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「安全工学」の講義 第14回 環境への配慮(5) 処理のできない厄介な有害廃棄物 石綿=アスベスト(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。

このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。

 処理のできない厄介な有害廃棄物の代表として、水銀、アスベスト、PCBを挙げられます。

 水銀については以前のブログ(「安全工学」の講義 第10回 化学の安全 有害性(5))でお話しました。

 またPCBについても、以前のブログ(2016.5.11)でフッ素君に代弁してもらいましたので、今回は省きます。

 アスベストの問題は2005年にクローズアップされました。1987年にアスベストを取り扱う工場の近隣に住む主婦が中皮腫という肺がんに罹りました。その後、アスベストが中皮腫を引き起こすことが明らかになり、大きな騒動になりました。

Fig1

 アスベストはその組成から白綿、青綿、茶綿に分けられます。青綿、茶綿には鉄が含まれていますが、白綿にはそのかわりにマグネシウムが含まれています。白綿は、昔、実験器具の石綿付き金網などに使われていました。また青綿、茶綿は建築材(断熱材)として用いられていました。ここで、興味深いのは、中皮腫を起こすのは青綿、茶綿で、白綿による中皮腫の発生例はほとんど報告されていません。その中皮腫を起こす確率は青綿、茶綿の百分の一以下と見積もられています。小学生の頃に理科室で実験器具の石綿をむしって遊んでいた人は、とりあえず安心してください。でも、石綿は吸着性が高く、白綿でも肺へ蓄積していればそれ自身はガンの原因にならなくても、タバコの有害成分を蓄積させて、肺がんを誘発する恐れを除去できません。これはアスベスト代替物にも言えることです。

 残念ながら、白綿も、同じ石綿だということで、青綿、茶綿と一緒に使用禁止になりました。石綿のように耐熱性にすぐれた素材は希です。せめて白綿だけでも残ってくれていたら、と思うこともあります。

(参考図書)

Fig2

片桐 利真

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