2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。
このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な経験と意見を述べていきます。
2016年6月より、改正労働安全衛生法により、おおよそ640の化学物質について、その販売者のMSDS (化学物質安全データーシート)に加え、使用者や保管者にも「リスクアセスメント」が義務づけられました。
もともと、この法律は大量の化学物質を日常業務として扱う製造業の労働者の健康をよりよく守ることを目的としています。そして、そのきっかけになったのは、有機塩素系溶媒を拭き取り剤として使用していた印刷業の方々が胆管ガンになったという事故からです。
しかし、製造現場は少品種大量の化学物質を取り扱うので、その帳簿的な管理は比較的容易ですが、研究・教育の現場,特に大学では多品種少量なので、その管理は容易ではありません。どの大学でも,どのように実施するのかについて、いろいろと考えているのですが、まだこれはという決定版はまだありません。
リスクアセスメントでは
(1)「どのような薬品をどのように使うのか」というシナリオの設定
(2)「どのくらい有害な薬品なのか」というMSDSの入手と有害性の調査
(3)「作業環境でどのくらいの量をばく露するのか」を測定する作業環境測定
(4)「上記の結果を元にしたリスクレベルの判定」
の4段階を行うことが求められます。ところが、(3)の作業は作業環境測定の専門家による測定、(4)の判定は産業医が行うことになりますから、その人件費や設備だけでとんでもないコストがかかります。しかも、このようなリスクアセスメントは定期的に繰返し行わなければなりません。もし、大学のような研究機関で完璧に行おうとすると、とんでもない人的・金銭的負担があります。だからといって、最初からあきらめて放棄してしまうのは大問題です。まずは、(1)と(2)を完璧にしましょう。その上で、必要なら(3)(4)へとすすめて行くのが現実的です。
片桐はこのリスクアセスメント対象物質を現場の研究者に見つけやすくするための、エクセルベースの検索アイテム、簡単なリスクアセスメント準備様式、作業の案内パンフを作成しています。
エクセルファイル(見本)