« 2017年2月 | トップページ | 2017年4月 »

2017年3月

2017.03.31

エネルギーを太陽光線で賄うにはどれだけの土地が必要か(江頭教授)

|

 「太陽から地球に到達する光のエネルギーは342W/m2。その約3割は反射され約2割は水の蒸発に使われることになります。」

 という書き出しでいくつか記事を書いてきました。前回は人間が代謝するエネルギーを太陽光線で賄うとしたらどれだけの面積が必要かを計算しました。結果は約0.3m2くらい。以外と小さいのですが、これは太陽エネルギーの変換効率が100%なら、という仮定での話です。

 さて、今回のお題は人が(代謝するエネルギーだけではなく)必要とする全てのエネルギーを太陽光で賄うとしたら、という計算です。

 まず、人が必要とするエネルギーとはどれくらいなのでしょうか。その人が住んでいる土地(暖かいか寒いか)や季節(夏か冬か)によって変わるのでしょうが、大きな違いを生むのはその人が暮らしている社会の技術のレベルでしょう。

 少し古いのですが平成16年の「エネルギーに関する年次報告」(要するに「エネルギー白書」の事です)の序章には「文明とエネルギー」というコラム乗っています。その中で社会の発展とともに人間の利用するエネルギーが増える様子がグラフで示されています。

 原始人は4,000kcalを日々消費していたと考えられます。半分は代謝、要するに食べ物のエネルギーですが、同程度のエネルギーを火を燃やして消費していました。以降、技術が発展するとともに人々のエネルギー消費は増えていきます。

火を使い食料を調理し始めた狩猟人は 5,000kcal

農業を始めた初期農業人は12,000kcal

一部水やや石炭の利用を知り始めた高度農業人は26,00kcal

産業革命当時の社会に暮らした人々「産業人」は77,000kcal

そして現在の我々、「技術人」は230,000kcalのエネルギーを消費してる、

としています。

 これを太陽光線で賄う(利用効率は100%としましょう。)としたら、どれくらいの面積が必要になるか、計算してみましょう。

G0j00040

続きを読む "エネルギーを太陽光線で賄うにはどれだけの土地が必要か(江頭教授)"続きを読む

2017.03.30

危険物取扱者の資格を取ろう-10 法律-7 申請・届出と許可 (片桐教授)

|

 このシリーズはこの夏の受験により危険物取扱者の資格を目指す学生さんを対象にしたレクチャーをします。

 危険物を扱う設備の設置や変更には各種の申請手続き、あるいは届け出が必要です。

 申請手続きは

(1) 設置許可 製造所や貯蔵所の設置許可申請が必要です。市町村長等に申請します

(2) 変更許可 場所や位置、構造や設備の変更には変更許可申請が必要です。これも市町村長等に申請します。

(3) 仮貯蔵・仮取扱い承認申請 これは前のブログ(危険物取扱者の資格を取ろう-8 法律-5 指定数量-3   (192))で述べました。これは消防長または消防署長に申請します。

(4) 仮使用承認申請 工事などで一部変更時にそれ以外の部分を使う時の申請です。市町村長等に申請します。

(5) 完成検査前検査申請 設備の設置でややこしい手続きは、次回、お話しします。これも市町村長等に申請します。

(6) 完成検査申請 これも設備の設置関係です。これも市町村長等に申請します。

(7) 保安検査申請 定期検査申請と何か不都合による不定期検査申請があります。定期検査は屋外タンクの場合は8年に1回、移送取扱所では1年に1回行います。これも市町村長等に申請します。

(8) 予防規定作成・変更認可申請 予防規定はその現場のTPOに応じた所内ルールです。詳細はこの後のブログでお話しします。これも市町村長等に申請します。

これらの申請についてはそれぞれのイベントごとにまとめておきましょう。例えば製造所等の設置や変更には(1)(2)(4)(5)(6)が関わります。保安検査には(7)が、予防規定には(8)がかかわります。

Fig_4

続きを読む "危険物取扱者の資格を取ろう-10 法律-7 申請・届出と許可 (片桐教授)"続きを読む

2017.03.29

工学部ガイダンスとアドバイザー面談

|

 本学の入学式は4月4日の火曜日、そして授業が始まるのは4月10日です。

 良く「いやー、学校の先生は休みが多くて良いですね。」などと言われますが、どうしてどうして、実は大学の春休みはすでに終了しています。

 今週に入って本学の八王子キャンパスでは学部順にガイダンスが始まっています。我々工学部のガイダンスは30日。1年生、というか新2年生、2年生というか新3年生に向けたガイダンスのために教員はそれぞれに向けた準備を進めています。(そうです。工学部にはまだ新4年生はいないのです。)

