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2017年2月

2017.02.28

危険物取扱者の資格を取ろう-1 イントロ-1就職に役立つ資格(片桐教授)

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 このシリーズはこの夏の受験により危険物取扱者の資格を目指す学生さんを対象にしたレクチャーをします。

 危険物というと、毒性のある物質をイメージする方もいますが、ここでは「燃焼」「爆発」など消防法で扱う物質を指します。毒性を持つ物質は「有害物」と呼ばれます (2016.9.30ブログ)。

 さて、そのような危険物を取り扱う仕事には「危険物取扱者」という資格を必要とします。例えば、ガソリンスタンドのように危険物を取り扱う職場は危険物取扱者が必要です。危険物の保管庫を持つ化学工場では、その保守点検責任者として資格者を指名します。危険物を作るプラントもこの資格を持つ者が必要です。タンクローリーを動かす時に、資格者の運転や同乗が必要です。つまり、「危険物取扱者」は危険物の関係する仕事の現場に必要な資格です。その資格を持つ専門家がいなければ、その業務をしてはいけない、というものです。化学物質の多くは危険物です。また原料や製品として危険物を扱わなくても、燃料として扱わない職場はまれです。だから、社会(製造業)における資格者の需要や価値は思ったより高いものです。実際、この資格を持っていると「資格手当」を出してくれることもあります。ガソリンスタンドの学生アルバイトなら、この資格所持者の時給は違うこともあります(資格者が足りているかどうかの状況によります)。

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2017.02.27

工科大学の春休み(江頭教授)

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 大学の授業は15回、そして期末テストを含めると16週間です。工科大学、2016年度後期の授業は1月26日まで。その後1週間で期末テストを行い2月2日まで。学生諸君からみればこれで後期は終了です。

 我々教員にはもう少し仕事があります。そう、試験の採点と成績登録です。今はそれも終わって授業は完全に終了、となりました。スクールバスは臨時の時間表での運行に。片柳研究棟3階のリフレッシュスペースでのお弁当の販売もお休みとなりました。

 さて、学生諸君は実家に帰ったり、アルバイトをするなり、思い思いに過ごしていると思います。

 もちろん、私たち教員も無為に過ごしている訳ではありません。

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2017.02.24

水の蒸発に使われる太陽エネルギーはどれくらい(江頭教授)

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 太陽から地球に到達する光のエネルギーは342W/m2という記事を以前書きました。そして、その約3割は反射されるので地球に吸収されるエネルギーの密度は約240W/m2という話をこちらに。

 さて、今回のお題はこの太陽エネルギーが何に使われるかです。最終的にはすべて地球を暖めることになるのですが、その前に一番大きな割合を占めていそうなのが「水の蒸発」。以前の記事で太陽エネルギーの全てが水の蒸発に使われると仮定して水の蒸発速度の最大値を求めたのですが 4778mm/y という結果を得ていますが、その祭「太陽エネルギーの側から見ても地球の水を蒸発させるという働きは結構な割合を占めているということでしょう」と書いたのですが、以下それを検証してみよう、具体的にどのくらいなのかみてみよう、ということです。

 以前にも紹介した教科書

 坂田昌弘・編著「環境化学 (エキスパート応用化学テキストシリーズ)」(講談社サイエンティフィック 2015)

には水の蒸発速度として以下の様なデータが紹介されていました。

 海上の総蒸発量 436.5×103 km3/y

 陸上の蒸発散量  65.5×103 km3/y

(20ページ、図2.1より)

 地球表面に占める海と陸の面積比は約7:3であることを考えると、やはり海からの水の蒸発が、面積当たりでも大きい、ということがわかります。陸地での値が「蒸発」量ではなく、「蒸発散」量になっている点は以前説明したように、陸地での水の気化に植物の寄与(蒸散)が大きく働いているからですが、それでも海での蒸発の方が盛んだ、という事ですね。

 さて、このデータから蒸発に必要なエネルギーを計算してみましょう。

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2017.02.23

フェイク・ニュース(片桐教授)

