」をつける、そして作業後はかならず手を洗う、を徹底すれば良いということです。
毒物は正しく怖がりましょう。
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