Kじゃない熱電対を初めて見た!(江頭教授)
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樹液流を計るセンサーを手作りしようと思って文献をもとに材料を買い集めていた時の話。熱電対で温度を(正確には温度差を)計るのですが、そこで利用されていたのがTの熱電対でした。
で、今回のタイトル「Kじゃない熱電対を初めて見た!」となります。
えーっと、どこから説明しましょうか?まずは「熱電対」とは何か。答え「温度を測るセンサーの一種です。」
ではその原理を説明しよう!
ということで順を追って解説を。まず、2つの違う種類の金属を接触させると金属の間で電子の移動が起こります。これは金属の種類によって電子を引きつける力が違うから。でも片方の金属の電子が全てもう片方に移動してしまうわけではありません。電子が移動してきた方の金属の電位は上がり、電子が出ていった方の電位は下がる、だと分かり易いのですが、電子の電荷がマイナスなので、この場合符号は逆転しますよね。ともかく両者の金属の間には電位差が生じ、2つの金属が電子を引きつける力を打ち消すことで電子の移動は止まります。
ポイントはこの電位差が温度に依存する、という点です。2種類の金属を今度は線状にして両方の端を結びつけたとします。片方を高温に、もう一方を低温にすると両方の接点の電位差にずれが生じる事となります。その電位差のずれを測定する事で温度を求める、これが熱電対の原理です。
先ほどTとかKとか言っていたのはこの2種類の金属として何を選ぶか、を表しています。Kは以前はCAと呼ばれていたもので、これはクロメル・アルメルの略称でした。つまりクロメルとアルメルという2つの合金を使った熱電対ということです。一方、Tの熱電対は銅とコンスタンタンという合金をつかった熱電対です。
金属の組み合わせで使用可能な温度範囲も異なります。Kの熱電対の使用温度は-200℃から1000℃まで。広い温度範囲で利用可能なのでもっとも利用されている熱電対のタイプです。というか、熱電対というとほとんどKしか見たことない、というぐらいの勢い。一方Tの使用温度範囲は-200℃から300℃と言われていますからKと被っていますよね。高い温度範囲で使えない分だけ利用範囲が限られるということでしょうか、あまり見かけないタイプです。
はい、これでタイトルに戻ってきました。Tの熱電対はあんまり使われていないのです。
写真は市販の熱電対。細い2本の金属線を"さや(シース)"に包むことで針金状のセンサーの先端の温度を測定できるように作られています。
熱電対のメリットは「2つの金属が接触している」という比較的簡単な構造だけできちんと温度を測ることができる、という点です。温度が高いところ、さらに温度の上下が激しいところではこの簡単な構造はとても有利です。
その一方で通常の温度領域では熱電対以外の温度測定方法がいろいろ使えます。温度で抵抗値が変わる電気的な素子もありますし、直接目で見える温度計などもその一種です。室温付近では熱電対はそれらの測定手段と比べてそれほど魅力的ではないのかも知れません。
実は熱電対には「温度の絶対値ではなく温度差しか測定できない」という欠点があるのです。現在使われている熱電対を使った温度測定のシステムでは室温近くの温度を測定するセンサーを別途用意して、このセンサーの温度と熱電対で計られる温度差を足して温度を出力しています。つまり熱電対で温度を測るときは室温近くの温度センサーも使っている訳です。これなら高い温度など特別の条件のところ以外では使わないでしょうし、高い(数百℃)の温度で利用できないタイプの熱電対の出番も少なくなろうというものです。
さて、最初に戻って「樹液流を計るセンサー」には何で熱電対が使われていたのでしょうか。その話はいずれ回をあらためて説明しましょう。
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