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 例年、いろいろな催しで「今年のことば」が選ばれています。2016年もいろいろなことばが選ばれました。

 流行語大賞では「神ってる」でした。野球監督さんの言葉でしたかねえ。選手の活躍を表現するための「神懸かっている」の短縮型でしょうか。私はあまり注目していないことばでした。日本は平和だなあ、と思います。

 今年の漢字は「金」でした。オリンピックで多くの金メダルの獲得や、政治に関する金の問題、経済の問題などの世相を表しています。流行語大賞とは異なり、抽象的な漢字ですから、その意味の取り方は、人により大きく異なるでしょう。

 さて、今朝(2月9日)のNHKラジオ第一で、イギリスのオックスフォード辞書が選んだ2016年の言葉は「post-truth」という言葉についての解説をしていました。ソーシャルメディア(ウェブ上の情報)の発達により、「既存の組織や媒体が提供する事実への不信感が高まっている」ことを背景にしたものだそうです。しかし、そのもうひとつの発露は、「フェイク・ニュース」という形で現れているという指摘もありました。

 私の「安全工学」の講義でネット情報を原則使うことを禁じているのは、そのようなウェブ上の情報の信頼性の低さによります。昨年の講義を聞いた諸氏は憶えているでしょうが、ネット世界は自分の意見を正当化するための間違った情報に満ちています。「ただで簡単に手に入る情報は、もともと価値がない」と私は思います。価値のある情報の入手には、金や汗や時間のようなコストを必要とします。正しい情報を得るためには、必ずその情報のソースにあたり、さらに複数のソースから「裏を取る」作業をしなければなりません。多面的な取材を必要とします。だから、私の講義では、単一のニュースソースでレポートを作成しようとする手抜きレポートは低評価です。

 だいぶ昔ですが、レポートの締め切りに関して「フェイク・ニュース」を流されてしまいました。

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2017.02.22

「安全の反対は危険」ではない(江頭教授)

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 以前、豊洲新市場の地下水で検出された有害物質(ベンゼン・ヒ素)の話題についてこの記事で触れました。その中で

基準というものは「この問題に対応しなくてはならない」というシグナルを発するためのトリガー

と述べました。今回はその意味についてもう少し補足したいと思います。

 いろいろな人の話を読んだり聞いたりすると、どうも「安全の反対は危険」「危険の反対は安全」と考えている人たちがいるように思えます。

 もう少し具体的に例えば豊洲の地下水で、たとえばベンゼンの様な危険な物質が検出されたとします。その濃度がどの程度の値であるかによって非常に高ければ危険、低ければ安全だとすると、両者の間の境目が基準値である、というイメージが持たれている様です(下図)。

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 こう考えていると、基準を超えたら危険だ、問題だ、という事になるのでしょう。

 ではこのような意味での基準値をどうやって決めれば良いのでしょうか。これは非常に難しい、というか不可能なことです。その理由は実際にはその危険な物質に対して弱い人や強い人がいることや、研究者によって見方が異なること、またどこまでを安全、すなわち社会的に許容できる、と判断するかは主観的な問題で客観的な決定ができないことなどが挙げられます。

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2017.02.21

「安全工学」の講義 番外編 インフルエンザ-3

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 2年生の講義「安全工学」担当の片桐です。番外編です。以下は片桐の個人的な意見です。

 予防接種を受けるべきかどうかは、悩みどころです。1回の摂取で数千円の費用と多大な時間がかかります。また、インフルエンザがはやってから受けにいっても、効果が出るまでに時間がかかり、下手をすると病院でインフルエンザを拾ってくることもあります。

 予防摂取のメリットは「かかりにくくなる」「かかっても軽く済む(重症化を防ぐ)」ところです。摂取時期は10,11月が好適と言われています。しかし、その年の流行のインフルエンザの型に対して予防摂取ワクチンの予想が外れると、ほとんど効果を期待できません。現在は4種類のウイルスに対するワクチン(4価ワクチン)を使っています。

