« 応用化学科スポーツ大会を開催しました。(江頭教授) | トップページ | 「平等に貧しくなろう」って言うけど、「貧しい」ってどういうこと?(江頭教授) »

「安全工学」の講義 番外編 インフルエンザ-1(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

 2年生の講義「安全工学」担当の片桐です。番外編です。以下は片桐の個人的な意見です。

 先のブログでパンデミックについて述べました(2017.1.19)。今年はインフルエンザの当たり年のようです。インフルエンザの広がりなどは、国立感染症研究所(NIID)のWeb Pageに詳しい統計データが記載されています。http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/a/flu.html

Photo

全国ほとんどの都道府県で「警報」レベルに達しています。

 去年はやったB型ではなく、今年はA型(H3)がはやっています。年度で見るとA型、B型は交互にはやっています。これは昨年はやったタイプのウイルスに対する免獲得疫の効果でしょうか。

http://www0.nih.go.jp/niid/idsc/iasr/Byogentai/Pdf/data2j.pdf

 以下の話しにはわかりやすさのために、少しだけ嘘が混ざっています。

 インフルエンザは普通の風邪とは異なる「ウイルス感染症」です。インフルエンザウイルスはのどの粘膜細胞の特定のレセプターを認識し、そこでその細胞に感染して増えようとします。その感染した細胞の内では人間の体を形作るタンパクとは違うインフルエンザウイルスの構成タンパクが作られ、ウイルスは増えていきます。しかし、人間の体の免疫系(細胞性免疫)は、このタンパクの断片を見つけ出し、活性酸素を使ってその感染細胞ごとウイルスを殲滅します。インフルエンザにかかると熱が出るのは、この免疫系を活性化させるためです。また、のどが荒れ痛むのは、その感染細胞を免疫細胞=白血球が活性酸素で、周りの細胞を巻き添えにしながら、攻撃するからです。インフルエンザにかかった時の諸症状は、主にインフルエンザを撃退するために人体が引き起こすものです。やむを得ない犠牲です。だから、インフルエンザにかかった時は、風邪の諸症状をむやみに「抑える」ことは、インフルエンザウイルスを助けることにつながる恐れがあります。

 最近は「タミフル」や「リレンザ」のような感染細胞内で増えてしまったインフルエンザのウイルスを外に出さないようにブロックして、ウイルスの増殖や蔓延を防ぐ薬が開発されています。これらの薬は、感染後2日以内に服用・吸入することにより、体内のウイルスの増殖を劇的に抑え、症状の悪化を抑えることができます。

 新型インフルエンザ、特に鳥インフルエンザ(H5N1)が恐ろしいと言われているのは、新型だから、だれも抗体を持っていないからだけではありません。それを言えば、2009年にはやった豚インフルエンザも恐ろしいことになります。それ以上に恐ろしいのは、鳥インフルエンザの取り付く細胞はのどの粘膜細胞に限らないことです。鳥インフルエンザにかかった鶏はトサカも足もふくれあがり、全身の細胞がやられて死に至ります。インフルエンザという名前を持っていても、その症状はエボラ出血熱のような全身症状です。

 まだ鳥インフルエンザはヒトーヒト感染の能力を持っていないので、しばらくはパンデミック(爆発的感染)を起こさないでしょう。でも、その時に慌てないように防止対策や局限対策、自己防衛を考えてみてはいかがでしょうか。

片桐 利真

« 応用化学科スポーツ大会を開催しました。(江頭教授) | トップページ | 「平等に貧しくなろう」って言うけど、「貧しい」ってどういうこと?(江頭教授) »

授業・学生生活」カテゴリの記事