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書評 池内 了著「科学の考え方・学び方」(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 先日紹介した本学の入学式でお話をいただいた池内 了先生が科学に興味を持っているジュニア向けに書き下ろした「科学」についての本です。

 「科学の本」ではなくて、「科学についての本」、つまり科学を用いて分かった結果ではなく、科学そのものについて論じている、という点がこの本の特徴です。

 第一章の「私にとっての科学」ではご自身が「科学者」を目指した経験から科学を実践する科学者とはどのような考え方をするのか、を説明し、つづく第二章「科学の考え方」では現在の科学の持っている構造を池内流にまとめ、第三章「科学はどのように生まれたのか」では科学の歴史をたどることで科学についての理解を深めています。 

 ここまでは本書の前半です。やや詰め込みすぎの感もありますが、広く受け入れられている一般的な考え方の説明で、ソフトな語り口でなじみ易い文章だと思います。(分かりやすいか、というとそうとも言い切れないと思うのですが...。)

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 さて、本書の後半は第四章「現代の科学と科学者を考える」からスタートします。ここでは現代の科学が著しい発展を遂げたが故に一般の人々から遠ざかってしまったこと、科学そのものにも取り扱い難い問題があることなど、科学の問題点にも言及しています。とくに阪神淡路大震災での高速道路の倒壊、高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故、薬害エイズ問題、オウム真理教騒動などを例にとり科学と社会との間に難しい問題があることを指摘しています。

 つづく第五章「二十一世紀の科学と人間」では地球環境問題や生命科学の発展を対象として一般の市民と科学者の対話の重要性に触れています。

 さて、本書の後半のこの部分、特に異を唱える意図はありませんが、3.11以降の現在の視点からみるとどことなく牧歌的に見える事は否めないかと思います。これは決して池内先生のせいではありません。むしろ池内先生の問題意識は正しく、その問題が誰の目にも明らかになった、そして池内先生の示した「対話する科学者」という科学者像が遙かな高見にある理想であって、とうていたどり着けそうにない、そう多くの科学者が感じている、というのが現状なのではないでしょうか。

 最後の章「未来を担う君たちへ」はジュニア諸君に向けた実践的なアドバイスです。前の章と比べたとき、この部分は全く古びることがない、それは科学を学ぶということの普遍的な「良さ」を表しているからではないか、そんな思いで本書を読了しました。

江頭 靖幸

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