 さて、Web Pageで「インフルエンザワクチン」を検索すると、上位にワクチンに対して否定的な意見が出てきます。今回,このブログを書くために、そのうちのいくつかを読んでみました。そこに書かれている「事実」は私の目から見て正しいのですが、その事実を元にした「意見」は結論ありきでかなり飛躍したものもありました。

 私は医者ではないので、その可否についての意見をここでは示しません。しかし、それらを読まれる方には、事実と意見をしっかり分離して、事実を受け取り、自分で判断されることを強くお勧めします。予防接種を受けろと圧力をかけることが正しくないように、予防接種は危険だという自分の意見を押し付けることもまた正しくないと存じます。これは歯科医での「フッ素塗布」と同じです(ブロク2016.11.7)。

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2017.02.20

呼吸でどのくらいの酸素が二酸化炭素に変わるのか?(江頭教授)

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 本ブログでいろいろな記事を公開しているので、時々その内容について問い合わせをいただくことがあります。今回のお題、「呼吸でどのくらいの酸素が二酸化炭素に変わるのか?」もその一つから。

 以前の「人間は一人当たりどのくらいの二酸化炭素を排出しているか? その2」という記事にテレビ局の人から問い合わせをいただきました。件の記事は人間が呼吸する空気の量と、呼吸の前後で増える二酸化炭素の濃度から(生き物としての人間が)排出している二酸化炭素の量を計算したものですが、呼吸でどのくらい二酸化炭素濃度が増えるか、という点についての問い合わせです。ということで今回は出典を含めて少し説明を加えたいと思います。

 早速元データにつてい。本学の図書館にあった以下の保険体育についての専門書

猪飼道夫編

現代保健体育学大系 ; 13 人体生理学

大修館書店(1984)

に呼吸に関する章がありました。その中に呼吸の前後でのガスの成分の変化のデータが記載されています。

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2017.02.17

「コーオプ実習情報交換会」が開催されました(江頭教授)

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 今回のタイトル、

 「コーオプ実習情報交換会」が開催されました。

 実は、これとまったく同じタイトルの記事が実は2016年8月11日の本ブログにも出ています。

 そうです。本学工学部の新しい教育プログラムであるコーオプ教育、その中心となるコーオプ実習は8週間、企業で行われる実習であり、2016年度の後期には本学機械工学科にて最初に実施されたのでした。その際の「情報交換会」が先の記事であり、今回2月10日に開催されたのは2017年度前期(実際には1期を8週間×2回のクォーター)に実施されるコーオプ実習での「情報交換会」です。

 来年度から始まるコーオプ演習は我々応用化学科の2年生と電気電子工学科の2年生の学生諸君が参加する実習となります。「情報交換会」の主役はあくまでも彼ら応用化学、電気電子工学の2年生、そして彼らを受け入れることでコーオプ教育の一端を担ってくださる企業の方々です。

 今回3部構成で実施された「情報交換会」、第1部ではすでにコーオプ実習を経験した機械工学科学生の代表が、かれらの経験を語ってくれました。受け入れてくださった企業の方達の御講演、そして本学部の学部長、コーオプセンター長の挨拶なども含め、まずは講演会形式の第1部が終了です。

 その後の第2部、これが本番。

 

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2017.02.16

「安全工学」の講義 番外編 インフルエンザ-2(片桐教授)

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 2年生の講義「安全工学」担当の片桐です。番外編です。以下は片桐の個人的な意見です。

 むかしむかし(1980年代?)に、ベンザエースという風邪薬のコマーシャルソングで「風邪は、社会の迷惑です」と歌われていました。うつらない風邪なら、見た目が悪い、休んで迷惑をかける程度です。しかし、インフルエンザはうつります。その意味ではインフルエンザにかかってしまった時にむやみに出歩くのは「社会の大迷惑」です。慎みましょう。

 インフルエンザは公欠の事由になります。これは「他の学生にうつされたら困るから、休んでくれ」と学校側からお願いする病気であるからです。そのため、他の風邪とは厳密に区別されています。インフルエンザは学校保健安全法とその下位法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)に定められた伝染病です。かかった場合には医療機関や学校からの届け出を求められています。学生さんはお医者様で「インフルエンザ」と診断されたら、大学の学務課にその旨を電話かメールですぐに連絡しましょう。診断書などは後日回復してから持参しましょう。

