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2016年11月

2016.11.30

「安全工学」の講義 第12回 機械の安全(4) 工具の使い方(片桐教授)

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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 皆さんの中にはカッターで指を切った経験を持つ方も多いと思います。私も何回か切りました。市販のプラスチック製の定規をあてて、それに沿わせてカッターの刃を滑らせた時に、刃が定規の斜めに切った部分に乗り上げて定規を抑えている指をスパッと…。勢いよく刃を滑らせていると、よくある(?)ことです。本当はカッターを使う時は、カット用の金属製のガイドがついている定規を使うべきです。

 工具は特に単純な構造のものほど、ハンディで小型のものほど、その取り扱いに注意が必要です。小型であるということは安全装置を装着しにくいということですし、小さい工具の使用時には油断しがちです。

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2016.11.29

温度制御のこと(江頭教授)

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 触媒の熱処理をしようとした時の話です。どこのメーカーとは言いませんが温度調節器にヒーターをつないで加熱を始めたのですが………。

「あれっ?温度が一定にならないな。PIDが外れちゃってるな。」

「これはいけない、AT、ATっと。えーと、マニュアルはこれか。」

「あれATのやり方が書いていない。不親切だなー」

「まさか自分でPIDを設定しろってか?まじか!えーとPを適当に決めてIを大きくとってそれからDには手を出すな、だったかな」

「うぅ、マニュアルのどこにもPIDの設定の仕方が書いてないぞ。」

「もしかして…、いや、まさか…、これって…、こっ、これがON/OFF制御しかできない温調だったのか!なっ、なんだってー!!」

さすがにオーバーですが今時ON/OFF制御オンリーの温調に出会うとは思いませんでしたので少しびっくり。ということで本日のお題は温度制御について。温度調節、というかプロセス制御について少し紹介しましょう。

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2016.11.28

「安全工学」の講義 第12回 機械の安全(3) 回転体は怖い シュレッダーの恐怖(片桐教授)

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 2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

 このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 シュレッダーは個人情報保護のための道具として、事務室などに備え付けられている身近な道具です。最近は手動のものもあり、ますます普及しています。

 その日、私は返却を通告したのにもかかわらず、学生が取りにこなかった3年分の実験レポートを処分するために、シュレッダーを動かしていました。「ほいっ、ほほいっ!」と次々レポートをシュレッダーにかけていました。そのとき急に首をつかまれ引っ張られるようなことになりました。ネクタイがシュレッダーに巻き込まれていました。これは怖い、恐ろしい。機械に引き込まれる巻き込まれる恐怖です。冷静な判断ができません。あるいは思考停止かもしれません。機械とキスする直前にやっと「停止ボタン」を押すことができました。九死に一生を得ました。

 この事故の教訓はいくつかあります。

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2016.11.25

「安全工学」の講義 第12回 機械の安全(2) 安全確保の3原則と映画「新幹線大爆破」(片桐教授)

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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 機械の安全では安全確保の3原則が知られています。それは:

  • 本質的安全の原則:危険源がなければ安全である
  • 停止の原則:機械は止まっていれば安全である
  • 隔離の原則:人間がそばに寄らなければ安全である

もっともなはなしです。

 しかし、機械は人間では力足らずな所を補うものですから、当然のこととして危険源になり得ます。そこで、重要なのが2番目の停止の原則です。動かない機械は危険源ではなくなるということですね。

 これを逆手に取ったのが、1975年の東映映画「新幹線大爆破」です。犯人役の高倉健をなぜか悪役に思えなかったのをよく憶えています。

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2016.11.24

雪の八王子キャンパス(江頭教授)

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 本日(11月24日)、関東地方は朝から雪が降っています。もちろん、初雪。我々の八王子キャンパスにも雪が。

 下の写真は片柳研究棟にある私の研究室から研究棟A・Bを望んだ風景、今日の朝8時頃に撮りました。さすがに雪の中では研究棟は見渡せません。学生食堂が入っている厚生棟とその向かいにある図書館棟がわずかに見渡せる程度。もっと近くにあるFOODS FUUには雪が積もっているのがよく分かります。

