« 「安全工学」の講義 第13回 情報の安全(3) コンテント犯罪(加害者にならないために)(片桐教授) | トップページ | 「安全工学」の講義 第13回 情報の安全(4) ネチケットはご存知ですか?(片桐教授) »

地球温暖化防止法?(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 地球温暖化防止法? あれっ、何か違いますよね。

 そうです、正しくは「地球温暖化対策推進法」ですね。今日のお題は日本の温暖化防止のための政策についてです。

 まず、「地球温暖化対策推進法」は日本の温暖化対策の基礎となる法律です。環境省のホームページにはこうあります。

平成9年、京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)での京都議定書の採択を受け、我が国の地球温暖化対策の第一歩として、国、地方公共団体、事業者、国民が一体となって地球温暖化対策に取り組むための枠組みを定めました。

 さて、ここで謳われている国、地方公共団体、事業者、国民の責務ですが、こと温暖化ガスの排出抑制については、大ざっぱに言えば「各自自主的に努力しましょう。」ということに尽きています。国は調査研究や温室効果ガスの排出量のモニタリングに加え、自らが出す温室効果ガスの排出量抑制、さらに温暖化対策の基本計画をつくることで国全体での排出抑制につとめます。

 地方自治体も同様に自らが出す温室効果ガスの排出量抑制と地域の温暖化対策基本計画をつくることになります。我々の東京工科大学工学部の地元、八王子市にも温暖化対策推進計画があり「平成36年度に人口一人あたり 30%削減 総排出量 24%削減」という目標を掲げています。ただし、その実現の方法は省エネの推進、再生可能エネルギーの導入の推進、普及啓発活動などです。温室効果ガスを削減した(あるいは削減しようとする)企業や市民に対するサポートであり、排出した人へのペナルティではありません。

Photo

 たとえばシアン化合物を川に放出している業者がいたとします。排出量削減のための支援が得られる、というよりは改善命令がでて操業停止になるでしょう。これは「水質汚濁防止法」による規制の例ですが、「大気汚染防止法」でも同様の対応がとられます。

 つまり、「○○防止法」には排出した人への罰則が決められているのに対して、「地球温暖化対策推進法」には罰則がありません。あくまでも「対策推進法」であって、「防止法」ではない、ということでしょうか。

 温室効果ガスの大部分が二酸化炭素であり、エネルギーを使う限り発生する、というかそれ以前に動物なら皆が二酸化炭素を発生させています。これにいちいち罰則を決めていてはきりがありません。とは言うものの「○○防止法」による規制は公害の封じ込めに役だってくれました。本気で温暖化対策を考えるのであれば「地球温暖化防止法」について議論しても良いのかも知れません。

江頭 靖幸

« 「安全工学」の講義 第13回 情報の安全(3) コンテント犯罪(加害者にならないために)(片桐教授) | トップページ | 「安全工学」の講義 第13回 情報の安全(4) ネチケットはご存知ですか?(片桐教授) »

解説」カテゴリの記事