地球上の光合成の最大値は?(江頭教授)
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地球の生態系のエネルギー源はごく一部(熱水噴出孔の生態系など)を除いて太陽光のエネルギーによってまかなわれています。
と、言うことで太陽光のエネルギーがすべて光合成に使われたとしたらどれだけの物質が作られるのか、が今回のお題です。
以前、「地球の水の循環も太陽光線による水の蒸発散が原動力である」ということで、太陽光のエネルギーがすべて水の蒸発に使われたら、と仮定して水の蒸発速度の最大値を計算しました。今回はその光合成版ですね。
さて、前提となる数値はまずは太陽定数。地球軌道に太陽からやってくる光のエネルギーで、その値は1367 W/m2。
昼も有れば夜もある、夏と冬、緯度によっても光の強さは変わりますが、その効果を考えると太陽定数の1/4が地表に降り注ぐ太陽光のエネルギーの平均値になります。これで341.75 W/m2です。(詳しくはこちらを参照してください。)
今度は光合成にはどのくらいのエネルギーが必要なのか、が問題です。いろいろ考えられますが、ここは一番シンプルに水と二酸化炭素からグルコースが作られるときのギプス自由エネルギーの変化を必要なエネルギーとしましょう。
6CO2+6H2O → C6H12O6 + 6O2
でΔG゜は 2880 kJ/mol となります。
341.75 W/m2 をこの値で割ると 1.186×10-4mol/(m2s)、炭素基準なら6倍して 7.119×10-4mol/(m2s) です。
うーん、なんか直感的に分からないですね。では、炭素の重量基準で一年あたりの値にしてみましょう。
8.543×10-3gC/(m2s) → 269.6kgC/(m2y)
となりました。 地上のバイオマスの乾燥物の約半分が炭素だと考えると乾燥したバイオマスの重量基準で約 540kg-dry/(m2y) です。湿潤状態での重量がさらに2倍、比重が1とすると約1m3/(m2y)、光合成の産物が毎年1m積もる計算になります。
さすがにこれはオーバーですね。地球でもっとも物質生産の盛んな生態系は熱帯雨林で、ここにおける純一次生産は1~3.5kg-dry/(m2y) となるそうです。540kg-dry/(m2y)と比べると100分の1以下。 純一次生産は光合成の速度から呼吸の速度が引かれているので全体の光合成の速度ならもう少しは早いでしょうか。
水の蒸発速度の最大値は実際の値の10倍程度でしたが、この数字はかなり小さいですね。それも熱帯雨林の値でも、というのですから他の生態系においてはもっと差が際立つでしょう。水の蒸発に使われる割合と比べて、光合成に利用される太陽光のエネルギーはかなり少ない、というのか今回の結論です。(水が蒸発する仕組みと光合成のメカニズムを思い浮かべたら、まあそうだろうなぁ、となりますが...。)
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