東京工科大学　工学部　応用化学科　ブログ

　さて、なぜ木炭自動車がエコカーなのでしょうか。

　普通の自動車も木炭自動車も、エンジンから二酸化炭素が出ています。これは燃料の中の炭素原子が酸化されたものですが、その炭素がどこから来たのか、によって温暖化の原因なるかどうかは異なります。

　普通のガソリンは地面から掘り出した石油から作ったもので、自動車から出てくる二酸化炭素はもともと地面のにあったものが大気中に放出されたものです。

　でも燃料中の炭素が大気中の二酸化炭素を植物が吸収したものなら、大気から見ると自動車から出てくる二酸化炭素は植物が固定した二酸化炭素が戻ってきたものです。二酸化炭素は自動車と大気をぐるぐる回っているだけなんですよね。

　ですから木炭自動車は植物から得られた炭素を原料とし、大気中に二酸化炭素を増やさない“カーボンニュートラル“を実現させた先端的なシステムとみることもできるます。しかし、合成ガスの持つエネルギーの密度はガソリンや軽油など炭化水素のそれとは比べるべくもなく、その性能は満足のいくものではありませんでした。戦後、物資不足の解消ととともに木炭自動車は消えていったそうです。

　さて、カーボンニュートラルという意味でのエコカーを現在によみがえらせるにはどうしたら良いのでしょう。合成ガスを発生させる炉を自動車に乗せて安全に安定的に動かすのはかなり難しいので、その代わりに、合成ガスをガソリンやディーゼルに変換できれば取り扱いも容易だしエネルギーの密度も高くなる。なにより普通の自動車にそのまま燃料として供給することができる。そうなればシステム全体としてエコカーと同じになるわけですね。

　一酸化炭素と水素の混合物から酸素原子を水として取り除き、炭素と水素が結合すればガソリンやディーゼル燃料と同じ炭化水素を造ることができる、これがFischer-Tropsch合成。適切な触媒を使えばこんな反応を起こすことができるのです。

　バイオマスから液体燃料をつくればカーボンニュートラルという意味で普通の自動車もエコカーになる、ということです。

江頭 靖幸