 さて、この写真と同じアングルで撮った写真がこちらの記事に。8月の大雨の日に撮ったの写真ですが、どんなに激しい雨でも雨は雨。さすがに雪とは違いますね。

 さて、今日の雪、11月の初雪ということであちらこちらで話題になっている様です。

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2016.11.23

「安全工学」の講義 第12回 機械の安全(1) 指差呼称 (片桐教授)

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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 安全工学を学ぶと、機械・システム分野の安全はもっとも進歩しており、体系的・系統的であると感じます。これは機械に関わる事故が多かったため、それに対して対策が必要であったことを示唆します。ながい歴史を持つ機械・システムの安全のための設計思想やそれの基づく安全対策は、学ぶことが多いものです。

 私が会社に入った時、最初の2ヶ月間は各地の事業所(工場)を回る研修を行いました。その際に学んだのが「指差呼称」です。自分の動作や安全の確認を行う時に、指差し(アクション)して、「◯◯よし!」(発声)をおこなうことです。

 銅を溶かした炉の操作を行うクレーンで炉の上へ行く前に「扉よし!」「ベルトよし!」「障害物なし!」など、次々とその対象物の方を向いて指差し、声を上げることにより、自分だけではなく、見学の同乗者も,どこに危険があるかを理解でき、意識します。これが事故を防ぐことにつながります。

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2016.11.22

地球上の光合成の最大値は?(江頭教授)

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 地球の生態系のエネルギー源はごく一部(熱水噴出孔の生態系など)を除いて太陽光のエネルギーによってまかなわれています。

 と、言うことで太陽光のエネルギーがすべて光合成に使われたとしたらどれだけの物質が作られるのか、が今回のお題です。

 以前、「地球の水の循環も太陽光線による水の蒸発散が原動力である」ということで、太陽光のエネルギーがすべて水の蒸発に使われたら、と仮定して水の蒸発速度の最大値を計算しました。今回はその光合成版ですね。

 さて、前提となる数値はまずは太陽定数。地球軌道に太陽からやってくる光のエネルギーで、その値は1367 W/m2

 昼も有れば夜もある、夏と冬、緯度によっても光の強さは変わりますが、その効果を考えると太陽定数の1/4が地表に降り注ぐ太陽光のエネルギーの平均値になります。これで341.75 W/m2です。(詳しくはこちらを参照してください。)

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2016.11.21

「安全工学」の講義 番外編 「安全のABC」(片桐教授)

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 10年ほど前に、企業の社内研修での講演を頼まれてある会社を訪れた時に、壁に標語が貼ってありました。

 「安全のABC」「A:あたりまえのことを、B:ぼやぼやせずに、C:ちゃんとやれ」。う〜ん、なるほどねえ。これは現場の人への管理職の方のメッセージなのでしょう。

 会社では管理と現場は明確に分かれています。管理職は非組合員で労組のほごはありません。また時間給ではなく、労働時間を自分で決められる裁量労働制になります。そのため,残業手当がつきません。

 本当かどうかを私は確認していないのですが、昔、海外のあるコンピューター会社の標語で、現場(労働者)のフロアーには「Work! Don’t Play.」と掲示されており、管理職のフロアーには「Play! Don’t Work.」と掲示されていたそうです。まあ、誇張はあるのでしょうが、職制の違いと意識の違いのあるべき姿を表しているのだと思います。

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2016.11.18

「安全工学」の講義 第11回 電気の安全(5) 通電火災(片桐教授)

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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 阪神大震災では、建物が崩れた後に火災が起こり、多くの方が亡くなりました。この火災の多くは「通電火災」ではないかと言われています。通電火災とは地震により倒れたストーブなどの加熱器具に、停電後に電気が復旧した時に加熱が始まりこれが着火源になる火災です。最近は、多くのマニュアルに地震後に避難する時は、配電盤のブレーカーを切るように書かれています。

