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危険物取扱者の資格を取ろう-5 法律-2 危険物とその分類-2 (片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

 このシリーズはこの夏の受験により危険物取扱者の資格を目指す学生さんを対象にしたレクチャーをします。

 前回に引き続き、消防法で定める「危険物」とはどのようなものかについてです。

 さて、危険物かどうかの判定は、消防法の別表第一を見て、

(1) まず、この表に該当する物質は危険物です。
(2) 次に、表に記載の性質を持つ物質は危険物です、
(3) それでもわからない時は、実際に燃えるかどうかなどの判定試験を行い、燃える物質は危険物です。

 今回は、そのうちの (3)についての「政令の定める試験」の概要です。ここで大事なことは判定基準そのものではなく、どのような試験をどの類のどのような形状の物質に行うかです。

 第一類の固体酸化物は「酸化剤の潜在的危険性」と「衝撃に対する敏感性」を試験します。前者の「酸化剤の潜在的危険性」は燃焼試験を行います。これは試料を可燃物と混ぜて加熱し、燃えるかどうかを調べます。後者の「衝撃に対する敏感性」は鉄球落下試験とか鉄管試験で調べます。鉄球落下試験は試料を可燃物と混ぜてそこへ鉄球を落として爆発するかどうかで判定します。後者は鉄管に可燃物と混ぜたものを詰めて雷管で起爆して爆発するかどうかで判定します。要するに鉄パイプ爆弾を作ってみるわけですね。

http://www.jaea.go.jp/jnc/pnc-news/ntopic/PT97/P9705/PED9/9-7/S9-7.b1.html

 第六類の液体酸化物も「酸化剤の潜在的危険性」を燃焼試験で判定します。

http://www.kayakujapan.co.jp/danger/kaisetsu-6nensyo.html

 第二類の可燃性の固体は「火炎による着火の危険性」と「引火の可能性」を試験します。前者の「火炎による着火の危険性」は小ガス炎着火試験で調べます(http://www.eiseiken.co.jp/service/funjin/gasu.html)。空気中で着火源の小さな炎で燃え出すかどうかを試験するものです。後者の「引火の可能性」は装置などを用いた引火点測定試験を行います。引火する蒸気圧になる温度を測定するわけですね。(https://www.djklab.com/parts/service/pdf/seta_1.pdf)。

 第四類の可燃性の液体も「引火の危険性」を引火点測定試験により判定します(http://www.hitachi-chem-ts.co.jp/service/analysis/hazard/index.html)。

 第三類の自然発火性・禁水性物質は「空気中での発火の危険性」「水と接触して発火または可燃性ガスを発生する危険性」をそれぞれ行います。空気中での発火の危険性は自然発火性試験を行います。空気中でろ紙の上において燃え出したりろ紙を焦がしたりするかを観察します(https://www.scas.co.jp/service/hazard/dangerous_decision/dangerous_decision3.html)。燃え出したら自己発火性物質です。

 また、「水と接触して発火または可燃性ガスを発生する危険性」は資料を水に浮かべた(したがって水を吸っている)ろ紙の上に乗っけて火を近づけて着火するかどうかで判定します(http://www.kayakujapan.co.jp/danger/kaisetsu-mizuhannou.html)。燃え出したら禁水化合物です。

Fig

 第五類の自己反応性は「爆発危険性」や「加熱分解の激しさ」を熱分析試験や圧力容器試験で行います(http://www.kayakujapan.co.jp/danger/kaisetsu-atsuyouki.html)。自分ではやりたくない分析ですね。

 試験方法はテキストの文章を見るよりも、試験装置やその仕組みを見る方が頭に入りやすいので、上記のweb pageやGoogleでキーワード検索をして「眼で見て」勉強して下さい。

 これらの試験結果などを元に、危険性の度合いを示す危険等級区分がされます。危険等級はⅠ、Ⅱ、Ⅲに分けられます。危険等級Ⅰが最も危険です。それぞれの類について、危険等級を「憶えて」ください。

 第六類の危険等級は全てⅠです。

 また、第三類の危険等級はⅠかⅡです。ですから危険等級Ⅰの物質(カリウム、ナトリウム、アルキルアルミニウム、アルキルリチウム、黄リン、その他の第1種の性状を有するもの)を憶えれば、その他は危険等級Ⅱになります。

 同様に、第五類の危険等級もⅠかⅡです。ですから危険等級Ⅰの物質は第1種の性状を有するものと憶えれば、その他は危険等級Ⅱになります。

 第二類は危険等級ⅡまたはⅢになります。固体は燃えにくいということです。危険等級Ⅱの物質(硫化リン、赤リン、硫黄、その他の第1種の性状を有するもの)を憶えれば、その他は危険等級Ⅲになります。

 第1種は危険等級Ⅰ〜Ⅲまですべてありますが、それぞれ、「第一種酸化性固体の性状を有するもの」「第二種酸化性固体の性状を有するもの」「上記以外の危険物」です。

 ややこしいのは第四種です。危険等級Ⅰの者は「特殊引火物」と呼ばれます。この用語は憶えておきましょう。危険等級Ⅱの物質(第一石油類、アルコール類)も憶えましょう。危険等級Ⅲはもちろん「上記以外の危険物」です。

 まとめです。

・危険物には第一類から第六類がある。これは危険物の性状(液体固体の違いと火災や爆発での役割(酸化剤か可燃物か、あるいは両応か、水や空気中で燃え出すか)による分類です

・類ごとに危険物かどうか、その危険等級判定の試験方法があります。

・危険等級にはⅠ〜Ⅲがあります。これも憶えるしかありません。特に、第四類の危険等級についてはしっかり憶えてください。この危険等級は次回の指定数量と関わりがあります。でも、対応はしていないのが受験生の悩みどころです。

片桐 利真

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