 「入学時はともかく、大学でガイダンスなんか必要なの?」

 はい、必要です。本学に固有の「コーオプ教育」や大学院進学のための情報、珍しいところでは大学がライセンスを導入しているソフトChemDrawやSciFinderのアップデートなど、在学生にも必要な情報を一気にまとめて伝達する、ガイダンスはそのための絶好の機会です。

 そして何より、応用化学科の2年生(というか新3年生)には大きなイベントが。本学科ではこの時期に研究室配属を決めるので、実質的に30日のガイダンスがその発表の場となるのです。

52

続きを読む "工学部ガイダンスとアドバイザー面談"続きを読む

2017.03.28

危険物取扱者の資格を取ろう-9 法律-6 製造所・貯蔵所・取扱所  (片桐教授)

|

 このシリーズはこの夏の受験により危険物取扱者の資格を目指す学生さんを対象にしたレクチャーをします。

 指定数量以上の危険物を貯蔵し、使ったりする施設は大きく3つに分類されます。製造所、貯蔵所、取扱所です。これらはさらに12の区分に細分化されます。12区分それぞれについて、容量や指定数量倍数の制限などがあります。また、その構造や設置についてもルールがあります。これは憶えましょう。

製造所 

1.製造所

危険物を製造する施設

容量制限はありません。

石油コンビナートをイメージしてください。

貯蔵所

2.屋内貯蔵所 屋内で危険物を貯蔵・取扱う施設

容量制限はありません

床面積は1000㎡以下です。

建物の中にドラム缶がおいてある、のです。

 3.屋外タンク貯蔵所 屋外にあるタンクで貯蔵・取扱う施設

容量制限はありません

 4.屋内タンク貯蔵所 屋内にあるタンクで貯蔵・取扱う施設

指定数量の40倍以下

 5.地下タンク貯蔵所 埋没タンクで貯蔵・取扱う施設

容量制限はありません。

GSなどで地下に埋めてあるタンクです。

(続きます)

Fig_3

続きを読む "危険物取扱者の資格を取ろう-9 法律-6 製造所・貯蔵所・取扱所  (片桐教授)"続きを読む

2017.03.27

安全・安心?安心・安全? 豊洲問題(片桐教授)

|

 以前、江頭教授が取り上げた(ブログ2017.1.18)豊洲の地下水の問題への片桐の個人的な見解です。

 昨日(2017.3.20)の都議会で石原元都知事は「安全と安心を混同している。専門家が豊洲は安全と言っているのに、信用せずに無為無策で放置して余計なお金を使う。理解できない。その責任は彼女にある」(2017/3/4 2:30日本経済新聞 朝刊)と現知事を非難する発言をしました。

 安全と安心の問題については、このブログでも以前に取り上げました(ブログ2016.8.12)。ここでは、科学技術者は「安全」を尺度に判断する。しかし、一般は「安心」を尺度にする。したがって、科学技術者はその「安心」の尺度を慮らねばならない、と述べました。今回は、その安全と安心の優先順位について考えてみます。さて、Googleで検索すると:

   「安全安心」   17.300,000件

   「安心安全」   66,300,000件

   「安全・安心」  17,200,000件

   「安心・安全」  139,000,000件

でした。なんということでしょう。圧倒的に、安心が先にきています。これから結論づけるのは早計かもしれませんが、一般的には安全より安心の方が優先されているようです。

Fig

続きを読む "安全・安心?安心・安全? 豊洲問題(片桐教授)"続きを読む

2017.03.24

学位授与式(卒業式)が行われました(江頭教授)

|

 昨日、3月23日には東京工科大学の「学位授与式」、高校で言うところの卒業式が行われました。大学では授業を受けて所定の単位を取得し、卒業研究を行って、その論文が合格と認められれば学士号という学位が大学から授与されます。(大学院では修士号や博士号が授与されます。)ですから大学は卒業式ではなくて学位を授与する式、学位授与式となるわけです。

 朝10時半から写真の体育館のアリーナで、片柳理事長をはじめとする祝いのことば、軽部学長から各学部の総代への学位記の授与、そして卒業生からの答辞など。卒業生諸君とご家族の方々、そして我々教員も参加して盛大な式が行われました。卒業式は学部の卒業生に修士、博士の修了者も一緒に参加し、さらに八王子キャンパスの学部に加えて蒲田キャンパスの学部も合同で行うので入学式と並ぶ本学で最も規模の大きな式典となっています。