 今年は期末試験の時期にかかった学生さんがおられました。この場合は追試で対応します。

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2017.02.15

「平等に貧しくなろう」って言うけど、「貧しい」ってどういうこと?(江頭教授)

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 今回のお題は最近、話題になっている上野千鶴子氏の中日新聞紙上でのインタビュー、いろいろ思うところはあるのですが今回はサステイナブル工学が目指す社会像に絡めて江頭個人の意見を述べさせてもらいます。

 話題になっている(炎上している?)ポイントは一つは「日本社会は移民を受け入れられない」という認識について。これは上野氏個人の望みや主張ではなく、日本社会をの現状を主観的に観測したうえでの印象なので、異論のあるなしは人それぞれですね。一方、もう一つのポイントである「みんな平等に、緩やかに貧しくなっていけばいい」という部分は上野氏の未来に向けた主張でしょう。「もう充分貧しいんですけど。」とか「まず、あなたも私たちと同じくらい貧しくなってね。」という意見は容易に想像できます。

 さて、私の意見もこの二つ目のポイントに関連していますが、少し違う内容です。上野氏が考える「貧しくなる」とか「衰退する」ということの具体的な意味がよくわからない、という点です。上野氏は今後の日本では「人口が減少する」と主張していて、ここは私も同意見です。しかし、「人口が減少する」から「衰退する」、「貧しくなる」と続けているのですが、そこがよくわからない。

 たとえば日本の人口、1億2千万人がずーと減少して一人になってしまったら、それは「衰退」したといえるでしょうね。でもその最後の一人は「貧しい」のでしょうか?ひょっとして日本人の全財産を相続してものすごいお金持ちかもしれません。人口の減少が衰退だ、とするなら世界で一番繫栄しているのはアフリカだ、ということでしょうか。人口が多いいほうが豊かなら世界で一番豊かなのはインドですよね。「衰退」はともかく「貧しさ」が人口の増減を直接に意味していないことは確かだと思います。

 では、人口が減少すると貧しくなるのでしょうか?そもそも「貧しさ」の基準は何なのでしょうか? SF的な話ですが、地球軌道上、太陽の反対側にもう一つの地球が実は存在していて、そこにもう一つの日本があった!と考えてみます。二つの日本が一緒になって新生「日本国」を作ったとします。人口は2倍に増えました。GDPも二倍なりました。これで繁栄して豊かになった、というのでしょうか? 逆にこの新生「日本国」が分裂してまた二つの日本に戻ったとしたら「衰退し」て「貧しく」なったというのでしょうか。こう考えると、「貧しさ」(と「豊かさ」)の基準は日本全体の〇〇(例えばGDP)ではなく、一人当たりの〇〇だ、と考えたほうが良さそうです。日本全体の〇〇が人口減少で減る、というのはわかりやすいのですが、一人当たりの〇〇まで減る、というのは一概には言えない話だと思います。一体どこで上野氏はそのような確信を得たのでしょう?

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図は国立社会保障・人口問題研究所による日本の将来人口推計

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2017.02.14

「安全工学」の講義 番外編 インフルエンザ-1(片桐教授)

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 2年生の講義「安全工学」担当の片桐です。番外編です。以下は片桐の個人的な意見です。

 先のブログでパンデミックについて述べました(2017.1.19)。今年はインフルエンザの当たり年のようです。インフルエンザの広がりなどは、国立感染症研究所(NIID)のWeb Pageに詳しい統計データが記載されています。http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/a/flu.html

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全国ほとんどの都道府県で「警報」レベルに達しています。

 去年はやったB型ではなく、今年はA型(H3)がはやっています。年度で見るとA型、B型は交互にはやっています。これは昨年はやったタイプのウイルスに対する免獲得疫の効果でしょうか。

http://www0.nih.go.jp/niid/idsc/iasr/Byogentai/Pdf/data2j.pdf

 以下の話しにはわかりやすさのために、少しだけ嘘が混ざっています。

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2017.02.13

応用化学科スポーツ大会を開催しました。(江頭教授)

