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太陽エネルギーの量と太陽定数(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 地表に降り注ぐ太陽の光は地球を暖め、水を蒸発させて雲をつくり雨を降らせ、植物を育てて私たちの命を支えてくれる、太陽電池を使えばエネルギー源にもなる、何よりも大きな自然の恵みといえる太陽の光ですが、どのくらいのエネルギーを地球に与えているのでしょうか。それが今回のお題です。

 すぐにわかる事ですが、地表のどこか一点で考えてもこのエネルギーの量は激しく変動しています。昼もあれば夜もある。夜の光のエネルギーは0です。夏もあれば冬もある。晴れの日もあれば曇りの日もある。加えて地表のどの場所を選ぶかでも違いがあります。赤道直下の暑い太陽、極地の白夜。太陽の恵みはかなり不平等な様です。

 さて、視点を宇宙に移して太陽光線を受けている地球を外から見てみましょう。太陽からの光は360度全ての方向に広がって行きます。太陽からの距離の二乗に反比例して弱くなっていく太陽の光。地球の軌道で地球ぐらいの物体を考える時にはほとんど平行光線として見ることができます。この地球の外、地球の軌道上でみた太陽からの光のエネルギーの密度を太陽定数と呼びます。その実測値は1367 W/m2。地球の外なので昼も夜も関係ありません。もちろん、夏も冬も、北も南も関係なくひとつの値が決まります。(厳密には太陽の活動に呼応して変動しているのですが、その変動幅は小さいそうです。)

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 さて、太陽定数というひとつの基礎データが与えられたところで最初にもどって地表に降り注ぐ太陽のエネルギーについて考えてみましょう。先ほど太陽の恵みは不平等で場所と時間で大きく変動する、と書きましたがその平均値はどれくらいでしょうか。地表のどこか一点で、1年間太陽光を計測して平均値を求める。それを地球全体で行って全ての平均を計算する。この手順で太陽エネルギーの平均値を求めることができます。いや、天気の善し悪しも含めると1年間の平均では不充分でしょう。それはさすがに複雑過ぎるので、大気圏の外での太陽エネルギーについて考えることにしましょう。

 実はこの意味での太陽エネルギーの平均値、びっくりするくらい簡単に計算することができるのです。

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 上図をみてください。また地球の外から見た図です。太陽から地球に降り注ぐ太陽の光ですが、地球の後ろには影ができています。この影になった部分の太陽光線が地球に届いた太陽光線の全てです。地球は自転していますが球形なので影の形は変化せず、太陽から地球に与えられている光のエネルギーは一定です。地表からみると変動している太陽の光のエネルギーですが、太陽からみれば一定している。このエネルギーを地表でいろいろに分け合っているのですが、分け合う側の地表の面積も全体では一定で変化はありません。要するに地球の影の面積で光を受けて地球の表面積で分け合っているのです。地球の半径をrとすると影の面積はπr2、表面積は4πr2なので、太陽光線のエネルギーは1/4になる、つまり太陽定数の1/4が地球に降り注ぐ太陽エネルギーの平均値となります。1367÷4、すなわち約342 W/m2が地球の表面積当たりに供給される太陽エネルギーの密度です。

 なお、前述したとおり地表で受ける太陽のエネルギーは大気による吸収や反射の影響を受けていますが、今回求めた値にはその部分は考慮されていません。

江頭 靖幸

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