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「安全工学」の講義 第9回 化学の安全 危険性(2) 危険性を恐れるな (片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 私の師匠の丸山教授は豪快な先生でした。研究室のお茶会などで自分の失敗談をよくお話しになっていました。その中で,印象に残っていたのは、先生の学生時代のオートクレーブを使っての加圧密閉化での酸化反応の開発研究の話しでした。これは、圧力釜爆弾のようなもので、私なら学生さんの研究テーマにできないものですが、昔の大学ではこのような実験がよく行われていました。

 実験棟の廊下の端に、そのオートクレーブを設置して、それを土嚢で覆い、加熱することを何十回も繰返したそうです。その何十回目かの反応で、オートクレーブがキーンと言う音を発し、「これはまずい」と先生が土嚢の影に伏せたところで、オートクレーブが轟音を立て爆発したそうです。圧力計が柱に刺さり、周囲のガラス窓がみな飛散したそうです。

 「そのときボクは、しめた,と思ったよ。爆発したということは,酸化反応が進行したことだからね」,うれしくなって、後片付けは後回しにして、祝杯をあげにいったそうです。その直後、教員の先生が何事かと見に来たら,爆発の跡があり、圧力計も柱に深々と刺さっているし、実験をやっているはずの学生がいない!、と近所の病院に学生丸山を探しまわったそうです。「いやあ、あそこでうれしくなって呑みに行ったのは、失敗だったなあ。あとで目から火が出るほど怒られたよ、ワハハ。」

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 爆発でも、その可能性を予測して、十分な準備を行い、人的な被害がなければ、問題ではない、という意見に異論はあるかもしれません。しかし、5mの火柱でもキャンプファイアーは火事ではありません。逆に1mの火柱でも、準備されていない環境なら、立派な火事(ボヤ)です。

 大事なことは、爆発や火災を起こさないことではなく、それに備えることであると,私は学びました。爆発や火災を恐れて、挑戦する心を失う方が、大きな損失であるということです。

 しかし、PI(研究室の責任者)になると、学生が危ない危険な爆発するような実験を企画した場合、それを全力で止める私です。逆説的ですが、そんな実験を企画する学生さんは、大体爆発や火災の危険性を認識せずに、対策をせずに実験に取りかかりたがります。一方、そのような危険性を認識した学生さんは、十分な準備で実験を実施するよりも、実験を行わないことを選びます。そのような慎重な学生さんには、十分な準備を行わしめ、「安心しろ、骨は拾ってやる」といって実験をさせます。

 怖いのは爆発そのものではありません。大学レベルの規模の実験では、万全の準備があれば、被害は回避できます。爆発そのものよりも、準備や対策を怠ることこそが,被害を招く、本当に怖いことです。

片桐 利真

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