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 「応用化学科スポーツ大会」は本学科が今年から始めた新しい試みです。

 学生諸君、それに我々教員を含めて交流を深めよう、そのために企画したのが今回のスポーツ大会です。本学科も開設2年目となり、1年生と2年生とが居る状態になりましたが、学年間の交流も目的の一つです。

 場所は2015年4月に行った新入生交流会と同じ、八王子キャンパス体育館のアリーナにて行いました。前回の交流会の時は他学部の学生さん達にも参加してもらって実施していまいしたが、今回は本学科の学生達で実施できるようになった。ちょっと感動してしまいます。

 さて、競技は二つ。一つはバレーボール、そしてもう一つはドッチボールです。

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2017.02.10

「研究室配属に関する説明会」を開催しました。(江頭教授)

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 「えっ?研究室配属って誰が配属されるの?」このタイトルをみてこう思うひとがいるかも知れません。本学科は15年開設なので、現時点では2年生までしかいません。ですから、この「研究室配属に関する説明会」の対象者は2年生です。

 「えっ?2年生が研究室に配属されるの?」 その通り。2年生が研究室に配属されます。でも配属されるのは2年生の3月30日。その2日後には3年生になりますから、実質的には3年生の初めからの配属となります。

 「えっ?3年の初めでもやっぱり早くない?」これもその通りですね。実はこれ、本学工学部の特徴であるコーオプ教育との関係で決まりました。応用化学科の学制諸君は3年の前期にコーオプ実習として学外での研修を行うことになります。従って、3年前期、学生諸君は大学から離れて学外に出る時間が長くなります。早期の配属を行うとしたら3年前期には無理。夏休みを過ぎれば3年後期になってしまいます。ということで、少々早いですが2年後期末のこの時期に説明会となったのです。

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2017.02.09

地表にとどく太陽エネルギーとアルベド(江頭教授)

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 太陽から地球に降り注ぐエネルギー、地球の自然と人間にとって大きな恵みであるこの太陽エネルギーはどのくらい地表に届いているのか。こちらの記事で地球全表面での平均で約342W/m2となることを紹介しました。

 「地球は青かった」の言葉通り、地球は宇宙空間から見えている。ということは地球に届いた光の一部は反射して宇宙に戻っていることになります。今回のお題は地球に降り注ぐ太陽エネルギーのうち、どの程度が反射されるのか、です。

 地球の表面は均一ではないので、反射の状態は土地によって異なります。入射する太陽エネルギーのうちで反射する光のエネルギーの割合を「アルベド」と言いますが、土地によってその値は異なっています。新しい雪の積もった雪原なら0.9程度。真っ白な雪原では9割の光が反射されます。地球上で大きな面積を占めている海のアルベドは実は小さくて0.06程度だと言います。雪原とは逆に太陽エネルギーの94%は反射せず、吸収されるということですね。

 海と同様、アルベドが小さいのが森林です。0.09から0.15だといいます。太陽の光を吸収することに適応した生態系ですから、これは納得のいくところです。一方、砂漠のアルベドは0.4程度とずっと大きな値です。

 地球の7割の表面積を占める海、それに陸地に存在する森林のアルベドが小さいなら地球全体の平均のアルベドは小さいのかな、と思いますが実は0.3程度と、それなりに大きな値となっています。これは何故でしょうか?

