水の蒸発に使われる太陽エネルギーはどれくらい(江頭教授)
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太陽から地球に到達する光のエネルギーは342W/m2という記事を以前書きました。そして、その約3割は反射されるので地球に吸収されるエネルギーの密度は約240W/m2という話をこちらに。
さて、今回のお題はこの太陽エネルギーが何に使われるかです。最終的にはすべて地球を暖めることになるのですが、その前に一番大きな割合を占めていそうなのが「水の蒸発」。以前の記事で太陽エネルギーの全てが水の蒸発に使われると仮定して水の蒸発速度の最大値を求めたのですが 4778mm/y という結果を得ていますが、その祭「太陽エネルギーの側から見ても地球の水を蒸発させるという働きは結構な割合を占めているということでしょう」と書いたのですが、以下それを検証してみよう、具体的にどのくらいなのかみてみよう、ということです。
以前にも紹介した教科書
坂田昌弘・編著「環境化学 (エキスパート応用化学テキストシリーズ)」(講談社サイエンティフィック 2015)
には水の蒸発速度として以下の様なデータが紹介されていました。
海上の総蒸発量 436.5×103 km3/y
陸上の蒸発散量 65.5×103 km3/y
(20ページ、図2.1より)
地球表面に占める海と陸の面積比は約7:3であることを考えると、やはり海からの水の蒸発が、面積当たりでも大きい、ということがわかります。陸地での値が「蒸発」量ではなく、「蒸発散」量になっている点は以前説明したように、陸地での水の気化に植物の寄与(蒸散)が大きく働いているからですが、それでも海での蒸発の方が盛んだ、という事ですね。
さて、このデータから蒸発に必要なエネルギーを計算してみましょう。
まず、地球全体での蒸発量は海と陸地の値を足して502.0×103 km3/yです。地球の全表面積が5.10×108 km2 で割ると面積当たりの蒸発量は単位に注意して 984mm/y となります。先に示した最大値 4778mm/y より小さくて2割程度ですね。
エネルギーに換算すると、水の比重が1、蒸発潜熱が2257 kJ/kg として計算すると70.4kW/m2、約70W/m2となります。これは地球に入射してくるエネルギー342W/m2の約2割、当然ですが先ほど蒸発量の最大値と比較した場合と同じ結果になっています。
さて、まとめてみましょう。太陽から地球にくるエネルギーのうち、約3割は反射、約2割は水の蒸発に使われる、という事がわかりました。
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