物干し竿と熱収縮チューブ(江頭教授)
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先の記事で「プラスチックが身の周りに入ってきた時期」というものがある、と書きました。昔の、世界的には産業革命以前の、日本では明治維新前の人々は生まれたときから死ぬまで同じ材料に囲まれていたはずで、新材料に出会う、という経験はなかったと思われます。プラスチックの登場は新材料の進出の最初のものだったので、その驚きは最大級のものだったでしょう。
私自身は「プラスチックが身の周りに入ってきた時期」より少し後で物心がついているので、プラスチックを初めて見た時の感動を記憶しているわけではありません。ですが、両親はその経験をした世代です。今回のお題は私の両親がはじめてであったプラスチック製品の話です。
子供のころ、家の物干し竿の中に、竹竿に水色のプラスチックがコーティングされたものがありました。子供なので別段不思議にも思わずに「そういうものだ」と思っていたのですが、何かのきっかけで両親から「普通の竹竿に自分たちでプラスチックがコーティングした」と聞かされてビックリ。なんでも父が取引先の会社から貰ってきたものだったそうです。竹竿にプラスチックのチューブをかぶせ、やかんのお湯をかけるとチューブが縮んでピッタリ竿竹に張り付いた、と言うのです。
なるほど物干し竿をコーティングすれば水をはじくので良いですね。チューブを熱で収縮させるなら塗料を塗るよりも簡単です。他のものが汚れる心配もないし、刷毛などの道具もいりません。でも「お湯をかけると縮む、なんて不思議なことがあるものだ」と思ったそうです。
実はこの商品、現在でも販売されているようです。三菱ケミカルの「熱収縮性チューブ
さて、熱収縮チューブの利用法は物干し竿の保護だけではありません。
身近な、とは言い難いかもしれませんが、有名なところでは電気配線の保護用に用いられています。もちろん、物干し竿用のものよりずっと細いチューブです。配線をはんだ付けした部分を絶縁するためにテープを巻き付けることはよく行われていますが、結構手間がかかる上に細い配線や隙間が少ない場合にはなかなか難しい作業になります。あらかじめ配線より太い、ぶかぶかのチューブを配線コードに通しておいてはんだ付けの作業を行い、作業が終わったらチューブをはんだ付の部分に移動させる。はんだごての熱で収縮させれば接続部分にむき出しになっている銅線やはんだをきれいにコーティングした形になって絶縁できるというわけです。
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