 このような通電火災は、地震の時だけではありません。何らかの理由でいったん切れた加熱器具が再度通電した場合に起こりえます。理化学機器のなかにはコンピューター制御で加熱を制御します。使用後に電源を落としたつもりでもまだ動いていたりすると、危険です。

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2016.11.17

早くも登場、クリスマスツリー(江頭教授)

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 まずは写真をご覧ください。我々応用化学科の研究室が入っている片柳研究棟の手前に写っているのは今年のクリスマスツリーです。

 あれっ、いつの間に?と思って聞いてみると「先週ぐらいには組み立てていましたよ」とのこと。昨年のクリスマスツリーはもっとリアルな樹木の形をしていましたが、今年のツリーは三角錐のデザインでやや抽象的な感じですね。

 このツリーの場所、図書館と厚生棟の間、研究棟A・Bの前のスペースです。本学八王子キャンパスの中心とでも言える場所で、先の紅華祭ではメインステージも造られたところです。こないだメインステージを解体したと思ったら今度はクリスマスツリーの登場、となりました。

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2016.11.16

「安全工学」の講義 第11回 電気の安全(4) コードの色(片桐教授)

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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 以前、研究室の引っ越しの直後、ドラフトの電源を使用してマグネティックスターラーを使用すると、「壊れる」事故が多発しました。壊れるのはいつも整流回路のダイオードでした。こいつが融け落ちて断線していました。

 スターラーそのものは,電気パーツ屋でダイオードを買ってきて、つけ直せば修理できるのですが、あまりに頻繁なので何か原因があると思い、テスターでドラフト電源の電圧を計りました。電源ライン間の電圧は規格通り110 Vでした。しかし、驚いたことに、アースラインと電源の片方のラインの間の電圧が200 Vを示しました。

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2016.11.15

地球上の水の蒸発速度の最大値は?(江頭教授)

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 人間が利用する淡水のほとんどは河川や湖から取水したものですが、そのもとをたどれば雨や雪、つまり降水になります。そのもとは大気中の水蒸気、そしてその水蒸気は海からの蒸発と陸からの蒸発散(植物の体を通しての蒸発を蒸散と呼びます。蒸発と蒸散を合わせて蒸発散)で生じたものです。つまり私たちが利用している水は結局は水の蒸発散を経たものなのです。

 蒸発、蒸散によって水は文字通り蒸留されて純粋な水になります。さらに高い位置に降った雨や雪は位置エネルギーを蓄えているので自然に人の住んでいる場所に行き渡ります。(本当は水の行き渡るところに人が住んでいるので、因果関係が逆ですけどね。)また水の位置エネルギーの一部は水力発電によって直接エネルギーとして人々に利用されているのです。

 さて、ひとしきり蒸発、蒸散の大切さを述べたところ本日のお題です。このありがたい蒸発のおおもと、それはやはり太陽からの光のエネルギーです。では、その光のエネルギーでどの程度の蒸発が起こりうるのか、それを計算してみましょう。地球で起こる蒸発の最大値を求める、ということです。

 もちろん、乾燥した暖かい空気が水面に吹き付ける、といった現象によって瞬間的・局地的に急速な蒸発が起こることもあると考えられますが、ここでは地球全体の平均としての蒸発速度の最大値、つまり太陽光線のエネルギーがすべて水の蒸発に使われた場合、として考えていましょう。

 まず、地球軌道に太陽からやってくる光のエネルギーは1367 W/m2です。(これを太陽定数呼びます)。

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2016.11.14

「安全工学」の講義 第11回 電気の安全(3) 漏電ブレーカーの盲点(片桐教授)

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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 誤って短絡(ショート)を起こすと、一瞬スパークしますが、すぐに配電盤の漏電ブレーカーが作用し、それ以上の通電を阻止します。これは配電盤の漏電ブレーカーの働きです。

 しかし、スライダックをかませて、その2次側で短絡が発生すると、ブレーカーは必ずしも落ちません。これは要注意です。

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 スライダックはヒーターなどの加熱に際して、電圧を調整する装置です。1次側に100Vを流し、上のつまみで電圧を指定すると、2次側にその電圧がかかります。装置は簡単な構造ですが、それ自身に安全装置はついていません。

