「安全工学」の講義 第15回 災害から身を守る(3) 危惧される大規模災害3 パンデミック(片桐教授)
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2年生の選択必修の講義「安全工学」の担当の片桐です。
このブログのシリーズでは、安全工学という講義の中でお話しした内容について、片桐の個人的な意見を述べていきます。
パンデミックはあまり我々には身近に感じない大規模災害です。映画やマンガの世界では、しばしばお目にかかります。私が最初に見たその手の映画はアメリカ映画の「アンドロメダ病原体」だったと思います。まだ中学生になった頃でした。この映画ではパンデミックは未然に防がれました。その後、小松左京のSF小説「復活の日」の映画版が発表されました。こちらでは、南極越冬隊以外の人類は絶滅してしまい、そこから人類が復活していきました。アメリカ映画の「アウトブレイク」はエボラ出血熱をモデルにしたもので、この映画でも型破りの行動をとるヒーロー(ダスティン・ホフマン)がでてきて、感染の拡大を食い止めていました。その後、日本映画の「感染列島」では、鳥インフルエンザがはびこり、パニックになった日本が描かれていました。その他にもパンデミックを取り扱う映画は多数あります。
これらの映画の傾向を見ると、日本映画では病原菌が蔓延し、それを抑え込むための医療機関のチムワークの悪戦苦闘や勝ち目のない闘いを描くストーリーが多く、アメリカ映画では一人のヒーローの暴走に近い活躍でパンデミックが未然に防がれるストーリーが多いようです。これは国民性でしょうか。
<コロナウイルス>
日本人はパンデミックをあまり経験していません。それ以前もSARSのような感染症が日本にたびたび上陸しかけましたが、水際で食い止められ、国内での大規模感染はあまり経験していません。2009年に発生した新型インフルエンザ騒動はかなり危機感を持たれました。これまでに人類が経験したことがなかったH1N1型のインフルエンザがメキシコからはやりはじめ、多くの感染者と高い死亡率で「スペイン風邪の再来」とまで言われました。実際には医療の進歩のおかげで死亡率は通常のインフルエンザと同等、あるいはそれ以下でしたが、それが日本にも上陸した時、断片的な情報のなか、私は「復活の日」を思い出していました。
「今まで大丈夫だったから、これからも大丈夫だろう」、という恒常性バイアスに支配された考え方は持たない方が良いでしょう。今世紀に入ってからも、西アフリカでのエボラ出血熱などのパンデミックが発生しています。また、H5N1の鳥インフルエンザは依然として脅威です。中東からはSARSの親戚のMERSがはやりかけました。
このような感染症で一番恐ろしいのは、医療体制の崩壊と言われています。医療を担うお医者さんや看護師さんが病に倒れては、治療できなくなります。ですから、パンデミック時には、限られた予防接種ワクチンを医療関係者へ優先的に接種させるそうです。機会の平等よりも社会体制の維持を優先するわけですね。これはある意味、やむを得ないことと思います。
公衆衛生と医療倫理の両立には、まだ課題が残されているようです。
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