 式典の間、私たち教員は演台脇に卒業生諸君の方を向いて座っています。

Img_1156

 と、言うわけで式典の途中は写真を撮ることができません。上の写真は式典が始まる前にとった会場の様子。まだまだ人が揃っていませんね。

続きを読む "学位授与式(卒業式)が行われました(江頭教授)"続きを読む

2017.03.23

危険物取扱者の資格を取ろう-8 法律-5 指定数量-3 (片桐教授)

|

 このシリーズはこの夏の受験により危険物取扱者の資格を目指す学生さんを対象にしたレクチャーをします。

 危険物の規制はその扱う量の指定数量の倍数で異なります。

 指定数量の1/5未満の場合の規制はありません。石油ストーブの使用にいちいち届け出は必要ありません。

 指定数量の1/5以上、指定数量以下の場合は、各市町村の条例によって設備や使用目的に応じた技術上の基準が定められています。Web 上で「火災予防条例、東京都」で検索すると、東京都の火災予防条例を読むことができます。貯蔵タンクに使う鋼板の厚さなど、詳しい決まりが記載されています。

 指定数量以上の場合は、消防法で規制されます。Web 上で「消防法」で検索すると、法律を読むことができます。指定数量以上の危険物を扱うことのできる設備について、市町村長や知事の許可を得る必要があります。ただし10日以内なら所轄の消防長、消防署長の許可があれば「仮貯蔵」できます。

(消防法 第十条  指定数量以上の危険物は、貯蔵所(車両に固定されたタンクにおいて危険物を貯蔵し、又は取り扱う貯蔵所(以下「移動タンク貯蔵所」という。)を含む。以下同じ。)以外の場所でこれを貯蔵し、又は製造所、貯蔵所及び取扱所以外の場所でこれを取り扱つてはならない。ただし、所轄消防長又は消防署長の承認を受けて指定数量以上の危険物を、十日以内の期間、仮に貯蔵し、又は取り扱う場合は、この限りでない。

 消防法 第十一条  製造所、貯蔵所又は取扱所を設置しようとする者は、政令で定めるところにより、製造所、貯蔵所又は取扱所ごとに、次の各号に掲げる製造所、貯蔵所又は取扱所の区分に応じ、当該各号に定める者の許可を受けなければならない。製造所、貯蔵所又は取扱所の位置、構造又は設備を変更しようとする者も、同様とする。)

Fig_2

続きを読む "危険物取扱者の資格を取ろう-8 法律-5 指定数量-3 (片桐教授)"続きを読む

2017.03.22

ベンゼン濃度は最大で環境基準の何倍までなれるのか?(江頭教授)

|

 今度は環境基準の100倍のベンゼンが検出されたとか。あっ、豊洲の地下水検査の話です。

 100倍、というと大きな数字のように感じますが、以前書いたように排水基準と比べれば10倍。だいぶ印象が変わります。やはりここは1mg/Lと書くべきでしょう。

 さて、今回のお題はベンゼン濃度、どんどん高くなったとしたらどこまで高くなり得るのか、という問題です。

 まず単純に最大の値、ということで純粋なベンゼンの濃度を考えてみましょう。ベンゼンの密度は0.88g/Lですから、880,000 mg/L。環境基準0.01mg/Lの8800万倍。もう一声で一億倍ですね。さすがにこれはありそうもない。誰かかベンゼン貯蔵庫を造っていたなら別ですが、廃棄物に何の混ぜ物もないとはちょっと考えられない話です。そもそも100%ベンゼンは水と分離する油なので"水"質に関する基準には当てはまらないですね。

 ということで、今度は水にベンゼンが飽和している状態を考えてみましょう。

P_02100716

続きを読む "ベンゼン濃度は最大で環境基準の何倍までなれるのか?(江頭教授)"続きを読む

2017.03.21

危険物取扱者の資格を取ろう-7 法律-4 指定数量-2 (片桐教授)

|

このシリーズはこの夏の受験により危険物取扱者の資格を目指す学生さんを対象にしたレクチャーをします。

 さて、危険物庫が正しく使われているかどうかの判定は、「指定数量の倍数」という単位で評価します。

 指定数量の倍量は実際に貯蔵している物質の量を指定数量で割ったものです。

  倍数 =(その危険物の数量)÷(その危険物の指定数量)

ですね。1カ所に複数種の危険物を貯蔵する場合は、それぞれの危険物の倍数を求め、これを足し合わせた数値が、そこにある危険物の指定数量の倍数になります。

 この倍数が1.0を超える場合、消防法の適用を受けることになります。そして、0.2~1.0の場合は市町村の火災予防条例による規制を受けます。その設備で扱える危険物の倍数はその設備の安全施設や立地などで異なります。

 自動車のガソリンはもちろん危険物です。ガソリンは第四類第一石油類の非水溶性ですからその指定数量は200Lです。ですから、我が家の車のガソリンタンクを満タンにすると65Lですから、倍数は0.325になります。けっこう大きな数字ですね。複数台の自家用車を満タンの状況で持っていると、指定数量を超えてしまいそうです (^_^; )。