 特に二次側の端子に銅の撚り線を固定するとき、はみ出したひげのような細線が逆側の端子に接触する事故が起こります。だいたいの場合ぱちぱちとショートにともなう音で気がつきますが、たまにスライダックに高電流が流れ、煙を上げることがあります。

 このような事故を防ぐために、銅線を撚るだけではなくそれをハンダで固める、あるいは圧着端子で銅線をアルミの端子に固定して使用してください。

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2016.11.11

「安全工学」の講義 第11回 電気の安全(2) 電源 西日本と東日本 東日本大震災における計画停電(片桐教授)

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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 2011年の東日本大震災のとき、私は岡山におりました。テレビで計画停電の話が出た時に、「なぜ西日本の電気を東日本に融通できないのか」、「なぜ西日本が60Hzなのに東日本は50Hzなのか」を疑問に思いました。

 周波数が違う電源を繋ぐことはできません。そのため、西日本の電気を東日本に融通することができませんでした。正確に言えば、日本の主幹送電線(50万V)は何か所かの変電所のインバーターでつながれています。しかし、その能力は十分ではなかったということです。

 この周波数の齟齬は明治時代に東日本では発電機をドイツから輸入し、西日本ではアメリカから輸入したことに起因しているそうです。

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2016.11.10

1930年代のエコカー(江頭教授)

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 今回のお題は1930年代のエコカーの話です。ええ、2030年代でなく1930年代です!

 ガソリンエンジンによる自動車が主流になる前、電気自動車が造られていたことは知られていますが、今回取り上げたいのは木炭で動く自動車、木炭自動車の話。

 木炭自動車は戦時中の物資不足の時代、ガソリンが不足した日本で木炭をつかって走れるように改良された自動車のことです。木炭を不完全燃焼させて一酸化炭素と水素を含むガス、合成ガスを発生させる炉を組み込んだ自動車で、ガソリンの蒸気の代わりに合成ガスをエンジンに供給することで木炭を使って走ることができました。

 木炭自動車の起源は1920年代に遡りますが、本格的に普及したのは1930年代の後半からだったそうです。当時、既存の自動車に取り付けるための反応用の釜とガス供給装置のキットが大小さまざまな企業から販売されていた様です。元々炭素自動車として設計された自動車ではなくても、木炭自動車に改造することができた、ガソリンエンジンをそのままの形で転用できたのです。

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2016.11.09

「安全工学」の講義 第11回 電気の安全(1) 感電の経験(片桐教授)

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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 以下は片桐のひとりごと

「ほんとうは工学部電気電子へ進みたかった。」

「がんばって勉強して、小学校5年生で電話級アマチュア無線技師の免許を取得した。ドヤッ!」

「でも小中高と同じクラスに電気の「できる」奴がいた。(´・ω・`)」 

「奴には勝てない。(´・ω・`)」

「きっと世間にはあんな奴がごろごろしてるんだろうなあ。 (´△`)」   

 …気がついたら今の私。 ( ̄□ ̄;)!!

 そして、そのときの「できる」奴=「天野先生」です(ブログ2016.04.14参照)。

 片桐は上記のように小学校5年生の時に電話級アマチュア無線技師の資格を取りました。電気小僧でした。中学の頃は、「初歩のラジオ」という雑誌などを見て、真空管ラジオなどを自作していました。

 真空管ラジオは100Vの電源に繋いで動作させます。そのラジオは箱の中に閉じ込めた形ではなく、むき出しの端子が露出したような形のものでした。暗い部屋で電源を入れると、トランスが「ぶーん」とうなり、真空管のヒーターがオレンジ色に輝きはじめ、やがてラジオ番組をスピーカーから流します。そんな雰囲気が大好きでした。

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2016.11.08

海は広くて大きいが...(江頭教授)

