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「安全工学」の講義 第9回 化学の安全 危険性(3) 危険情報源 (片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 物質の危険に関して、安全データシート、SDS (Safety Data Sheet) あるいはMSDS (Material Safety Data Sheet) は信頼性の高い情報源です。これはネット上で「MSDS 化学物質名」で検索すれば入手することができます。特に危険な(危険性のあるand/or有害性のある)物質のMSDSはその製造元からも販売元からも配布されるので、検索すると複数件ヒットします。できれば自分の購入した購入元のデータシートを入手しましょう。それができなかった場合には、名前の通った販売会社のものを入手し、その代用としましょう。

 安全データシートは、いささか誇張されて書かれています。その物質を良く知っている者には,危険性や有害性をオーバーなくらいに記述しています。これは、製造者として,あらゆる可能性を挙げておくことで、免責されることを狙っているのでしょう。数十グラムの試薬を扱う時に数トンのバルクと同じ注意を払うのは、滑稽ですね。

 試薬会社独自の危険性や有害性の表示もまあ信頼できます。その代表的なものとしてAldrich社のカタログの記載を挙げることができます。しかし、この記載は「その物質」のみの記載だけのこともあります。今は改善されていますが、25年ほど前に、「トリホスゲン」という物質の危険情報は「Moisture-sensitive(水との反応性)」とだけ記載されていたそうです。しかし、その水との反応により発生する「ホスゲン」は第一次世界大戦で毒ガスにも使われた、強い毒性ガスです。その後、危険表示に「Highly Toxic(強毒性)」も追加されたそうです。そのような見落としや記載不足の可能性は否めません。

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 市販の試薬では、そのような情報源から危険情報を得ることができますが、新規の自作の物質の場合は、なかなかそうはいきません。

 ここではその爆発危険性にしぼって,構造からの類推法を記述します。

  1. 遷移金属を含むもの:特に粉体、多孔質のものは要注意です。触媒活性を持つということは,着火源になるのと同じです。
  2. 有機金属化合物:高い反応性で空気や水に触れると燃え出すことがあります。
  3. ヘテロ原子間結合を有するもの:過酸化物やニトロ基のように酸素−酸素結合や酸素—窒素結合を持つものは酸化剤になりえます
  4. 歪みをもつ化合物、3員環、4員環を有するもの:歪みエネルギーの放出の危険があります。
  5. 過酸化物を作りやすいもの:代表的なものとしてTHF (tetrahydrofuran ) をあげることができます。エーテル類は要注意です。
  6. ポリマーの原料になり得るもの:二重結合や三重結合の重合により大きなエネルギーを放出できます。

 この他にも、いろいろな物質がいろいろな危険性や有害性を持ちますので、普段からその危険情報も意識してください。

片桐 利真

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