 長距離トラックでは400Lのタンクをつけているそうです。これはガソリンなら倍数2.0になります。でも軽油なので、指定数量は1000Lですから、倍数0.4ですね。

 多くの市町村で事業所の倍数が0.2を超える場合は「少量危険物貯蔵の届け出」が必要になります。一般家庭の場合は0.5つまりガソリン100Lで届け出が必要になります。もし、指定数量以上の燃料を積むのなら、車に危険物の運搬を示す「危」の標識をつけて、危険物取扱者の同乗が必要になります。

 このような判断基準の元となるのが指定数量とその倍数です。

Fig

続きを読む "危険物取扱者の資格を取ろう-7 法律-4 指定数量-2 (片桐教授)"続きを読む

2017.03.20

春のロッカー(江頭教授)

|

 高校生の皆さんには想像し難いかも知れませんが、大学に入ると「クラス」というものがありません。もっと言うとクラスルーム、というか自分の教室というものがないのです。自分の机というものもありません。研究室に所属するとそこに居場所ができるのですが、これは4年あるいは3年からのことで、入学して2~3年ほどの期間、学制諸君は科目ごとに指定された時間に指定された場所で授業を受けるだけで、基本的に大学内に自分のスペースというものは無い状態です。

 それでも別に困らないのですが、ひとつだけ問題になるのは荷物のことです。大学でも体育実技の授業がありますから体操服や運動靴が必要になります。それに応用化学の学生さんには実験もあるので白衣が必要になりますね。これらはかさばる一方で予習にも復習にも使わないものですから、大学に置いておくのが合理的です。これはばかりは自分の場所がないと不便です。

 という事で、本学では教室前の廊下や階段の踊り場などのスペースにロッカーをおいています。

Fig

続きを読む "春のロッカー(江頭教授)"続きを読む

2017.03.17

人間が直接光合成ができるとしたら(江頭教授)

|

 「太陽から地球に到達する光のエネルギーは342W/m2。その約3割は反射され約2割は水の蒸発に使われることになります。」

 という書き出しでいくつか記事を書いてきました。最近の記事では、光合成によって植物に蓄えられるエネルギーは0.21 W/m2 、全体の約1千6百分の1程度、という結論になったのですが、その際に

「植物が光合成をしても、植物自身が消費してしまう分のエネルギーは私たちは利用することはできません。(私たち自身が光合成ができれば話は別ですが…。)」

と書きました。

 というわけで今回のお題は「私たち自身が光合成ができれば」どうなるか、です。

 もちろん、光合成で直接エネルギーを得ることができる、となれば食事は必須アミノ酸の摂取や必要な元素の取得だけが目的となるはずで量や頻度が減ると期待できます。そこで、「光合成で人間が活動するエネルギーをまかなうとしたらどの程度の面積が必要か」を計算してみましょう。

 まず人の必要とするエネルギーはどのくらいでしょうか。厚生労働省が行っている「国民健康・栄養調査」には日本人のエネルギー摂取量(カロリー摂取量と言った方がしっくりくるかも)が男女別、年齢別で記載されています。調査の年代や年齢によっても変わりますが男性はだいたい2000 kcal から2500 kcal、女性は2000 kcal から 1500 kcal に収まっています。これは1日の摂取量ですから単位は正確には kcal/d となりますね。cal はエネルギーの単位、dは時間の単位なので kcal/d はWと同じ仕事率の単位ということになります。

611k4j41wl_sx351_bo1204203200_

弐瓶 勉氏のSF漫画、「シドニアの騎士」では遺伝子改造で光合成ができるようになった人類が描かれています。といっても、体が緑色という訳でもないので我々が知っている地球の植物の光合成とはまるで違うメカニズムによっているのでしょう。でもみんな色白すぎでは...。シドニア内部の照明は現在の地球よりかなり明るいのでしょうか。

続きを読む "人間が直接光合成ができるとしたら(江頭教授)"続きを読む

2017.03.16

危険物取扱者の資格を取ろう-6 法律-3 指定数量-1(片桐教授)

|

 このシリーズはこの夏の受験により危険物取扱者の資格を目指す学生さんを対象にしたレクチャーをします。

 さて、危険物取扱者試験の「法律」はいろいろ憶えることが多くて大変です。特に、この「指定数量」は数字を憶えなければならないので、正直しんどいですね。でも、ここが大きな山です。自分でノートに表を作って「憶え」ましょう。試験が終わったら忘れても良いのです。試験が終わって指定数量の数字が必要になったら、参考書やネットで調べれば良いのです。むしろ、うろ覚えの数値で対応するよりも、調べ直す方が失敗しません。ですから、資格取得のために憶えることはやむを得ない苦行と思って…あきらめましょう。憶えるときに、指定数量はその具体的な物質も含めて憶えてください。

