エネルギーを太陽光線で賄うにはどれだけの土地が必要か(江頭教授)
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「太陽から地球に到達する光のエネルギーは342W/m2。その約3割は反射され、 約2割は水の蒸発に使われることになります。」
という書き出しでいくつか記事を書いてきました。前回は人間が代謝するエネルギーを太陽光線で賄うとしたらどれだけの面積が必要かを計算しました。結果は約0.3m2くらい。以外と小さいのですが、これは太陽エネルギーの変換効率が100%なら、という仮定での話です。
さて、今回のお題は人が(代謝するエネルギーだけではなく)必要とする全てのエネルギーを太陽光で賄うとしたら、という計算です。
まず、人が必要とするエネルギーとはどれくらいなのでしょうか。その人が住んでいる土地(暖かいか寒いか)や季節(夏か冬か)によって変わるのでしょうが、大きな違いを生むのはその人が暮らしている社会の技術のレベルでしょう。
少し古いのですが平成16年の「エネルギーに関する年次報告」(要するに「エネルギー白書」の事です)の序章には「文明とエネルギー」というコラム乗っています。その中で社会の発展とともに人間の利用するエネルギーが増える様子がグラフで示されています。
原始人は4,000kcalを日々消費していたと考えられます。半分は代謝、要するに食べ物のエネルギーですが、同程度のエネルギーを火を燃やして消費していました。以降、技術が発展するとともに人々のエネルギー消費は増えていきます。
火を使い食料を調理し始めた狩猟人は 5,000kcal
農業を始めた初期農業人は12,000kcal
一部水やや石炭の利用を知り始めた高度農業人は26,00kcal
産業革命当時の社会に暮らした人々「産業人」は77,000kcal
そして現在の我々、「技術人」は230,000kcalのエネルギーを消費してる、
としています。
これを太陽光線で賄う(利用効率は100%としましょう。)としたら、どれくらいの面積が必要になるか、計算してみましょう。
詳細は以前の「自分で光合成」の記事に譲って結果のみ示します。
原始人 4,000kcal 0.57m2
狩猟人 5,000kcal 0.71m2
初期農業人 12,000kcal 1.7m2
高度農業人 26,00kcal 3.7m2
産業人 77,000kcal 10.9m2
技術人 230,000kcal 32.6m2
となりました。我々技術人を支えるには5.7m×5.7mの土地が必要だ、という結果です。もちろん、これは効率を100%とした計算なので本当に必要「最小限」の土地面積です。
結構大きいですか?でも「私の土地、私の空気はどれだけあるのか?」という記事で書いたように人間一人当たりの土地面積は陸地だけでも約150m×150mある計算ですから、その700分の一程度の面積だ、とも言えますね。
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