Frozenな試薬(江頭教授)
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水が凍る温度は0℃、これは良く知られていることです。
身の回りの液体のほとんどは水を主成分としていますから0℃近辺を温度が上下すると凍結と融解が繰り返されることになります。普通の製品は水だけが成分では無く、水以外の成分と水との巧みな混合の状態にこそ、その価値があります。ですから、液体として提供するものは0℃以上を、0℃を超えると溶けてしまうものは0℃以下を維持しながら物流に乗せ、融解や凍結を避けながら人々の生活の場に提供されています。
要するに、溶けたアイスクリームや凍ったサイダーは勘弁してね、ということです。家庭やオフィスを見回しても0℃以下なのは冷蔵庫の製氷室。それ以外は0℃以上に保たれていますから、室内で液体が凍る、ということはよほどのことがないとお目にかからない状況ではないでしょうか。
しかし、化学の実験室となるとそうはいきません。薬品庫にはいろいろな融点の物質が勢揃い。15℃~25℃が融点の試薬は夏に液体として購入し、ありのままにしておくと冬には瓶の中で凍り付いてしまいます。
酢酸の融点は16.7℃でちょうど「夏は液体、冬は固体」という物質です。純度の高い酢酸は冬場には凍結するので「氷酢酸」と呼ばれています。
さて、試薬瓶のなかで凍り付いた、本来は液体の試薬、どうしたものでしょうか。
(イメージは本文中の試薬とは無関係です。)
固体になった試薬をそのまま使うのはほぼ不可能でしょう。液体の試薬は細口の薬品瓶に入っていることが多く、なかで固まった試薬は「ボトルの中の船」状態になってしまい、切り崩して薬さじで取り出すのも困難になってしまいます。
と、いうことで加熱する以外の解はなさそうです。具体的には、部屋の暖房温度を30℃にしてみましょうか。確かにそれもありですが、部屋全体が暖まって試薬瓶も30℃に加熱されるまでにはたいそう時間がかかりそうです。
直接試薬瓶をあぶるのもいかがなものか。
で、結局のところは湯煎する事になりそうです。30℃前後に加熱するなら手軽な方法でしょう。液体に戻った原料が再度固体になるまえにはかり取って実験スタート、という手順です。あっ、それから試薬瓶のラベルがはがれないように注意が必要ですね。
そういえば、先日買った薬品は常温固体なのですが、何故か試薬瓶(広口。プラスチック製)のなかで完全に一体化していました。まるで液体として得られた製品を試薬瓶にいれて凍らせたような状態です。せめて粉末かフレーク状にしてくれないと薬さじで取り出せません。この物質、凝固点は50℃程度のはずなので、流通過程で50℃を超える環境に置かれた、とは考えにくいのですが…。
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