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「安全工学」の講義 第9回 化学の安全 危険性(4) 引火 (片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 ダイハード2のラストシーンで、犯人達が逃走するジャンボジェット機が離陸する時に、その燃料タンクから漏れている燃料に主人公が火をつけて、引火した火がジャンボを燃やし尽くすというシーンがあります。私は以前から「本とかしら?」と思っていました。

 この疑問に答える演示実験を大阪大学の山本教授のグループが示してくれました。長さ数メートルの透明なアクリルのパイプの中にジエチルエーテルをたらして充満させ、それに下端から着火し、その「火が走る」速度を測定されたそうです。こん実験による火の走る速度はおおよそ10 m/secだそうです。これは100m走の世界記録レベルで、時速36km/hです。一方、ジャンボジェットの離陸速度は250~300 km/hです。したがって、ダイハード2のようにマクレーンはライターでジャンボジェットを落とすことはできないと推測されます。

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飛行機は落ちません「ざんね〜ん!」

 昔の化学実験ではよく引火しました。私が大学3年の時の実験では、有機溶媒の加熱にも火を使っていました。つまり、フラスコを入れた水浴をブンゼンバーナーで加熱していました。また、ガラス器具も今のような共通擦りの密閉性の高いものではなく、亀裂の入った使い古しのコルク栓でしたので、そこから漏れた溶媒蒸気への引火はよくあることでした。

 そして,エーテルが燃える時の炎はうす青い炎なので、昼間の明るい実験室ではよく分かりません。「おかしいなあ、エーテルが蒸留されて受け器にたまらないな」,と思っていたら、出てくる端から燃えていたという笑えない話しもありました(いや、その時は指摘されたときは、もはや笑うしかなかったのですが…)。あの時は加熱をバーナーで行っていたので、輻射熱も強く、炎にまったく気がつきませんでした。

 実験は、良い器具を使って、ご安全に。

片桐 利真

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