 指定数量は危険物の危険性の基準となる数量です。危険物の「類」や「品名」や「性質」により指定数量は決められています。

 第一類の第一種酸化性固体(危険等級Ⅰ:塩素酸塩(Na, K),過塩素酸塩(Na, NH4)、過酸化物(Na, K)、亜塩素酸塩(Na)、臭素酸塩(K))は50 kgです。第二種酸化性固体(危険等級Ⅱ:ヨウ素酸塩(Na)、過マンガン酸塩(K))は300 kgです。第三種酸化性固体(危険等級Ⅲ:硝酸塩(Na, NH4),重クロム酸塩(K)、三酸化クロム、次亜塩素酸(Ca))は1,000 kg (1 t)です。

 第六類(危険等級Ⅰ:過塩素酸(HClO4)、過酸化水素(H2O2)、硝酸(HNO3)、ハロゲン間化合物(例えば五フッ化臭素(BrF5)))は300 kgです。

 ここで、同じ酸化物で同じ危険等級でも類により指定数量は異なることに注意して下さい。あ〜ややこしい。

Fig

続きを読む "危険物取扱者の資格を取ろう-6 法律-3 指定数量-1(片桐教授)"続きを読む

2017.03.15

片柳研究棟でプロジェクションマッピングを行うらしい(江頭教授)

|

 「今日もやることがたくさん、忙しいな-」などと言っていると以下の様なメールの連絡が来ていました。曰く、

 3月2X日、午後6時から午後9時までの間、片柳研究棟の山側の研究室のカーテン・ブラインドを全て閉めてください。また、カーテン・ブラインドと窓ガラスの間には物が置いてあることがないように確認を合わせてお願いいたします。

私たちの工学部応用化学科の研究室のほとんどは片柳研究棟(写真)の西側、写真では向かって左側の4階にあります。私の研究室は写真のこちら側なので、メールで連絡のあった「山側の研究室」にどんぴしゃりです。

 どうやら片柳研究棟でプロジェクションマッピングを行う計画が進んでいるらしく、これはそのテストのために行われる様です。

52

続きを読む "片柳研究棟でプロジェクションマッピングを行うらしい(江頭教授)"続きを読む

2017.03.14

Kじゃない熱電対を初めて見た!(江頭教授)

|

 樹液流を計るセンサーを手作りしようと思って文献をもとに材料を買い集めていた時の話。熱電対で温度を(正確には温度差を)計るのですが、そこで利用されていたのがTの熱電対でした。

 で、今回のタイトル「Kじゃない熱電対を初めて見た!」となります。

 えーっと、どこから説明しましょうか?まずは「熱電対」とは何か。答え「温度を測るセンサーの一種です。」

 ではその原理を説明しよう!

 ということで順を追って解説を。まず、2つの違う種類の金属を接触させると金属の間で電子の移動が起こります。これは金属の種類によって電子を引きつける力が違うから。でも片方の金属の電子が全てもう片方に移動してしまうわけではありません。電子が移動してきた方の金属の電位は上がり、電子が出ていった方の電位は下がる、だと分かり易いのですが、電子の電荷がマイナスなので、この場合符号は逆転しますよね。ともかく両者の金属の間には電位差が生じ、2つの金属が電子を引きつける力を打ち消すことで電子の移動は止まります。

 ポイントはこの電位差が温度に依存する、という点です。2種類の金属を今度は線状にして両方の端を結びつけたとします。片方を高温に、もう一方を低温にすると両方の接点の電位差にずれが生じる事となります。その電位差のずれを測定する事で温度を求める、これが熱電対の原理です。

 先ほどTとかKとか言っていたのはこの2種類の金属として何を選ぶか、を表しています。Kは以前はCAと呼ばれていたもので、これはクロメル・アルメルの略称でした。つまりクロメルとアルメルという2つの合金を使った熱電対ということです。一方、Tの熱電対は銅とコンスタンタンという合金をつかった熱電対です。

 金属の組み合わせで使用可能な温度範囲も異なります。Kの熱電対の使用温度は-200℃から1000℃まで。広い温度範囲で利用可能なのでもっとも利用されている熱電対のタイプです。というか、熱電対というとほとんどKしか見たことない、というぐらいの勢い。一方Tの使用温度範囲は-200℃から300℃と言われていますからKと被っていますよね。高い温度範囲で使えない分だけ利用範囲が限られるということでしょうか、あまり見かけないタイプです。