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2017.02.08

八王子キャンパス建設秘話?(江頭教授)

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 先日タクシーを利用して本学のキャンパスに向かっている際、運転手さんと話しをしているとなんとなく八王子キャンパスの建設されたころの話をしてくれました。私は3年前にこの大学にきた身、当時の様子など全く知らなかったので、ともて興味深いお話しでした。

 「当時はこんなところに大学を作るなんて本当かなーと思っていたんですよ。あそこは沢(広く浅い谷)になっていたからどうするんだろうねーって。」

 「そしたらものすごい数のダンプがどんどん土を運んできて。そのころ南大沢でも開発をやっていたから、そこから土を運んできたんだろうね。この道もダンプがずっと連なっていたんだ。」

 「そのうち工事がはじまるんだけど、業者がどっと押し寄せて、それがみんな都心からくるでしょ。金曜日の夕方には都心に帰るってんでタクシーは大繁盛さ。片倉駅に集まったタクシーに次から次に呼び出しがかかって、それ新宿だ、それ渋谷だ、万単位の支払いだよ。それが4台5台と束になってるんだから。」

 「あんな景気のいいことは後にも先にもなかったな」

 面白い話をありがとう、運転手さん。はいっ、少ない運賃でごめんね。

...

 さて、これを機に本学の八王子キャンパスの歴史を少し調べてみました。

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こちらは「東京工科大学 八王子キャンパス ドローンmovie」という動画です。

八王子キャンパスの大きさが実感できるかと。

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2017.02.07

映画「ソイレント・グリーン」の描くディストピア(江頭教授)

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 映画「ソイレント・グリーン」は1973年に公開されたアメリカの映画です。

 舞台は2022年のニューヨーク市。人口は4000万に膨れあがり、食料をはじめ多くの物資が不足するこの大都市で、巨大企業ソイレント社が新たに開発した高エネルギー食料、それが「ソイレント・グリーン」でした。しかし、その「ソイレント・グリーン」には恐るべき秘密が隠されていて、主人公の刑事(チャールストン・ヘストン)はソイレント社の役員の殺人事件を追ううちにその秘密を知ることになる、という筋立てです。

 ここではソイレント・グリーンの秘密についてのネタバレはなしにしましょう。今回は、この物語の背景である荒廃した未来のニューヨーク市でイメージされているディストピア(ユートピアの反対。悲惨な未来。)について考えてみたいと思います。

 本作の大きな見所の一つは配給される「ソイレント・グリーン」を手に入れようと集まった群衆に対して、十分な量の「ソイレント・グリーン」が配給できなかったことによって起こる暴動騒ぎのシーンです。主人公たち警察は最初は暴徒に圧倒されますが、やがて到着した暴動鎮圧部隊の特殊車両(トラックにパワーショベルが取り付けられたもの)が暴徒を根こそぎにしていきます。十分な食料を得ることができないうえに、まるで物のように扱われる人々の姿、これが悲惨な未来として描かれています。

 その一方で贅沢なマンションで暮らす一部の特権階級の姿も描かれています。ただし、彼らが嗜む贅沢品も、萎びたセロリに矮小なリンゴ、そして一切れの牛肉に過ぎません。それでも家もなく、アパートの番人(銃を持っています)のお目こぼしで出入り口の階段に折り重なるようにして寝泊まりしている貧民たちと、その生活は雲泥の差です。ここで描かれているのは物資不足のうえに、極端な貧富の差のある世界なのです。

 さて、私がこの映画を見たのはテレビ放送なので公開の数年後、おそらく高校生ぐらいのころだったと思います。今回、DVDで見直してみたのですが、このディストピアの描かれ方が、高校時代とは違って見えるようになっていました。

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2017.02.06

八王子キャンパスの朝-2 眠そうな顔(片桐教授)

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 昨日と違って今朝は寒い。朝方生活を送る私でも、このような朝は眠い。
 睡気を感じつつ、正門を入って本部棟前に通じる坂を登っているとき、ふと視線を感じた。見上げたら、目が合った。ドキッとした。

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 「彼も眠そうだ…」

 そんな風に思ってしまった自分に対して、思わず笑がこみ上げてくる。自分の笑いで目が覚めた。

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2017.02.03

八王子キャンパスの朝焼(片桐教授)

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 私は、もともと朝方の生活を送っている。毎朝、おおよそ6:45頃に大学へ到着する。

 朝のキャンパスは静かだ、そして清々しい。特に冬は冷たい空気までも心地よい。夜明け前の空、研究室から見えるは富士山は美しい(ブログ2016.2.29)。

 武蔵野の林をとおして、みる朝焼けは美しい。

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2017.02.02

ハーバーとボッシュ、偉いのはどっち? 2年目 (江頭教授)