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 海の水にはいろいろな成分が含まれていますが、その中で圧倒的に多いのはもちろんCl-(550mmol/L)とNa+(470mmol/L)です。海水から水を蒸発させて食塩をつくる製塩業では、一緒に「にがり」がとれますが、これは海水に含まれるMg2+(53mmol/L)が主成分で、その濃度はNa+の10%程度です。また、イオウを含む硫酸イオンSO42-(28mmol/L)もCl-の5%程度が含まれています。

 また、Na+と性質の近いK+(10mmol/L)や、海中のプランクトンなどの骨格を形成するCa2+(10mmol/L)もNa+の2%程度含まれています。大気中のCO2が海水に溶けた場合、ほとんどはHCO3-イオン(2mmol/L)となるのですが、その割合はぐっと少なくてCl-の0.5%程度です。

 これら海水の主な成分は陸地の近くを除いて地球のすべての海でほぼ一定です。当たり前の様に思っていますが、考えてみればすごい話です。地球の規模の水が完全に混ざるにはどれほどの長い時間が必要だったのでしょうか。

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2016.11.07

「安全工学」の講義 第10回 化学の安全 有害性(9) 虫歯予防の「フッ素」はそんなに有害か?(片桐教授)

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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な経験と意見を述べていきます。

 私はフッ素化学を専門としています。そのため、「フッ素」という単語には敏感に反応します。

 子供の虫歯予防のために「フッ素塗布」がされます。「フッ素」を歯に塗ると表面が硬くなり,虫歯になりにくくなるというものです。しかし、わたしはこの「フッ素塗布」ということばが気に入りません。あれは「フッ化物塗布」と呼ぶべきです。「フッ素」という元素や単体の名称ではなく正確に「フッ化物塩」と表現しましょう。

 八王子の歯科医でフッ化物塩とフッ化水素酸を取り違えたことによる死亡事故が報告されています。歯に塗るフッ化物塩を薬品屋に注文する際に「フッ素」と院内の通称を用いたために、入歯の加工に使うフッ化水素酸と勘違いされ、それを塗布された女児が亡くなるという事故でした。化学物質の名称を「ローカルネーム」で呼ぶことは厳に慎むべきです。これはそれぞれの化学物質の危険性・有害性を超えて化学物質を取り扱う者の矜持であると思います。

 しかし、「フッ化物塩塗布」…という名称は一般的ではないので、この文章でもやむを得ず意に反して「フッ素塗布」と呼びます。

 歯科医や学校で行う子供へのフッ素塗布そのものの危険性(これも有害性と呼ぶべきです)についてはどうでしょうか。おそらくWeb検索をすれば、多大な危険性の主張を見つけることになります。

 このようなWEB上で、フッ素塗布に反対する人は、反応性のまったく異なる「フッ化物」と「単体のフッ素」を混同し、あたかもフッ化物も高い反応性を持つ、危険なものかのように記載していることがあります。引っ掛けられないようにしてください。人体に必須元素である水素、窒素,炭素でも組み合わせでは猛毒の青酸になります。フッ化物そのものは「強い有害性」を有するものではありません。

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2016.11.04

「安全工学」の講義 第10回 化学の安全 有害性(8) ダイオキシンの本当の恐ろしさ(片桐教授)

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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な経験と意見を述べていきます。

 ダイオキシンという有害物の名前は、一度は聞かれたことがあると思います。特に2,3,7,8-テトラクロロダイオキシン(TCDF)は最強の人工毒と言われています。

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 大量のダイオキシンが環境中に放出された事故例として、1976年の「セベソの悲劇」が知られています。イタリアのセベソという町の工場の火災により、大量のダイオキシンが環境中にばらまかれ、風に乗って町に降り注ぎました。犬がばたばたと倒れ死に、人々は恐怖しました。しかし、本当の悲劇はその後でした。

 当時,その町にいた多くの妊産婦は胎児への障害の恐れから堕胎術を受けました。多くの命の種が失われました。しかし、その胎児の検査では、明らかな異常は見つからなかったそうです。また、その後産まれてきた子供の障害率に有意な上昇は見られなかったそうです。本当に恐ろしいのは、ダイオキシンに恐怖する人の心なのかもしれません。