 はい、これでタイトルに戻ってきました。Tの熱電対はあんまり使われていないのです。

Mono3319011416011402

写真は市販の熱電対。細い2本の金属線を"さや(シース)"に包むことで針金状のセンサーの先端の温度を測定できるように作られています。

続きを読む "Kじゃない熱電対を初めて見た!(江頭教授)"続きを読む

2017.03.13

危険物取扱者の資格を取ろう-5 法律-2 危険物とその分類-2 (片桐教授)

|

 このシリーズはこの夏の受験により危険物取扱者の資格を目指す学生さんを対象にしたレクチャーをします。

 前回に引き続き、消防法で定める「危険物」とはどのようなものかについてです。

 さて、危険物かどうかの判定は、消防法の別表第一を見て、

(1) まず、この表に該当する物質は危険物です。
(2) 次に、表に記載の性質を持つ物質は危険物です、
(3) それでもわからない時は、実際に燃えるかどうかなどの判定試験を行い、燃える物質は危険物です。

 今回は、そのうちの (3)についての「政令の定める試験」の概要です。ここで大事なことは判定基準そのものではなく、どのような試験をどの類のどのような形状の物質に行うかです。

 第一類の固体酸化物は「酸化剤の潜在的危険性」と「衝撃に対する敏感性」を試験します。前者の「酸化剤の潜在的危険性」は燃焼試験を行います。これは試料を可燃物と混ぜて加熱し、燃えるかどうかを調べます。後者の「衝撃に対する敏感性」は鉄球落下試験とか鉄管試験で調べます。鉄球落下試験は試料を可燃物と混ぜてそこへ鉄球を落として爆発するかどうかで判定します。後者は鉄管に可燃物と混ぜたものを詰めて雷管で起爆して爆発するかどうかで判定します。要するに鉄パイプ爆弾を作ってみるわけですね。

http://www.jaea.go.jp/jnc/pnc-news/ntopic/PT97/P9705/PED9/9-7/S9-7.b1.html

 第六類の液体酸化物も「酸化剤の潜在的危険性」を燃焼試験で判定します。

http://www.kayakujapan.co.jp/danger/kaisetsu-6nensyo.html

 第二類の可燃性の固体は「火炎による着火の危険性」と「引火の可能性」を試験します。前者の「火炎による着火の危険性」は小ガス炎着火試験で調べます(http://www.eiseiken.co.jp/service/funjin/gasu.html)。空気中で着火源の小さな炎で燃え出すかどうかを試験するものです。後者の「引火の可能性」は装置などを用いた引火点測定試験を行います。引火する蒸気圧になる温度を測定するわけですね。(https://www.djklab.com/parts/service/pdf/seta_1.pdf)。

 第四類の可燃性の液体も「引火の危険性」を引火点測定試験により判定します(http://www.hitachi-chem-ts.co.jp/service/analysis/hazard/index.html)。

 第三類の自然発火性・禁水性物質は「空気中での発火の危険性」「水と接触して発火または可燃性ガスを発生する危険性」をそれぞれ行います。空気中での発火の危険性は自然発火性試験を行います。空気中でろ紙の上において燃え出したりろ紙を焦がしたりするかを観察します(https://www.scas.co.jp/service/hazard/dangerous_decision/dangerous_decision3.html)。燃え出したら自己発火性物質です。

 また、「水と接触して発火または可燃性ガスを発生する危険性」は資料を水に浮かべた(したがって水を吸っている)ろ紙の上に乗っけて火を近づけて着火するかどうかで判定します(http://www.kayakujapan.co.jp/danger/kaisetsu-mizuhannou.html)。燃え出したら禁水化合物です。

Fig

続きを読む "危険物取扱者の資格を取ろう-5 法律-2 危険物とその分類-2 (片桐教授)"続きを読む

2017.03.10

光合成に使われる太陽エネルギーはどれくらい? 純一次生産から(江頭教授)

|

 太陽から地球に到達する光のエネルギーは342W/m2。その約3割は反射され約2割は水の蒸発に使われることになります。

 そして、こちらの記事では光合成に使われる割合(ただし陸上での値です)を計算し、約三百分の一程度という結果を得ました。

 今回は別の角度から、地球全体で光合成によって得られる、というか光合成によって植物が蓄えるエネルギーを計算してみましょう。植物が光合成をしても、植物自身が消費してしまう分のエネルギーは私たちは利用することはできません。(私たち自身が光合成ができれば話は別ですが…。)

 植物の光合成から植物自身の呼吸を引いた部分、要するに植物が成長してバイオマスが増える部分を一次生産と呼びます。(なお、呼吸を引く前の値は一次生産と呼びます。)この純一次生産についてのデータが、

 日本生態学会 編「生態学入門」(東京化学同人 2004)

という教科書の「地球の純一次生産速度と植物の現存量」(表9.1)という表にまとめられているのを見つけました。

 生態系によっていろいろな値をとるのですが、陸地の平均は 773 g/(m2・y)、 海洋の平均は 152 g/(m2・y)、そして全地球平均で 333 g/(m2・y)  となっています。

