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「安全工学」の講義 第10回 化学の安全 有害性(8) ダイオキシンの本当の恐ろしさ(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な経験と意見を述べていきます。

 ダイオキシンという有害物の名前は、一度は聞かれたことがあると思います。特に2,3,7,8-テトラクロロダイオキシン(TCDF)は最強の人工毒と言われています。

Fig_8

 大量のダイオキシンが環境中に放出された事故例として、1976年の「セベソの悲劇」が知られています。イタリアのセベソという町の工場の火災により、大量のダイオキシンが環境中にばらまかれ、風に乗って町に降り注ぎました。犬がばたばたと倒れ死に、人々は恐怖しました。しかし、本当の悲劇はその後でした。

 当時,その町にいた多くの妊産婦は胎児への障害の恐れから堕胎術を受けました。多くの命の種が失われました。しかし、その胎児の検査では、明らかな異常は見つからなかったそうです。また、その後産まれてきた子供の障害率に有意な上昇は見られなかったそうです。本当に恐ろしいのは、ダイオキシンに恐怖する人の心なのかもしれません。

 2004年にウクライナ大統領選の野党側の候補者ユシチェンコ氏が、ダイオキシンで暗殺を謀られた,という事件がありました。塩素痤瘡で青黒く変色した氏の顔写真は、ニュースで世界中に広がり、ダイオキシンの恐ろしさを広く宣伝してしまいました。

 日本では「所沢ダイオキシン騒動」という出来事がありました。ゴミ焼却場のそばの畑の野菜がダイオキシンに汚染されているというテレビ報道があり,その風評被害に対して裁判が起こされ、事実ではないと認定されました。しかし、この騒動をきっかけにして、ゴミ等の小規模焼却処分設備はなくなりました。

 

 これほどに「恐ろしい」ダイオキシンですが、報告されているその死亡事故例はわずか1件4名のみです。また、セベソの悲劇でも、イヌはばたばたと死んだのに、死者は一人もありませんでした。ダイオキシンの毒性は生物種により大きく異なります。おそらくですが、ヒトはイヌよりもダイオキシンに対して強い生き物なのでしょう。

 ダイオキシンの毒性,有害性は疑うことのできないものです。しかし、それ以上に怖いのは、それを必要以上に恐がり冷静さを失ってしまうヒトの心ではないかと思います。確かに、ダイオキシンはスロビックの11因子の多くを満たします。そのため、必要以上に人を怖がらせているのではないかと思います。

片桐 利真

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