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2016.11.03

降雨量はどのくらい?ー世界編ー(江頭教授)

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 降雨量の単位は長さ、通常は mm を使います。降った雨を地面に均等に溜めたら何ミリになるか、という数値です、というような話を以前、このページに書きました。

 アメダスのこと、八王子の降水量、年平均は 1602.3 mm/y だ、などという情報も紹介しました。

 さて、今回はお題は世界全体の地上に降る雨はどのくらいなのか、ということです。まず手始めに、もし世界の陸地に八王子と同じ1602.3 mm/y の雨が降ったとすればどのくらいの量になるのか考えてみます。

 陸地の全面積は1億5千万平方キロメートルなので、この面積と降水量をかけ算してみましょう。

 1602.3 mm/y × 150,000,000 km2

=1.602 m/y × 1.5×1014 m2

= 3.524×1014 m3/y

水の比重は1ですから 2.4×1014 t/y、年間240兆トンという結果になりました。

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2016.11.02

「安全工学」の講義 第10回 化学の安全 有害性(7) 化学物質のリスクアセスメント (片桐教授)

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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な経験と意見を述べていきます。

 2016年6月より、改正労働安全衛生法により、おおよそ640の化学物質について、その販売者のMSDS (化学物質安全データーシート)に加え、使用者や保管者にも「リスクアセスメント」が義務づけられました。

 もともと、この法律は大量の化学物質を日常業務として扱う製造業の労働者の健康をよりよく守ることを目的としています。そして、そのきっかけになったのは、有機塩素系溶媒を拭き取り剤として使用していた印刷業の方々が胆管ガンになったという事故からです。

 しかし、製造現場は少品種大量の化学物質を取り扱うので、その帳簿的な管理は比較的容易ですが、研究・教育の現場,特に大学では多品種少量なので、その管理は容易ではありません。どの大学でも,どのように実施するのかについて、いろいろと考えているのですが、まだこれはという決定版はまだありません。

 リスクアセスメントでは

 (1)「どのような薬品をどのように使うのか」というシナリオの設定

 (2)「どのくらい有害な薬品なのか」というMSDSの入手と有害性の調査

 (3)「作業環境でどのくらいの量をばく露するのか」を測定する作業環境測定

 (4)「上記の結果を元にしたリスクレベルの判定」

の4段階を行うことが求められます。ところが、(3)の作業は作業環境測定の専門家による測定、(4)の判定は産業医が行うことになりますから、その人件費や設備だけでとんでもないコストがかかります。しかも、このようなリスクアセスメントは定期的に繰返し行わなければなりません。もし、大学のような研究機関で完璧に行おうとすると、とんでもない人的・金銭的負担があります。だからといって、最初からあきらめて放棄してしまうのは大問題です。まずは、(1)と(2)を完璧にしましょう。その上で、必要なら(3)(4)へとすすめて行くのが現実的です。

片桐はこのリスクアセスメント対象物質を現場の研究者に見つけやすくするための、エクセルベースの検索アイテム、簡単なリスクアセスメント準備様式、作業の案内パンフを作成しています。

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エクセルファイル(見本)

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2016.11.01

化学の魅力を広める活動(化学の実験講習会の講師)(西尾教授)

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東京都理科教育研究会の化学の実験講師に招待され,10月15日に,都立戸山高等学校で「アルミニウム板への虹色のめっき」の実験講習会を実施してきました.この実験は,私が所属していた首都大学東京の益田研究室が立ち上げたもので,私もオープンキャンパスや出張実験(http://blog.ac.eng.teu.ac.jp/blog/2016/07/post-49dd.html)で何度も実施してきていますが,高校の先生を対象にするのは初めての事でした.これまでは実験効率を優先し,実験手順の大半を事前に済ませていましたが,今回は,アルミニウム板の前処理(陽極酸化)から虹色めっきまでの,ほぼ全ての手順について実施しました.

今回の実験講習で私が一番印象に残ったのは,全ての先生方が,嬉々として(?) 実験を楽しんでいる姿でした.

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