 前回と同様、この値が太陽エネルギーのどの程度に相当するのか、計算してみましょう。

Lgf01a201309292200

続きを読む "光合成に使われる太陽エネルギーはどれくらい? 純一次生産から(江頭教授)"続きを読む

2017.03.09

危険物取扱者の資格を取ろう-4 法律-1 危険物とその分類-1 (片桐教授)

|

 このシリーズはこの夏の受験により危険物取扱者の資格を目指す学生さんを対象にしたレクチャーをします。

 危険物取扱者の試験の三科目のうち「危険物に関する法令(15問)」は理系の人間にとって一番厄介です。その他の「物理学及び化学(10問)」はあまり心配しなくても良いでしょう。「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法(20問)」は憶えることもありますが、まあ常識の範囲です。でも法律で60%=15問中9問正解するのは、大変です。しかも、試験問題は引っかけに近いものもあるため、そそっかしい人や素直すぎる人は要注意です。疑り深くなりましょう。でも、法律をクリヤしないと資格は取れません。

 危険物取扱者の扱う「危険物」は、消防法に定められたものです。

 消防法では第二条に「7 危険物とは、別表第一の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するものをいう。」と定められています。

 別表第一には第一類から第六類まで記載してます。この「類」は酸化剤(第一類(固体)、第六類(液体))か可燃物(第二類(固体),第四類(液体))かそれとも両方の性質を兼ね備えているか(第五類)、あるいは水や空気で燃え出すか(第三類)で分類されています。実験室でも酸化剤と可燃物を同じところに保管していはダメです。

 第一類は酸化剤となる固体、第二類は可燃性のある固体、第三類は空気中や水と触れると発火する物質、第四類は可燃性の液体、第五類は爆発する物質、第六類は酸化剤になる液体です。

 これを燃焼の三要素「可燃物、酸化剤、着火源」でおおまかに理解できます。第一類は固体の酸化剤、第六類は液体の酸化剤、第二類は固体の可燃物、第四類は液体の可燃物、第三類は可燃物+着火源、第五類は可燃物+酸化剤ですね。燃焼の三要素は、可燃物・酸化剤・着火源、です。燃焼や爆発はこの3要素のそろった時におこります。どれかひとつ欠けても燃焼や爆発は起こりません。だから類に分けて、それぞれ別個に保管するのです。

 しかし、法律の類別のこの順番のバラバラさは何か意地悪っぽいのですが、まず類別(第◯類はどのような危険物か)を憶えてください。次に、具体的な物質がどの類になるのかをわかる程度に表の中身も憶えてください。

Sanko_01_02

続きを読む "危険物取扱者の資格を取ろう-4 法律-1 危険物とその分類-1 (片桐教授)"続きを読む

2017.03.08

サステイナブル工学研究会を開催しました(江頭教授)

|

 「サステイナブル工学」は本学工学部の大きな特徴のひとつです。「サステイナブル」+「工学」。サステイナブルとは持続可能な、という意味ですから、持続可能な工学、という事になります。もちろん、持続可能なのは工学そのものではなくて、持続可能な社会を造るための工学、という意味です。 もっとかみ砕いて言えば「私たちが充分なモノを手に入れ、エネルギーを使って便利な生活を続けてもエネルギー不足や環境問題が起こらない世界をつくるための工学」という事でしょうか。

 さて、「サステイナブル」という考えは広く知られていますが、これと工学を合わせた「サステイナブル工学」はまだ新しい考え方です。その具体的な内容がどんなものになるのか、わたしたち工学部の教員も各自で試行錯誤すると同時に互いに議論をしながら研究を進めています。

 そんな「サステイナブル工学」研究のひとつの取り組みとして、工学部では「サステイナブル工学研究会」を実施しています。基本的には本学部教員が参加するクローズドな会ですが、外部の先生に講師をお願いした場合など、学生が参加するケースもあります。

 写真は先日開催した「サステイナブル工学研究会」の風景。この回は本学機械工学科の芝池教授の「LCA」の現状についての講演を中心とした構成でした。

Img_1116

続きを読む "サステイナブル工学研究会を開催しました(江頭教授)"続きを読む

2017.03.07

出張化学実験(都立戸山高等学校スーパーサイエンスハイスクール)(西尾教授)

|

Fig

 2月17日に,都立戸山高校を訪問して化学実験を実施してきました.戸山高校での出張実験は,2014年の11月(「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)で出張実験を行いました」), 2016年の10月(「化学の魅力を広める活動(化学の実験講習会の講師)」) に続く3回目となりました.当日は,2年生約20名が2班に分かれ,定番の?表面処理技術(陽極酸化とめっき)でAl板を虹色にする実験を行いました.