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 以前、本ブログでも紹介した、この質問。本学科1年生向けの「サステイナブル化学概論」というオムニバス形式の授業で私が出したレポート課題です。本当は「どちらの業績を評価するか」という質問ですが、まあ、「偉いのはどっち?」、あるいは「どっちが好きですか?」くらいの意味です。

 ハーバーボッシュ法は空気に含まれる大量の窒素ガスを植物が利用できる形態に変化させる技術です。この方法でほぼ無尽蔵の窒素肥料を合成することが可能となり、70億を超える人口を支える現在の農業の礎となった偉大な発明です。

 レポートに 「ハーバー・ボッシュ という名前の人がいたのかと思っていた」というエピソードを書いてくれた学生さんもいました。そんな誤解が起こっても不思議がないくらいに、ハーバーとボッシュ、フリッツ・ハーバーとカール・ボッシュ、の名前はこの空中窒素固定技術では必ず一緒に出てきます。

 しかし、その役割は大きく異なっていました。大ざっぱに言えば窒素、水素、アンモニアの平衡関係を解明し、高圧条件下で触媒を用い、比較的低温でアンモニアを合成する方法を考案したのがハーバーであり、高圧で水素を扱う場合に起きるいろいろな困難を一つ一つ解決して実用化したのがボッシュだ、という役割分担になります。

 さて、学生さんの回答を集計したのが以下の図。結果は驚くくらいにきれいに半々に分かれました。

 ハーバーでもボッシュでも、どちらを選んでも良いのですが、「両方偉い」は反則です。(今回は「無効」として集計しました。)これがOKならほとんどみんなが「両方偉い」になってしまいますよね。

 

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2017.02.01

太陽エネルギーの量と太陽定数(江頭教授)

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 地表に降り注ぐ太陽の光は地球を暖め、水を蒸発させて雲をつくり雨を降らせ、植物を育てて私たちの命を支えてくれる、太陽電池を使えばエネルギー源にもなる、何よりも大きな自然の恵みといえる太陽の光ですが、どのくらいのエネルギーを地球に与えているのでしょうか。それが今回のお題です。

 すぐにわかる事ですが、地表のどこか一点で考えてもこのエネルギーの量は激しく変動しています。昼もあれば夜もある。夜の光のエネルギーは0です。夏もあれば冬もある。晴れの日もあれば曇りの日もある。加えて地表のどの場所を選ぶかでも違いがあります。赤道直下の暑い太陽、極地の白夜。太陽の恵みはかなり不平等な様です。

 さて、視点を宇宙に移して太陽光線を受けている地球を外から見てみましょう。太陽からの光は360度全ての方向に広がって行きます。太陽からの距離の二乗に反比例して弱くなっていく太陽の光。地球の軌道で地球ぐらいの物体を考える時にはほとんど平行光線として見ることができます。この地球の外、地球の軌道上でみた太陽からの光のエネルギーの密度を太陽定数と呼びます。その実測値は1367 W/m2。地球の外なので昼も夜も関係ありません。もちろん、夏も冬も、北も南も関係なくひとつの値が決まります。(厳密には太陽の活動に呼応して変動しているのですが、その変動幅は小さいそうです。)

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 さて、太陽定数というひとつの基礎データが与えられたところで最初にもどって地表に降り注ぐ太陽のエネルギーについて考えてみましょう。先ほど太陽の恵みは不平等で場所と時間で大きく変動する、と書きましたがその平均値はどれくらいでしょうか。地表のどこか一点で、1年間太陽光を計測して平均値を求める。それを地球全体で行って全ての平均を計算する。この手順で太陽エネルギーの平均値を求めることができます。いや、天気の善し悪しも含めると1年間の平均では不充分でしょう。それはさすがに複雑過ぎるので、大気圏の外での太陽エネルギーについて考えることにしましょう。

 実はこの意味での太陽エネルギーの平均値、びっくりするくらい簡単に計算することができるのです。

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