 今回も,鮮やかで多彩な色の出現に驚きの声が上がり,終了予定時刻を過ぎても実験に熱中する程楽しんでもらうことができました.実験の楽しさは化学の魅力の一つですので,この様な実験を通して,高校生が化学への興味を深めてくれることを願っています.

1702__1

1702__2

続きを読む "出張化学実験(都立戸山高等学校スーパーサイエンスハイスクール)(西尾教授)"続きを読む

2017.03.06

危険物取扱者の資格を取ろう-3 イントロ-3受験の手続き(片桐教授)

|

 このシリーズはこの夏の受験により危険物取扱者の資格を目指す学生さんを対象にしたレクチャーをします。

 さて、在学中に受験する場合は、15単位の単位取得証明書が必要です。これは、その科目を「化学」と教授会で認定し、大学事務でその証明書を作成しますので、少し時間がかかります。受験希望者は申し込みの3ヶ月くらい前に担当の先生にご相談ください。

 電子申請の制度もありますが、在学生の皆さんは証明書が必要ですので、書面申請を行うことになります。郵送で必要書類を送ることになります。

 必要書類は東京都の場合は消防試験研究センターの中央試験センター、他の道府県なら、その道府県の試験センターに請求します。受験地で選んでください。試験手数料は5000円です。詳しくはセンターのweb pageを見てください。

https://www.shoubo-shiken.or.jp/kikenbutsu/index.html

Fi_4

続きを読む "危険物取扱者の資格を取ろう-3 イントロ-3受験の手続き(片桐教授)"続きを読む

2017.03.03

光合成に使われる太陽エネルギーはどれくらい?(江頭教授)

|

 太陽から地球に到達する光のエネルギーは342W/m2という記事を以前書きました。そして、その約3割は反射され、 約2割は水の蒸発に使われることになります。

 さて、今回のお題はこの太陽エネルギーのうち、光合成に使われるのはどのくらいか、という点に注目してみましょう。

 今回も元データは教科書

 坂田昌弘・編著「環境化学 (エキスパート応用化学テキストシリーズ)」(講談社サイエンティフィック 2015)

から。光合成に関する情報として

 光合成による炭素固定速度 123 GtC/y

(24ページ、図2.4より)というデータがありました。ただし、これは地表のデータですから、海の植物(プランクトン)の光合成の速度は含まれていません。

 地球の全表面のうち、陸地の面積は約3割の1.47×108 km2 、です。この数値から面積当たりの光合成速度(CO2の吸収速度)を計算すると 2.651×10-5g/(m2s) となりました。物質量( mol )で表すと 2.21×10-6mol/(m2s) です。

 では、このデータから光合成に必要なエネルギーを計算してみましょう。

E3d

続きを読む "光合成に使われる太陽エネルギーはどれくらい?(江頭教授)"続きを読む

2017.03.02

危険物取扱者の資格を取ろう-2 イントロ-2資格の種類と受験の資格(片桐教授)

|

 このシリーズはこの夏の受験により危険物取扱者の資格を目指す学生さんを対象にしたレクチャーをします。

 さて、前回お見せしました片桐の免状には大きく3種類の資格が書かれています。「甲種」「乙種」「丙種」という欄があります。このうち甲種は全ての危険物の取り扱いを認められた者です。乙種はその免状に記載の種類の危険物の扱いを認められます。丙種は指定された危険物しか扱えない上に、「立会い」や「危険物保安監督者」にはなれません。業務は危険物取扱者のものに限定されます。だから、丙種は余るメリットがありません。できれば甲種をとりましょう。

 甲種と乙種は受験資格条件が異なります。

Fi_3

続きを読む "危険物取扱者の資格を取ろう-2 イントロ-2資格の種類と受験の資格(片桐教授)"続きを読む

2017.03.01

バリアフリーな八王子キャンパス(江頭教授)

|

 本日のお題は「バリアフリー」についてです。

 八王子キャンパスのあちらこちら、ちょっとした段差のある部分にはスロープが付いています。一番大きいスロープは我々の工学部応用化学科がある片柳研究棟と研究棟A・Bとの間にある大きな坂道です。坂道中央の水路の脇には階段も有りますが、他はまっすぐな坂になっていて車でも通ることができる構造です(実際には自動車には専用道路があるので、この坂道を交通することはありませんが。)

 スロープの存在にはなんとなく気がついていたのですが、その意義、というかありがたさに気づくことになりました。ちょっとしたことで左足のアキレス腱を痛めて普通に歩けない状態になったのです。

 

Photo_2

こちらは「東京工科大学 八王子キャンパス ドローンmovie」という動画です。

片柳研究棟と研究棟A・Bの距離感を感じていただければ。

続きを読む "バリアフリーな八王子キャンパス(江頭教授)"続きを読む

« 2017年2月 | トップページ | 2017年4月 »